海外競馬ニュース 軽種馬登録ニュース 海外競馬情報 統計データベース 海外競馬場・日程 世界の競馬および生産統計 海外競走登録 申請書類
血統書サービス 引退名馬
twitter FB
TOPページ > 海外競馬情報 > 相次ぐ有力馬購買で、日本のサラブレッド産業は世界一になる可能性(日本)【生産】
海外競馬情報
2013年12月20日  - No.12 - 3

相次ぐ有力馬購買で、日本のサラブレッド産業は世界一になる可能性(日本)【生産】


 日本産馬が凱旋門賞(G1)で圧倒的な一番人気に推されるのは、以前はなかったが、今や普通の光景となった。渇望されている凱旋門賞勝利はまだ達成されていないかもしれないが、挑戦する馬が安定して良い成績を上げている現状は、日本人馬主が凱旋門賞勝利を祝うこともそう遠くないことを暗示している。

 それは実現して当然のことだろう。管理方法および調教方法、とりわけ馬の輸送技術は世界中で改善されているが、ここ最近の日本馬の欧州での躍進は、サラブレッドへの莫大な投資への見返りでもある。

 日本の牧場、とりわけ吉田兄弟が所有する社台ファームノーザンファームは、今や世界の最優良繁殖牝馬の繋養先である。それに加え、日本は、ノヴェリスト(Novellist)、ハービンジャー(Harbinger)およびアイルハヴアナザー(I’ll Have Another)のような優良種牡馬となる見込みのある馬を、欧州や米国の買い手以上の高値で落札できる競馬国となった。

 種牡馬への日本の高額投資は決して新しいことではない。1990年代の7頭のダービー馬、すなわちジェネラス、ドクターデヴィアス、コマンダーインチーフ、エルハーブ、ラムタラ、ハイライズおよびオースは、最終的に北海道の牧場で繋養された。その後の経過を見ると、その多くは欧州にとって大きな痛手ではなかったが、1頭の輸入馬サンデーサイレンスが日本の生産者に大きな幸運をもたらした。ケンタッキーダービー(G1)、プリークネスS(G1)、BCクラシック(G1)を制したにも拘わらず、ヘイロー産駒のサンデーサイレンスは、ケンタッキーで供用するにはあまりにも流行遅れだと評価されて吉田善哉氏に売却され、その後の日本のサラブレッド生産に変化をもたらし続けた。

 現在では多くのサンデーサイレンス産駒が優れた種牡馬となっており、とりわけディープインパクトはその産駒が今年も日本ダービー(G1)と桜花賞(G1)を制しており、日本の生産者はサンデーサイレンスの血統と異なる系統を探している。

 11月4日にケンタッキーで1日だけ開催されるファシグ・ティプトン社(Fasig-Tipton)11月セールでは日本の多額の投資が行われるだろうし、その直後に行われるキーンランド11月セールのセレクトセッションも同様だろう。

 11月22日にゴフス社(Goffs)セールで開催される、ポール・メイキン(Paul Makin)氏のポーリン社(Paulyn)処分セールにおける選りすぐりの上場馬のうちの数頭は、タタソールズ社12月セールのかなりの頭数とともに極東に行くと予想される。結局日本人購買者は、2009年1月以降、24頭以上の繁殖牝馬ないし繁殖予定牝馬をそれぞれ100万ドル(約1億円)以上で落札し、また50万ドル(約5,000万円)以上の繁殖牝馬48頭を同期間に買いあさった(これら以外に海外エージェントを通じての購買もある)。これらの投資は、不況で最も厳しい時期に行われた訳であり歓迎すべき投資である。

 それらの購買馬を挙げると、次のようなちょっとしたリストが出来上がる。
  

購 買 馬 購 買 額
重賞勝馬
ラクカラチャ(La Cucaracha) 53万ドル(約5,300万円)
ロリーフォードリー(Lolly For Dolly) 50万ギニー(約8,925万円)
シリアスアティテュード(Serious Attitude) 185万ドル(約1億8,500万円)
G1馬の母馬
レーヴディマン(Reve D’Iman)―ベスラー(Bethrah)の母 170万ギニー(約3億  345万円)
ワイオラ(Wyola)―アプルーヴ(Approve)の母 52万5,000ギニー(約9,371万円) 

 
 またヴェルメイユ賞(G1)2着馬ワイルドココ(Wild Coco)は、昨年12月に98万5,000ギニー(約1億7,582万円)で売却され、現在はケイアイファームの勝負服で出走している。

 これらはセリでの購買であり、この他にデインドリーム(Danedream)、イルーシヴケイト(Elusive Kate)、サラフィナ(Sarafina)、シユーマ(Siyouma)およびスタセリタ(Stacelita)など個人購買もされている。

 日本人に購買される馬の数と質を考えると、北米のトップクラスの牝馬が失われることで米国サラブレッド産業に影響を及ぼすかもしれないと疑い始める米国人生産者がいるのも無理はない。

 近年日本の関係者が購買したG1馬は、アーヴェイ(Ave 140万ドル(約1億4,000万円))、アゼリ(Azeri 225万ドル(約2億2,500万円))、ドバウィハイツ(Dubawi Heights 160万ドル(約1億6,000万円))、ジンジャーパンチ(Ginger Punch 160万ドル(約1億6,000万円))、マジカルファンタジー(Magical Fantasy 180万ドル(約1億8,000万円))およびザズー(Zazu 210万ドル(約2億1,000万円))などである。昨年のファシグ・ティプトン社11月セールでも日本人購買者は、230万ドル(約2億3,000万円)のコンテステッド(Contested)をはじめとする100万ドル(約1億円)以上の馬を6頭を落札している。

 ヒルンデール牧場(Hill ‘n’ Dale Farm)のオーナーであるジョン・シクラ(John Sikura)氏は今年、米国から主要血統が失われてしまう可能性について懸念を表明した。同氏はブラッドホース誌に対し、「最高の繁殖牝馬がすべて外国人に購買されたら、米国の遺伝子プールの質と生産の意義に影響が及びます。10年この調子であれば、米国の血統が骨抜きになると考えるのが常識でしょう」と語った。

 これはおそらく、欧州よりも米国の生産者にとってより大きな懸念となっていくだろう。

 手に入れられる最高のサラブレッドを購買することで、日本のサラブレッド産業は、世界で最も強力なものの1つとなった。これはセリ売上げおよび売り手の財布にとって歓迎すべきものとなるかもしれないが、現在のペースで購買が続けば、日本のサラブレッド産業が世界一となるのはそう遠くないだろう。

By Nancy Sexton
(1ドル=約100円、1ポンド=約170円)

[Racing Post 2013年11月1日「Star-studded imports have made Japan a world leader in breeding」]


上に戻る