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2011年12月02日  - No.23 - 2

PMU、競馬界への拠出金を8000万ユーロ増加(フランス)【開催・運営】


 PMU(フランス場外馬券発売公社)は2011年1月〜9月において、全体で前年同期比7.7%増、競馬賭事に限れば4.4%増の成長を達成した。2011年末までにはPMUで100億ユーロ(約1兆1,000億円)以上の賭事が行われるだろう。フィリップ・ジェルモン(Philippe Germond)会長は勝ち誇ることなく、競馬産業がPMUの売上げから前年同期比で8,000万ユーロ(約88億円)多い恩恵を受けたこと、そして賭事客を夢見心地にさせる新しい馬券を発売する予定であることを報告した。これは偶然性に左右されないベテラン顧客向けの馬券である。


パリテュルフ紙(以下:Q):このような成長からみて、2011年はPMUにとって素晴らしい収穫の年であったと考えますか?

フィリップ・ジェルモン会長(以下:A):たしかに素晴らしい年でした。私たちはとりわけ、第1四半期に不振であった競馬賭事の売上げが挽回し、第3四半期には前年同期比6.4%の成長を果たしたことに非常に満足しています。発展し続けるインターネット賭事(第3四半期において前年同期比37%増)がこの成長に寄与しただけではなく、PMU店舗での売上げも4.2%増加して健闘したことが確認できたのは興味深いです。

 今年の純利益は前年比で約10%増加するはずです。私たちは2010年にPMUのイメージをより近代化するために、またスポーツ賭事の提供を開始するために広告に多額の投資を行いました。その結果、8%の成長を達成し、純利益は7億9,100万ユーロ(約870億1,000万円)となりました。2011年は、競争相手である他の競馬賭事業者も成長傾向にある中で、競馬界はPMUから前年同期よりも8,000万ユーロ(約88億円)多い恩恵を受けるはずです。


Q: この成長をどのように説明しますか?

A: 賭事の対象となるレース数の増加が部分的に寄与していますが、それは成長の4分の1しか占めていません。そもそも第1四半期からレース数があまり増えていない第3四半期のほうが成長幅は大きかったです。キャリーオーバーが400万ユーロ(約4億4,000万円)から500万ユーロ(約5億5,000万円)になった時に、カンテプリュス(Quinte+ 5連複・5連単のくじ付き馬券:5連単とくじが的中すれば最高額の払戻しが受けられ、的中馬券が出なければキャリーオーバーとなる)の第3四半期の売上げは1.5%から2%の成長となりました。このカンテプリュスへの関心の高まりは依然として実感できるものであり、500万ユーロ(約5億5,000万円)の驚異的なキャリーオーバーが後押しとなり、カンテプリュスの売上げは10月11日と12日にはそれぞれ9%と18%増加しました。

 ミュルティ(Multi 4頭〜7頭を選び上位4頭を当てる馬券)とドゥシュルキャトル(2sur4 上位4頭のうち2頭を当てる馬券)を14頭立て以上のすべてのレースで提供を開始したことも売上げ増加に貢献しました。このことでクプレ(Couplé 馬連・馬単)とトリオ(Trio 3連複・3連単)の売上げは減少しましたが、全体の売上げは良好となりました。

 この売上げ増加の理由として私が確信しているのは、PMUのイメージ改善です。2010年にスポーツ賭事の宣伝キャンペーンを、2011年に競馬賭事の宣伝キャンペーンを行いました。これによる大きな収穫は、PMUの時代遅れなイメージを払拭し、一部の賭事客の劣等感を取り除いたことで、顧客の賭事活動が活性化されました。


Q: 記録的なキャリーオーバーはカンテプリュスの売上げを引き上げました。しかし、ヌメロプリュス(Numéro Plus カンテプリュスの馬券に割り当てられたくじ)がキャリーオーバーを膨れ上がらせる妙策ではあるが、一方で常連賭事客の客離れを招くことを意識していますか?

A: 先に述べましたように、カンテプリュスの成長はキャリーオーバーの増加に伴っています。そして特にスポット馬券(spOt クイックピック馬券)に関しては、この夏売上げが1,000万ユーロ(約11億円)に上り25%も成長しました。このことから、競馬賭事でも興奮を味わうことを望む宝くじファンを惹きつけていることは明らかです。

 一方で、常連顧客である熟練した競馬賭事客がカンテプリュスは偶然に左右される馬券であると感じていることを耳にしています。しかし、キャリーオーバーにあり付くためには、いずれにしても上位5着を着順通りに的中させなければならないと念を押したいと思います。2010年には1着〜5着を着順通りに的中させた顧客に13億ユーロ(約1,430億円)が払い戻され、さらに馬券のくじの的中を達成した顧客に3,000万ユーロ(約33億円)が払い戻されました。カンテプリュスは、このような高額払戻金なしでは競馬に見向きもしない顧客たちを惹きつけることのできる目玉商品です。私はカンテプリュスの10%の成長のうち半分は“何があるかわからない”運だめしをする競馬ファン、あとの半分は馬券を一度も買ったことのない人から創出されたものであると確信しています。

 多くの競馬ファンの期待に応えるため、私たちは2012年の初めに、多額の払戻しがありうる新しい馬券を発売します。これは単勝・複勝ではなくエキゾチック馬券に馴染んだベテラン顧客のための馬券です。カンテプリュスが前半のレースを対象に発売されるのに対し、この新しい馬券は後半のレースを対象に発売されます。カンテプリュスが夜間開催のレースを対象に発売される場合は、この新しい馬券は午後の早めのレースを対象に発売されるでしょう。


Q: 新しい馬券が発売されるのであれば、人気がなく全体的な賭金を分散させてしまういくつかの馬券を廃止にすることは考えていますか?

A: 現在のところ考えていません。しかし、もしさまざまな馬券を発展させるにあたり冷静な分析をするのであれば、ティエルセ(Tiercé 1日1レースを対象に提供される3連単馬券)を廃止しなければならないでしょう。しかし、PMU会長がこの象徴的な馬券を廃止することは想像できないことであり、廃止すれば私たちのイメージを損なわせるでしょう。ティエルセはPMUの歴史と言っても過言ではありません。


Q: インターネット賭事統制機構(Autorité de régulation des jeux en ligne: ARJEL)が許可したことを受けて、カンテプリュスをインターネット上で1日2回発売する計画はありますか?

A: 現在1日1回カンテプリュスを発売していますが、このスタイルは続けるつもりです。私たちはカンテプリュスのトピックス的側面を保ちたいと思います。


Q: 開催日が増え、レースが増え、提供する賭事が増えたことで、賭金があらゆるレースに分散し、全体的な平均払戻金を減少させると思われます。2012年も続くであろうこの飽和状態がおそらく中期的に競馬界に不利に働くとは考えていませんか?

A: 提供賭事の増加は今に始まったことではなく、10年ほど前から始まったことです。今後見込まれるレース数の増加は少ないものになるでしょう。レース数はほぼ最大限に達しています。統計によれば、レース数が増えることが払戻金を減少させることはまずないでしょう。払戻金の変動はあるかもしれませんが、ミュルティを例にとれば平均払戻金は2%〜3%しか変わっていません。


Q: 革新的な馬券を提供できないことに不満を持っている新規参入の賭事業者もいます。ARJELは各社に裁量の余地をほとんど与えていません。より多くの自由が賭事業者に与えられることが望ましいですか?

A: 決定はPMU次第というわけではありません。ARJELが最終的に認定します。サッカー、ラグビーおよび他のスポーツを対象とした賭事についても同じことが言えます。PMUが創造的で多くのアイデア(顧客もまた商品開発において大きなヒントをくれます)やより市場を盛り上げるような馬券の構想を持っていたとしても、決定権は競馬界にあります。

 速歩競走においても平地競走においてスポーツ連盟は倫理の観点から提供される賭事の種類について意見を述べるこがあります。したがって、賭事業者は考えを貫き、提供する馬券の利点を競馬統轄機関に説得しなければなりません。

 つまり、事態は進展していると言えます。私たちが2009年4月にスポーツ賭事の提供開始を決定し、市場に参入した当時は手探り状態で努力が必要でした。


Q: PMUのスポーツ賭事には満足していますか?

A: 私たちのスポーツ賭事における市場シェアは、望んでいた以上となりました。2011年の目標は市場シェア16%に到達することでした。ARJELが発表した数字によれば、2010年の10%に対し、2011年の第1四半期は14%、第2四半期は17%そして第3四半期は20%に達しました。私たちは宣伝キャンペーンとライブ賭事(試合中賭事)に焦点を合わせた賭事の提供により支持を得ました。この分野において、私たちのパートナーであるパディパワー社(Paddy Power)は随分力を貸してくれました。PMUはスポーツ賭事において、ベットクリック(Betclic)およびビーウィン(Bwin)に次いで市場3位です。いずれにしても、私たちは2010年、市場規模を大きく見積もり過ぎていました。実際スポーツ賭事市場はスポーツイベントに応じて拡大していますが、2011年の私たちのスポーツ賭事部門での成長は驚くべきものではありません。2011年は、スポーツ賭事市場における市場シェアがテニス(多くのライブ賭事はテニスを対象にしている)の30%、ラグビーの6%に対し、50%のサッカーには大きな大会がないことを認識した上で目標を定めました。2012年は6月と7月にサッカー欧州選手権が開催されるので期待できます。

 スポーツ賭事の提供を開始したことと驚くべき成長を遂げたことは、PMUのイメージを改善し競馬賭事にも貢献したと私は確信しています。ここにもまた波及効果がありました。


Q: ポーカー賭事についてはどうですか?

A: 私たちはポーカー賭事を宣伝活動せず控えめに開始しました。PMUのために特別にゲームを開発するのではなく、すでに顧客を獲得しているパーティーゲーミング社(Party Gaming)と提携しました。現在私たちはポーカー賭事市場で5%の市場シェアを占めています。スポーツ賭事と同じように50%が新規顧客であり、あとの50%は以前からPMUで賭事を行ってきた顧客です。


Q: インターネットが新規顧客の獲得を可能にしましたか?

A: 2010年は14万人の新規顧客のうち、7万人が競馬賭事を目的にした顧客でした。現在では、スポーツ賭事やポーカー賭事を媒介としてやってきた新規顧客の一部が、競馬賭事を始めており、抱き合わせ販売の戦略は成果をもたらし始めています。私はあらゆる馬券種類を提供することにより競馬賭事の常連客になってもらおうとしています。一方で、これまで競馬賭事をやろうとは思わなかった顧客を獲得するために新馬券を活用しています。インターネットについては、より若い顧客の注意を惹きつけ競馬賭事の顧客層をいっそう広げたことは確かです。


Q: PMUはスポーツ賭事で、固定オッズ方式に熟達した事を証明しました。なぜ競馬賭事に固定オッズを適用しないのですか?

A: ただ法律が競馬賭事に関してはパリミューチュエル賭事だけを許可していることも理由の1つですが、それよりも私たちが原則に執着しているからです。日本、香港、オーストラリア、米国およびスウェーデンなどはパリミューチュエル賭事を適用しています。英国とアイルランドだけが例外です。この二カ国においては競馬界への資金調達は、非常に高い競馬場への入場料とスポンサー契約、そして競馬界の財源の大半を保証する裕福な馬主により成り立っています。このバランスは危ういです。経済不況において、この形態は賭事業者から集めた賭金により競馬界の財源を保証するパリミューチュエル賭事のモデルに比べて抵抗力がありません。


Q: 賭事客へのさまざまな払戻率と、海外の競馬ファンとの共同賭事プールであるレースにより、賭事客は無分別に賭事を行っています。いっそう透明性を保つために、馬券発売の際に賭事客への払戻率と賭金総額を公表すべきではないでしょうか?

A: PMUの払戻率に関しては、一般的な条件においてはそれぞれの馬券においては変化せず、規定から参照することができます。賭金総額の表示については単勝・複勝馬券については表示していますが、すべての馬券について競馬専門チャンネルのエキディア(Equidia)や馬券発売機に表示することは困難です。一方で私たちは他社と競争する環境にあり、データ保護が強いられています。


Q: 今後着手すべき課題はありますか?

A: もし許されるのであれば、私は1つ明確にしておきたいことがあります。それは、時折耳にするようにPMUはただ競馬のために賭金を回収する会社ではないということです。PMUは激しい競争が必要な環境下で運営している商業サービスを提供する会社であり、競馬賭事のように非常に質の高い商品を提供している会社です。私たちの使命は新規顧客を獲得し、彼らに定着してもらい、より多くの人々に競馬賭事を知ってもらうことです。また、PMUの店舗網を活気づけ、国際的展開を含む成長を継続させることを目指すことです。そして、それはいつも競馬界の利益を考えてなされるべきです。

By Christophe Ugnon-Fleury
(1ユーロ=約110円)

[Paris Turf 2011年10月15日「“80 millions d’euros de plus pour la filière et un nouveau jeu pour les turfistes”」]


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