蹄葉炎に効果的な治療薬の研究(アメリカ)【獣医・診療】
昆虫制御作用のある生物学的物質の研究を行っている昆虫学者が発見した実験的薬剤は、蹄葉炎に効果的な治療として有望である。
その薬剤とはt-TUCBとして知られる抗炎症剤であり、カリフォルニア大学デービス校獣医学部は、この薬剤が安楽死を余儀なくされていた馬に使用され、治療効果があったため初の臨床試験を実施する予定である、と同大学の職員は11月中旬に述べた。この事例に関する論文は、専門家たちの査読を経て麻酔・鎮痛獣医学雑誌(Journal of Veterinary Anaesthesia and Analgesia)への発表が認められた。
同大学の獣医学部のアロンソ・ゲデス(Alonso Guedes)准教授は、「前もってこれを発表するのはこれまでなかった対応ですが、いくつかの蹄葉炎において痛みを和らげる方法は安楽死措置しかないとされることが多いので、この化合物が治療薬としての可能性を示したことをいち早く知らせることが重要であると考えました」と語った。
ゲデス准教授は論文において、蹄葉炎の症状が進行していたサラブレッドのフラハラ(Hulahalla 牝4歳)の事例を報告している。同馬は屈腱炎のために競走から引退し、同大学の獣医学部に寄贈され、肝細胞を用いた屈腱炎治療に重点を置いた研究に使用されていた。
フラハラの蹄葉炎は、冷水療法、抗生物質の投与、包帯での肢のテーピング、炎症を軽減し痛みを和らげるためによく使われる2つの非ステロイド薬など従来からの治療法で処置されていたが、同馬の症状は悪化していた。
ゲデス准教授は同馬に安楽死措置をとる前に、カリフォルニア大学デービス校の昆虫学専門のブルース・ハンモック(Bruce Hammock)教授が40年前に発見した抗炎症化合物のグループの1つに属するt-TUCBを試みた。ハンモック教授は、この化合物がマウスとラットの神経系疾患に関係する炎症や痛みを軽減するのに効果的であることを発見していたが馬のように大きな哺乳類に使用されたことはなかった。
最初の投与の後、フラハラは1日の大半を馬房の中で立ったままで過ごし、周囲の環境に関心を示すようになり、自発的に歩いた。
同馬の振る舞い、姿勢、動きは4日間の治療で改善し続け、血圧は段々と正常値に戻った。t-TUCBの副作用は観察されず、フラハラはまる一年蹄葉炎を発症しないままである。
By The Blood-Horse staff
[The Blood-Horse 2012年11月24日「Research: Drug May Be Effective In Treating Laminitis」]