高レーティング産駒を高い割合で送り出すモンズーン(イギリス・アイルランド)【生産】
英国とアイルランドの平地シーズン序盤のG1競走が始まった今、レーシングポスト紙のウェブサイトは、この時期にどの種牡馬が一流産駒を送り出しているかの全体像を把握するために、素晴らしい情報源を提供している。
獲得賞金額の統計は、一つか二つの賞金額の高いレースや主要ハンデキャップレースによって歪曲される可能性があり、また産駒の出走数に対する勝馬の割合も馬の質を必ずしも明らかにしていない。一方、私たちレーシングポスト紙のレーティング(Racing Post Rating:RPR)で80以上、100以上あるいは115以上の産駒をリストアップしたリーディングサイアーリストは、種牡馬に隠れ場所を与えない。それらは、どの種牡馬の産駒が最も傑出した馬を送り出しているかを明確にするであろう。
今シーズン英国とアイルランドにおいてRPRが100以上の産駒を持つリーディングサイアーのリストにおいて、準重賞レベルにあと一歩の馬に与えられたレーティングには、はっきりとしたリーダーがいる。それは、RPRが100以上の馬の内産駒が一挙に33%にも達したドイツの偉大な馬モンズーン(Monsun)である。
モンズーンの現在の有望産駒の多くは、同馬が2006年から2007年にかけて世界的にも一流馬のマンデュロ(Manduro)やシロッコ(Shirocco)を送り出した影響から、欧州の主要生産者が優良牝馬と配合させた仔である。英国とアイルランドでレーティングの高い代表産駒は、ミッデイ(Midday)の半弟でジャドモントファーム(Juddmonte Farm)の自家生産馬ミッドサマーサン(Midsummer Sun)であり、もっともワクワクする産駒は、英1000ギニー(G1)とオークス(G1)を制したモハメド殿下の所有馬カッジア(Kazzia)を母とし、同殿下により生産され5月6日にプリティーポリーS(英準重賞)で劇的な勝利を挙げたカイラニ(Kailani)である。
マスクドマーベル(Masked Marvel)の半妹で4月のペネロープ賞(G3)を制したRPRが106のヴァルドレルシュ(Waldlerche)が、アンドレ・ファーブル(Andre Fabre)調教師の予想どおり英オークスのステップレースに進むとすれば、他のレーティング100以上が付けられている一連のモンズーン産駒は、さらにそのレーティングを高める可能性がある。
一方、ドバウィ(Dubawi)産駒のドバイワールドカップ勝馬モンテロッソ(Monterosso)と香港のスプリント・マイル馬ラッキーナイン(Lucky Nine)は、今シーズンはまだ英国とアイルランドで出走していないため、ダルハムホールスタッド(Dalham Hall Stud)に繋養されているドバウィの出走産駒におけるRPRが100以上の産駒割合は堅く見て13%程度であろう。
アルカジーム(Al Kazeem RPR121)が白熱したジョッキークラブS(G2)を制してRPRのトップに達し、ハーミヴァル(Hermival RPR117)が英2000ギニー(G2)で称賛に値する3着になり、また、マリナーズクロス(Mariner’s Cross RPR101)がニューマーケットSにおいて接戦で2着したことから、ドバウィがこのレベルの産駒を送り出した頻度の高さが明らかになった。
ドバウィ産駒のうちRPR100以上の産駒の割合は、偉大な種牡馬ガリレオ(Galileo)と同じ13%である。ガリレオは、今シーズン最も優秀な3頭の産駒トレジャービーチ(Treasure Beach)、ニウォット(Niwot)およびミハイルグリンカ(Mikhail Glinka)がすべて海外で出走したため今シーズンの滑り出しは比較的静かだが、これらの産駒は着実に調子を整えている。また、ガリレオ産駒のノーブルミッション(Noble Mission RPR105)は同じくガリレオ産駒ミケランジェロ(Michelangelo)と共に出走したニューマーケットSを制した。なお、ミケランジェロはデビュー戦となったこのレースで3着になり、RPR100以上を獲得した。ヴィータノヴァ(Vita Nova RPR109)は、スローペースは苦手であるように見受けられたが、グッドウッド競馬場での準重賞デイジーウォリックSを制し、その水準の高さを見せつけた。クウェストフォーピース(Quest For Peace)はジョッキークラブSにおいて2着であった。
チェヴァリーパークスタッド(Cheveley Park Stud)のがっしりとした種牡馬ピヴォタル(Pivotal)は出走産駒のうちRPR100以上の産駒の割合が同じく13%である。イジートップ(Izzi Top RPR110)がダリアSを制し、マアレク(Maarek RPR114)がニューマーケット競馬場で重要なスプリントのハンデ戦を制し、ファー(Farhh RPR118)が6馬身差でサースクハントカップを制してライバルに大差をつけた。このことによりピヴォタルにとっても素晴らしい週末となった。
ランウェイズスタッド(Lanwades Stud)のベテラン種牡馬セルカーク(Selkirk)は、現在の代表産駒シティスケープ(Cityscape)が今シーズン出走していないにも拘らずRPR100以上の産駒割合を堂々の12%とした。セルカーク産駒で新たにRPR100以上を獲得した馬には、英1000ギニーの2着馬スタースコープ(Starscope RPR100)や、高水準のハンデキャップ出走馬のアイケン(Aiken RPR106)とエディンバラナイト(Edinburgh Knight RPR111)がおり、今シーズン互いに獲得賞金を伸ばしても驚くに値しないだろう。
この表において驚くべき点は、今シーズンのたった17頭の出走産駒のうちカトラ(Katla RPR103)とニュープラネット(New Planet RPR103)の2頭にRPR100以上が付けられたマジェスティックミサイル(Majestic Missile)である。バリーへインスタッド(Ballyhane Stud)に繋養されている同馬は、高レベルの産駒を送り出す能力に加えて、最近注目をあつめている自身の父系の人気上昇などいくつかの背景があった。すなわち、同馬はロイヤルアプローズ(Royal Applause)産駒であるが、同じくロイヤルアプローズ産駒であるアクラメーション(Acclamation)がその産駒のダークエンジェル(Dark Angel)の活躍で現在注目の的となっている。そしてマジェスティックミサイルの半弟サントパドレ(Santo Padre)が4月のウッドランズSで快勝している。
今シーズン3,000ポンド(約39万円)の種付料で供用されているマジェスティックミサイルは、廉価ではあるが注目に値する種牡馬であるかもしれない。
RPR(レーシングポストレーティング)100以上の産駒割合の高い種牡馬 | ||||
3歳以上の産駒が英国とアイルランドで15頭以上出走していることを条件とする | ||||
種牡馬 | 出走産駒 | RPR100以上 | % | 最優良馬(RPR) |
モンズーン (Monsun) |
15頭 | 5頭 | 33 |
ミッドサマーサン(105) (Midsummer Sun) |
ドバウィ (Dubawi) |
60頭 | 8頭 | 13 |
アルカジーム(121) (Al Kazeem) |
ガリレオ (Galileo) |
78頭 | 10頭 | 13 |
クウェストフォーピース(114) (Quest For Peace) |
ピヴォタル (Pivotal) |
80頭 | 10頭 | 13 |
ファー(118) (Farhh) |
セルカーク (Selkirk) |
43頭 | 5頭 | 12 |
エディンバラナイト(111) (Edinburgh Knight) |
マジェスティックミサイル (Majestic Missile) |
17頭 | 2頭 | 12 |
カトラ(103) (Katla) |
エルナディム (Elnadim) |
19頭 | 2頭 | 11 |
サントパドレ(109) (Santo Padre) |
ジャイアンツコーズウェイ (Giant’s Causeway) |
19頭 | 2頭 | 11 |
ブリッジオブゴールド、レーヴドニュイ(105) (Bridge Of Gold, Reve De Nuit) |
インヴィシブルスピリット (Invincible Spirit) |
91頭 | 9頭 | 10 |
メイソン(117) (Mayson) |
クロドヴィル (Clodovil) |
40頭 | 4頭 | 10 |
クープドヴィル(114) (Coupe De Ville) |
アルハース (Alhaarth) |
20頭 | 2頭 | 10 |
エターナルハート(106) (Eternal Heart) |
By Martin Stevens
(1ポンド=約130円)
[Racing Post 2012年5月8日「Monsun top on percentage of high-rated performers」]