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2012年12月20日  - No.12 - 4

ブリーダーズカップの芝競走で米国馬が優勝し、威信を回復(アメリカ)【その他】


 米国ゴルファーが不振に終わった芝の上で、米国馬は成功を収めた。メディナカントリークラブ(Medinah Country Club)の芝の上で起こった米国ゴルファーの敗退への雪辱が切望されていたのであれば、それは、欧州の期待馬が次々と敗退した今年のブリーダーズカップ開催を象徴していたBCマイル(G1)において、ワイズダン(Wise Dan)を先頭に米国馬がワンツースリーフィニッシュを決めたサンタアニタパーク競馬場の素晴らしい芝の上で果たされた。

 11月3日土曜日の晩カリフォルニアに夕闇が訪れた頃、大西洋を越えてきた欧州遠征馬は2つの勝利を手にしたが、いずれも比較的最近新設されたそれほど馴染みのあるレースではなかった。今回のブリーダーズカップ開催の主要レースにおいて、健闘したのはアメリカ勢であった。欧州馬のエクセレブレーション(Excelebration)とムーンライトクラウド(Moonlight Cloud)が、現在米国年度代表馬となることが確実視されているワイズダンをはじめとする米国馬の上位独占によってプライドを傷つけられ、これほど欧州勢の敗北が痛々しく感じられたことはなかった。

 エクセレブレーションの関係者とアイルランドにとっては、BCジュヴェナイルターフ(G1)でジョージバンクーバー(George Vancouver)が優勝したことがせめてもの慰めとなった。またムーンライトクラウドを送り出したフランスにとっては、フロティラ(Flotilla)が11月2日のBCジュヴェナイルフィリーズターフ(G1)を優勝したことが救いであった。

 しかし英国人たちにとって今回のブリーダーズカップ開催は、BCマイルとBCターフに1頭も出走せず、2年連続で2日間とも勝鞍がゼロとなったという酔いも覚めるような経験であった。そしてブリーダーズカップの国別ランキングでは、アルゼンチン馬がBCマラソン(G2)を制したため一時的にアルゼンチンよりも下回った。

 フランケル(Frankel)が米国に遠征していたとすれば、事態は変わっていたかもしれない。しかし実際にはフランケルは遠征せず、ブリーダーズカップはフランケルに次ぐ馬エクセレブレーションで何とかせねばならなくなったが、かつての敵エクセレブレーションの勝利を通してフランケルの優れた能力をより確かなものにすることを熱望していたフランケルのファンは、バリードイル勢の最高馬エクセレブレーションがとてつもない野獣のようなワイズダンの4着にしか食い込めなかったことに落胆した。

 ワイズダンと2着のアニマルキングダム(Animal Kingdom)はいずれも、欧州遠征馬の傷口に塩を擦り込むためであるかのように、古き良き米国競馬のダートから、欧州勢が昔から制してきた芝競走に転向していた。

 ワイズダンは昨年11月にダートのG1競走を制しており、アニマルキングダムは昨年のケンタッキーダービー(G1)馬である。その上で彼らは、ここサンタアニタ競馬場の欧州勢が得意とする芝馬場で徹底的に戦い、引退前の最後の出走であったエクセレブレーションとムーンライトクラウドより優れたスピードとパフォーマンスを見せ、これらの欧州馬を4着と8着に沈めた。

 水曜日の朝にサンタアニタパーク競馬場に到着して以降、エイダン・オブライエン(Aidan O’Brien)調教師は、エクセレブレーションが重馬場のクイーンエリザベス2世S(G1)で見事な勝利を収めてからわずか2週間での出走であることについての不安を語っていた。同調教師はBCターフで何が起きるかを予見していたようで、実際にそうなった。

 オブライエン調教師は、「エクセレブレーションはよくやりました。アスコット競馬場で非常に感動的な走りを見せたのはつい14日前のことです。きつい日程とは思いましたが、挑戦してみる価値がありました」と語った。

 フレディ・ヘッド(Freddy Head)調教師のBCマイル5回制覇という驚異的な記録を考慮すれば、ムーンライトクラウドを同レースに出走させることに価値はあったものの、同馬もまた調教師を意気消沈させた。「もっと健闘すると思いました」と同調教師は語り、その心情は多くの人々と同じ消沈したものであった。そして、これまでになく良い仕上りだったワイズダンにとって2頭の欧州馬が脅威となると期待していたチャールズ・ロプレスティ(Charles Lopresti)調教師もたぶん同じ気持ちであっただろう。

 欧州馬ではなく、怪我に見舞われた不運のアニマルキングダムがワイズダンを脅かし、ホームストレッチに差し掛かるところで走行妨害を受けながらも最終100ヤード(約90m)でワイズダンを猛追した。

 ロプレスティ調教師は、「ワイズダンは信じられないほど素晴らしい馬です。夢を実現してくれました。このような馬を得るため皆生涯をかけて取り組んでいます」と語った。

 勝利騎手のジョン・ベラスケス(John Velazquez)は、2頭からの騎乗依頼を受けていた。何度もアニマルキングダムに騎乗していたが、このダービー馬に騎乗しないことを悄然と選択した。それはワイズダンへの称賛からなされた選択であり、故障しがちなアニマルキングダムが2月から出走していないことも考慮に入れていた。

 ベラスケス騎手は、「ワイズダンは特別な馬です。アニマルキングダムはワイズダンを負かすことのできる唯一の馬だと感じていましたが、ワイズダンはこのレースに向けてよく仕上げられており、アニマルキングダムにはもうひと叩き必要だと思っていました」と語った。

 アニマルキングダムが勝っても僅差だっただろう。しかし同馬は、欧州馬が過大評価されていた米国に素晴らしい開催と結果をもたらしたという点で、役割以上の働きを演じたと言える。

 このような結果となることは、競馬場の音声システムが故障し、アメリカ国歌を歌っていた歌手の声が観客に聞きとれなくなった開催冒頭での出来事に、ある意味でまさに暗示されていた。

 サンタアニタパーク競馬場に集まった5万5,000人の観客は温かく歌手に救いの手を差し伸べ、一緒になって国歌を歌った。そしてこれまで台本に書かれたことのなかった感動的で愛国的な瞬間を生み出した。彼らは国家の威信を回復した。この第29回ブリーダーズカップにおいて、米国馬も威信を回復した。

By Lee Mottershead

[Racing Post 2012年11月5日「Pride restored as America comes out on top in turf war」]


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