英国チャンピオンズデー、世界中の高額競馬イベントをライバル視(イギリス)【開催・運営】
初の英国チャンピオンズデーは、全体の賞金総額302万ポンド(約3億9,260万円)を提供するとともに1レースの賞金額もダービーを上回り、国内の記録を打ち立てたかもしれないが、チャンピオンズデーの主催者たちはさらに世界中の高額開催イベントと張り合うための方法はあると確信している。
10月15日の5つのビッグレースのために提供された資金は決して鼻であしらわれるレベルではないが、世界最高額の賞金を誇るドバイワールドカップデーに比べると、数字はその差を如実に物語っている。
今年の3月のドバイワールドカップデーは、賞金総額1,600万ポンド(約20億8,000万円)以上を提供したが、2012年は総賞金100万ドル(約9,000万円)のドバイゴールドカップが追加されることで、華やかな祭典の賞金総額は1,700万ポンド(約22億1,000万円)に引き上げられる。賞金額は常に変動しており、英国チャンピオンシリーズCEOのロッド・ストリート(Rod Street)氏はそのことを敏感に認識している。
同氏は、「私たちは現実的に野心を成し遂げて行かなければなりません」と述べた。
そして、「英国競馬は独特の方法で資金調達しています。賭事市場で独占的地位を占めているわけではなく、国からの支援もありません。世界中の驚くほどの賞金と比較すれば、この資金調達モデルには限界がありますが、英国競馬は依然として非常に市場性のある資産であり続けています。私たちはチャンピオンズデーの賞金を出来る限り有効に世界の高額競馬イベントと競合させるつもりであり、成功するチャンスが十分あることに自信を持っています」と述べた。
ストリート氏は、賞金額だけが要素ではない実例としてロイヤルアスコット開催を挙げ、英国競馬には名声が備わっており、チャンピオンズデーはこの厳しい競争環境においてもその地位を維持していけると確信している。
とは言っても、チャンピオンS(G1)1レースの130万ポンド(約1億6,900万円)という総賞金は、昔から最高額賞金を提供してきたダービーの地位をついに奪った。2011年ダービーの総賞金は125万ポンド(約1億6,250万円)であり、来年もほぼ同額が維持されると見られている。
ストリート氏は、「開催日の魅力の1つは“英国競馬”であり、関係者は今もなお品格のある英国のレースに勝つことを望んでいるので、私たちは賞金だけを中心に考えてはいません」と付け足した。
そして、「英国競馬には名声が備わっています。たとえば、ロイヤルアスコット開催の賞金の合計は5日間で400万ポンド(約5億2,000万円)ですが、世界中から非常に多くの出走馬を惹きつけています」と続けた。
将来チャンピオンズデーの賞金を引き上げる計画は進行中である。今年と来年のQIPCOからの支援は、チャンピオンズデーの滑り出しを心強いものにした。ストリート氏は、「賞金額を引き上げる強い願望があります。チャンピオンズデー1日の賞金総額300万ポンド(約3億9,000万円)という額は出発点でしたが、それは現在の経済環境においては、相応しい額であるだけではなく現実的な額です」と語った。
カタールを拠点とする民間投資持株会社であるQIPCOの登場は、英国競馬にとって歓迎すべき後押しとなり、一方同社の競馬部門であるパールブラッドストック社(Pearl Bloodstock)も今年の成功を享受した。
ストリート氏は、「QIPCOは英国競馬において前向きの力となってくれましたので、私たちは今後QIPCOとの関係を喜んで発展させるでしょう。しかし私たちの最優先事項は、第1回目の英国チャンピオンズデーを上手くやり遂げた後、今後更なる進歩を検討することです」と語った。
チャンピオンズデーの宣伝の中で、ストリート氏は欧州競馬の頂点としての凱旋門賞デーと対抗する野心を口にしていた。しかし、フランスは少なくとも一歩先を行くことに強い意欲を示しているように思われる。
フランスギャロ(France Galop)のエドゥアール・ド・ロトシルト(Edouard de Rothschild)氏は10月、凱旋門賞の総賞金は2018年までに現在の400万ユーロ(約5億2,000万円)から530万ユーロ(約6億8,900万円)に引き上げられるだろうと発表した。
このにんじんは、チャンピオンズデーの主催者もターゲットにしている馬の前にぶら下げられている。
競馬主要国における最高賞金総額のレース開催(2011年) | ||
国 | レース開催 | 賞金の合計 |
ドバイ | ドバイワールドカップデー | 1,667万ポンド(約21億6,710万円) |
米国 | ブリーダーズカップ2日目 | 710万ポンド(約 9億2,300万円) |
香港 | インターナショナルレースデー | 594万ポンド(約 7億7,220万円) |
日本 | ジャパンカップ当日 | 516万ポンド(約 6億7,080万円) |
フランス | 凱旋門賞デー | 504万ポンド(約 6億5,520万円) |
オーストラリア | メルボルンカップデー | 467万ポンド(約 6億 710万円) |
英国 | チャンピオンズデー | 302万ポンド(約 3億9,260万円) |
シンガポール | クリスフライヤースプリントデー | 234万ポンド(約 3億 420万円) |
イタリア | ダービーデー | 96万ポンド(約 1億2, 480万円) |
アイルランド | ダービーデー | 86万ポンド(約 1億1,180万円) |
南アフリカ | ダービーデー | 70万ポンド (約9,100万円) |
By David Baxter
(1ポンド=約130円、1ドル=約90円、1ユーロ=約120円)
[Racing Post 2011年10月18日「Champions Day facing stiff competition of rival」]