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2013年12月20日  - No.12 - 5

リチャード・ハノン調教師、厩舎の舵取りを息子に移譲(イギリス)【その他】


 リチャード・ハノン(Richard Hannon)調教師は昨日、近代平地競馬において、実績のある長い自身のキャリアが間もなく終了することを認めた上で、「ハノン厩舎の厩舎運営は、引き続き非常に安泰です」と約束した。

 リーディングに5回輝いたハノン調教師の息子であるリチャード・ジュニア(Richard jnr)氏が、来年1月1日から英国のトップ厩舎の舵取りを引き継ぐことになるというニュースは、本紙がツイッター上でいち早く伝えた。

 英国競馬史で最多の勝馬を出したハノン調教師は、主要馬主および数えられないほどの関係者に対して、2014年初めから現在助手のリチャード・ジュニア氏に厩舎業務を事実上引き渡すことを“競馬界での公然の秘密”として認め、発表した。

 1人のリチャード・ハノンがリーディングトレーナーとしてのキャリアを終わらせる一方、もう1人のリチャード・ハノンがキャリアを開始する。ウィリアムヒル社(William Hill)による2014年のリーディングについてのオッズでは、英2000ギニーで現在一番人気のトールモア(Toormore)のほか、G1勝馬トロナード(Toronado)、オリンピックグローリー(Olympic Glory)およびスカイランタン(Sky Lantern)を擁するハノン厩舎が、エイダン・オブライエン(Aidan O’Brien)厩舎と同じ11-10(2.1倍)の一番人気となっている。

 1970年に父ハリー(Harry)からたった12頭の管理馬を引き継いだハノン調教師(68歳)は、英国クラシック優勝4回と調教師のリーディングタイトル獲得5回(今年そのいずれも1回ずつを加算した)を達成し、引退することになる。英国クラシック優勝については、今年スカイランタンが義理の息子リチャード・ヒューズ(Richard Hughes)騎手騎乗で達成した英1000ギニー優勝は、モンフィス(Mon Fils)で初めて英2000ギニーを制して以来実に40年目の英国クラシック勝利であった。

 エリザベス女王、サー・アレックス・ファーガソン(Sir Alex Ferguson)氏、ジョアン殿下(Sheikh Joaan Al Thani)のお抱え調教師であるハノン氏は、前記録保持者マーティン・パイプ(Martin Pipe)氏の記録を11勝上回る通算4,194勝で引退することを昨日発表した。ちょうどこの日に38歳の誕生日を迎えたリチャード・ジュニア氏は、予言の1つとして「父は途方もなく大きい人物であり、おそらく誰も見習うことはできないでしょう」と語った。

 キャンフォードクリフス(Canford Cliffs)が管理した馬のうち最高のマイラーであったとするハノン調教師は、「私は長くキャリアを続け多くの勝馬を管理しましたが、リチャード・ジュニアの名前で走らせるときが来ました」と語った。

 「他の誰よりもまず馬主に知らせる必要がありました。大半の馬主とは長い付き合いですので、エリザベス女王をはじめとする多くの馬主に対し、私の引退を伝えました」。

 「そしてちょうど今だと決心しました。調教師免許の移譲が来年の1月1日に行われますが、実質的には何も変わりません。私はこれまでどおり厩舎に毎日来ます」。

 「私は健康に何も問題がなく、脇役になるつもりはありません。息子とこの10年間やってきたように、毎日同じ時間に起きて、ジープに乗って調教に出掛けます。ハノン厩舎は引き続き非常に安泰です。私たちはいつも一緒に取り組んできました」。

 へリッジ調教場(Herridge Racing Stables)とイーストエヴァリー調教場(East Everleigh Stables)の舵取りを引き継ぐリチャード・ジュニア氏も同じ感想を述べた。同氏は、妻ジェミマ(Jemima)が第2子を来年1月に出産予定だが、約250頭となる2014年の管理馬が自身の名義で走ることを楽しみにしている。

 リチャード・ジュニア氏は、「父と私はいつも共に調教活動を行なってきており、今後もそのやり方を続けていきます。この15年父を手伝ってきたので、今後15年以上は逆に父が私を手伝ってくれることを望みます」と語った。

 そして、次のように続けた。「私たちはここで素晴らしい組織を築いており、ベテランから若手まで素晴らしいスタッフに恵まれています。素晴らしい2歳馬をはじめ来年に期待が持てる馬を多く管理しており、しかも義兄のリチャード・ヒューズが騎乗するでしょうから、期待するのは当然です」。

 また、ハノン調教師に敬意を表した多くのホースマンの中には、晩年に同調教師とコンビを組みミスターブルックス(Mr Brooks)とレモンスフレ(Lemon Souffle)でG1勝利を達成した伝説の騎手レスター・ピゴット(Lester Piggott)氏がいる。

 ピゴット氏は、次のように語った。「ゼロからスタートしてリチャードは素晴らしい仕事をし、素晴らしい経歴を築きました」。

 「長年彼の管理馬の多くに騎乗しましたが、彼はとりわけ2歳馬の管理に長けているといつも考えていました。彼が管理した2歳馬はいつも騎乗しやすかったです。リチャードは引退しますが、まだまだ楽しい時を過ごすでしょう」。

 グレートブリティッシュレーシング(Great British Racing)のCEOロッド・ストリート(Rod Street)氏は、「ハノン調教師の存在は、40年以上の間競馬において何が最高であるかを示す上で大きな宣伝になりました」と語った。一方、元リーディングトレーナーで長年のライバルであるサー・マイケル・スタウト(Sir Michael Stoute)調教師は、次のように語った。「私ほどリチャード・ハノン調教師を高く評価している人間はいません。彼は終始一貫性があり、アラブ圏の馬主が登場し活躍する前から、調教師界でトップクラスにいました。リチャード・ジュニア氏にもリーディングを争うのに十分な才能が備わっていると思います」。

 リチャード・ジュニア氏をリーディング争いの場に送りこんだハノン調教師もこれに同意し次のように語った。

 「調教師免許の移譲はいつ行っても良かったのですが、リチャード・ジュニアは見習いの経験を積んできており、永遠に待たせるわけにはいきません。先頭を走っているうちに移譲した方がよいでしょうし、私たちはずっと先頭を走って行くつもりです」。
 

リチャード・ハノン調教師43年間の偉業
 

 > > フルネーム:リチャード・マイケル・ハノン(Richard Michael Hannon)

 > > 生まれ:サセックス州ルイス1945年5月30日生まれ

 > > 父:ハリー・ハノン(イーストエヴァリーの調教師)

 > > 下積み:アーチー・ワトソン(Archie Watson)調教師と父ハリー・ハノンの助手を務める。

 > > 調教場:ウィルトシャー州マールボロ近郊のへリッジ調教場(1992―2013年)とイーストエヴァリー調教場(1970−2013年)

 > > 初勝利:(平地)1970年4月17日ニューベリ競馬場
                (障害)1970年4月25日トウスター競馬場

 > > パターン競走初勝利:1972年プリンセスエリザベスSをクレスピナル(Crespinall)で。

 > > 最高レーティング馬:キャンフォードクリフス(2011年RPR130)、トロナード(2013年RPR129

 > > G1最多勝馬: キャンフォードクリフス(2010―2011年5勝)、スカイランタン(2012―2013年4勝)

 > > クラシック勝馬:モンフィス(1973年英2000ギニー)、ドントフォーゲットミー(Don’t Forget Me 1987年英2000ギニー、愛2000ギニー)、ティロル(Tirol 1990年英2000ギニー、愛2000ギニー)、アセサー(Assessor 1992年ロワイヤルオーク賞、1995年伊セントレジャー)、ペニーズギフト(Penny’s Gift 2009年独1000ギニー)、キャンフォードクリフス(2010年愛2000ギニー)、スカイランタン(2013年英1000ギニー)

 > > セントジェームズパレスS勝馬:キャンフォードクリフス(2010年)

 > > サセックスS勝馬:リールバディ(Reel Buddy 2003年)、キャンフォードクリフス(2010年)、トロナード(2013年)

 > > クイーンエリザベス2世S勝馬:オリンピックグローリー(2013年)

 > > 最優秀2歳牝馬:リリックファンタジー(Lyric Fantasy 1992年ナンソープS勝馬)、レモンスフレ(1993年モイグレアスタッドS勝馬)

 > > 年間最多勝:1993年182勝、2008年189勝、2011年218勝、2012年218勝、2013年232勝(11月22日時点)

 > > 獲得賞金額によるリーディング:5回(1992年、1993年、2010年、2011年、2013年)

 > > 英国における通算勝利数:4,194勝 


By Lee Mottershead

[Racing Post 2013年11月22日「Hannon hands over the reins」]


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