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2012年11月20日  - No.11 - 3

議論を呼んだ改正から1年経ち、鞭使用ルールは着実に定着(イギリス)【開催・運営】


 BHA(英国競馬統轄機構)が1年前により明確なルールとより厳格な罰則によって、鞭に対して否定的な世論の高まりを鎮めることを期待して鞭使用ルールの画期的な見直しを行ったことで、英国競馬界をめぐる状況は決定的に変化した。

 しかし、現実は望んでいたほど順調では全くなかった。

 当惑させられるような見直しが続いたあと白黒がはっきりしすぎていた部分が曖昧にされ、騎手と裁決委員が今日採用しているシステムとなった。

 昨年のグランドナショナルをめぐる騒動をうけて手続きが加速化され、同9月末に、BHAが鞭使用ルール変更の計画を明らかにした際、明確な指針を設けることが関係者すべての利益となると考えられていた。

 主な変更は、鞭使用回数の上限(平地競走で7回、障害競走で8回)、最終200mあるいは最終障害飛越後の鞭使用回数が5回までとされたこと、およびルール違反者に対する進上金の没収や長期にわたる騎乗停止処分であった。

 しかし新しい鞭使用ルールのインクが渇く前に、懸念が表明された。リチャード・ヒューズ(Richard Hughes)騎手は、新ルール発効後の1ヵ月間が競馬界にとって非常に難しいものとなると予言し、また他の騎手は発効日の10月10日から数日間、いかに変更ルールを遵守するかに苛立ち、戸惑った。

 ルール発効当日に最初の違反者となったのはヒューズ騎手で、同騎手は最終200mで6回鞭を使用したことで3日間の騎乗停止処分となり、憤慨した。

 厳格な過怠金処分も多くの騎手の注目を集め、クリストフ・スミヨン(Christophe Soumillon)騎手がチャンピオンS(G1)の進上金5万2,390ポンド(約681万円)を没収されたときには不満が爆発した。このことにより翌朝の新聞の見出しは、第1回英国チャンピオンズデーと同じくらい大きく鞭問題を取り上げるところとなった。

 BHAのポール・ロイ(Paul Roy)会長はその際、鞭使用ルールの変更について、「深刻な問題点がいくつかあるので、それは整理するつもりです」と述べていた。

 ルールが変更されなければ騎手はストも辞さないという状況の中で、BHAと騎手協会(Professional Jockeys Association: PJA)との会合が持たれ、最終200mの鞭使用制限のルールおよび騎手の進上金が没収される場合に騎乗停止処分を3日間から7日間に引き上げるというルールはただちに廃止された。

 それでも騎手の新しい鞭使用ルールに対する冷淡な反応は変わらず、騎手が満足する状態になるにはBHAの新CEOにポール・ビター(Paul Bittar)氏が着任するまで待たねばならなかった。

 ビター氏が3月に着任してから2週間のうちに、競走における違反の可能性を判断する自由裁量と機会が競走日裁決委員に与えられることとなった。この決定は、鞭使用ルールの問題を新聞の一面から取り除くのに役立った。

 鞭使用ルールの最終改正後にBHAが発表した数字によれば、鞭使用ルール違反は2011年と比較して34%減少しており、走行妨害も24%も減少している。

 一番強い馬が以前ほど頻繁に勝てなくなり、賭事客が競馬に背を向けるだろうという懸念も、本命馬が勝つレース数がルール変更の影響を受けなかったことで、的外れだったようだ。

 BHAのスポークスマンであるロビン・マンセー(Robin Mounsey)氏は、「私たちは通常、自己満足によってではなくルールがよく機能していることによって勇気づけられます」と語った。

 そして次のように付け足した。「騎手の大半はルールを遵守するよう努力しており、同様に裁決委員は理にかなう形でルールを適用しています」。

 「しかし、一部の騎手のルール違反によって大部分の騎手が迷惑を受けることを私たちは望んでいないので、現行ルールの抑止力が違反を繰り返す者に無力であるということにならないことを望んでいます」。

 一番の常習犯は、キーレン・フォックス(Kieren Fox)騎手であり、6ヵ月間で7日間以上の騎乗停止処分を4回科されたことから、10月中旬にBHAから3ヵ月間の騎乗停止処分を受けた。

 他に5人の騎手が、6ヵ月の間に、鞭使用ルール違反で2日〜6日間の騎乗停止処分を5回受けたとされている。

 BHAの数字によれば、馬が鞭で打たれて皮膚の一部が剥がれ鞭跡を付けられる事例が、最初の鞭使用ルール変更以降の12ヵ月間に20件から1件に大幅減少したことも明らかとなっている。
鞭使用ルール変更の成果は鞭跡の事例数によっても評価されうるだろうと語っていた世界馬福祉協会(World Horse Welfare: WHW)のCEOロリー・オワーズ(Roly Owers)氏は、「最初の鞭使用ルール変更から1年でいくつか肯定的に評価できる面がありましたが、まだ未完成です」と述べた。

 そして、「鞭跡は鞭の濫用の指標ですので、評価できる事柄の一つです。鞭跡の事例数が20件から1件に減っているとするならば、私たちは満足しなければなりません」と付言した。

 平地シーズンが閉幕に近づいている今、BHAは新しい鞭使用ルールを振り返ることとしており、必要であれば罰則のさらなる変更も視野に入れている。

 マンセー氏は、「すべての罰則と騎乗中の違反についての年次見直しの一環として、BHAは、シーズン閉幕時に鞭使用ルール違反への罰則を見直すでしょう。私たちは、これらのルールと罰則を機能させる責任は騎手に委ねられているとルール改正の導入にあたり述べていました」と語った。
そして、「大多数の騎手が改正ルールを遵守しようと懸命に取り組んでいます。しかし、現在の罰則制度が十分な抑止力にならないということになれば、BHAは抑止力の強化を検討しなければなりません」と付言した。

By Peter Scargill


BHAのCEOビター氏、鞭使用ルール変更の結果に満足

 怒りと恨みを生んだより厳格な鞭使用ルールの導入から1年が経ち、BHAのCEOポール・ビター氏は、追加的になされたルール修正の成功を最もよく物語るものは、この問題について議論がなくなったことであると考えている。

 ビター氏は、1月にBHAに正式に就任して直ちに、鞭使用問題の解決を最優先課題とした。

 同氏は、「競馬場では人々はもはや鞭を話題にしていません。これはおそらく、引き続き重大な問題であるかどうかを測る最良のバロメーターでしょう。私たちは結果について歩き回って互いにハイタッチしているわけではありませんが、毎週統計を見ると本当に勇気づけられます」と語った。

 そして、「裁決委員、有給開催理事および騎手は、改正後のルールにとても満足しているようです」と付け足した。

 BHAは、最後の改正となった鞭使用ルールを今年3月のチェルトナムフェスティバルに間に合うよう導入した。そして、ビター氏はそれ以降平地のトップジョッキーの実績を鞭使用ルール修正の成功例として取り上げた。

 ビター氏は、「英国のトップジョッキー10人は、3月に改正ルールが導入されてから約6,400鞍に騎乗しています。そして彼らはその間にたった14回しか違反していません。これは1/460の割合です」と語った。

 そして次のように続けた。「走行妨害数でも25%の大幅減少であります。その点では、適切なバランスが図れたと感じています。多くの人々は、競馬がルール変更の結果としてより魅力的になると言っています」。

 ビター氏は、当初の鞭使用ルールの見直しの原則は理に適ったものであったが、最初の問題を引き起こした原因は分析結果の実施方法であったと考えている。

 そして、次のように語った。「達した結論とルール見直しの中で主張された点は、すべて理に適ったものです」。

 「なされた分析を実際に実行する際にまったく異なる結果を生んでしました。それにはいろいろな理由があると考えています」。

 「1つは、騎手が当初完全な透明性を要求して鞭使用制限の具体的な回数を望んだことです。裁量の余地が全くなければそのやり方は機能しないだろうということは誰でも分かります。したがって、この絶対的な鞭使用回数の制限を設けることには柔軟性が欠けていたのです」。

 「解決した問題よりも多くの問題を実際には作り出してしまうバランスのとれていない罰則基準だったということには議論の余地はないでしょう」。

 「まさに、没頭できるものにすぐにとりかかるチャンスでした。このことは、BHAが1つの問題で賢明なリーダーシップを見せるチャンスとなりました」。

 ルールの変更はその当時動物愛護団体に批判されたが、ビター氏は、WHWや王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals:RSPCA)のような“信頼のおける”動物愛護団体とは良好な関係を保っていると述べた。

 そして次のように付言した。「ルール変更の前は、私たちは馬が鞭で傷を負ったり鞭跡を付けられたりする事例を年間20件見ましたが、この1年間においては、そのような事例は9万騎乗においてたった1つしかありませんでした。したがって私たちは大幅な改善を見ています。RSPCAが常に私たちに要求するこの統計は十分に公正なものです」。

 「RSPCAとWHWとの関係はまったく建設的なものです。私たちがすべての問題について合意することは決してありませんが、彼らはそのこと自体を尊重していると考えています。私たちもまた、多くの事柄について彼らの立場を尊重しています」。

By Bill Barbar
(1ポンド=約130円)

[Racing Post 2012年10月25日「One year on and controversial whip rules are making steady progress」「‘It’s not a talking point at the races now−that’s the best barometer’」]


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