海外競馬ニュース 軽種馬登録ニュース 海外競馬情報 統計データベース 海外競馬場・日程 世界の競馬および生産統計 海外競走登録 申請書類
血統書サービス 引退名馬
twitter FB
TOPページ > 海外競馬情報 > 種牡馬マネージャーは、いかにして種牡馬の価値を高めるのか(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2013年04月20日  - No.4 - 4

種牡馬マネージャーは、いかにして種牡馬の価値を高めるのか(アメリカ)【生産】


 繁殖牝馬の減少と現役種牡馬の地域内での熾烈な争いで身動きがとれず、ケンタッキー州中部の種牡馬マネージャーと馬主は、種牡馬に種付予約を取り付ける任務でますます骨を折っている。2013年にフレッシュな新種牡馬が市場に入り込むことで、繁殖牝馬の取り合いは激化する。

 各種牡馬繋養牧場はそれぞれ独自の方法で種付予約受付を行っているが、私たちはいくつかの一流牧場に対し、それぞれの種牡馬が長くキャリアを続けられるようにするための重要な決断についてくわしく説明するよう依頼した。

 牧場の最初に遂行すべき事は、種付料の設定である。優れた競走馬が種牡馬として伸び悩んだ例は枚挙にいとまがなく、その一因は強気すぎる料金設定である。

 アデナスプリング牧場(Adena Springs)のエリック・ハメルバック(Eric Hamelback)場長は、「市場は実績ある種牡馬に目を向けているので、新種牡馬にとって、種付料の設定は非常に重要です。高すぎる種付料にすると、望むような数の繁殖牝馬を集めることができません。種付料は徐々に下げるよりも上げていくほうが簡単なのです」と語った。

 ダーレー牧場の営業部長のチャーリー・ボーデン(Charlie Boden)氏は、「種付料は生産者を呼びよせる要素なので重視すべきものです。種付料が高すぎる場合、人々にその種牡馬はその価格に見合うものであると絶えず説得することになるか、非を認めて絶えず人々に電話を掛けることになります」と語った。

 しかし低すぎる種付料にも危険が伴う。まず、1歳産駒をキーンランド9月イヤリングセールのセリカタログの後ろのほうのページに追いやり、セリで目覚ましい成績を上げるのを難しくするだろう。おまけに、エアドリー牧場(Airdrie Stud)のブレレトン・ジョーンズ(Brereton Jones)氏は、「種付料を低く設定しすぎると、その馬に確信を持っていないことを市場に伝えることになるので、自らの首を絞めることになります。顧客は商品に確信を持てば高値でもお金を支払うものです」と語った。

 ダービーダン牧場(Darby Dan Farm)の種牡馬主任であるライアン・ノートン(Ryan Norton)氏は、「私たちは、種牡馬がどの価格帯に属していても、そのとおりの価値のあるものとして受け入れられることを目標としています。供用3年目で種付料を下げなければならないのは好ましくありません。片や種付料を低くしすぎれば、最初の週に400頭も種付予約が殺到した時点でハッとするでしょう」と語った。

 実績のない供用1年目の新種牡馬に種付予約を受ける(繁殖牝馬の決定)業務において、種牡馬マネージャーの最優先基準はそれぞれ異なる。新種牡馬ジェモロジスト(Gemologist)とボードマイスター(Bodemeister)を繋養するウィンスター牧場(WinStar Farm)の会長兼CEOでレーシングマネージャーでもあるエリオット・ウォルデン(Elliott Walden)氏は、欲しいものリストのトップは実績ある繁殖牝馬であると述べた。

 そして、「優良馬を出した実績がある繁殖牝馬には高齢の馬もいます。したがって、競走で堅実な成績を上げている牝馬とのクロス配合を試みます」と続けた。

 ウォルデン氏は、種牡馬の能力を引きだす繁殖牝馬の提供に協力してくれる生産者と組む方を好むと述べ、「私たちはセリシーズンだけではなく、種牡馬の長所と短所を説明し、適切な繁殖牝馬を組み合わせるために生産者と連携します」と付言した。

 ヒルンデール牧場(Hill ‘n’ Dale)のオーナーであるジョン・シクラ(John Sikura)氏は、競走成績が繁殖牝馬の選択における決め手であると述べた。

 そして、「ステークス勝ち、とりわけ重賞勝ちの牝馬がステークス勝馬を出す可能性は昔から高いです。血統も同じ理由で優先します。毎年優れた産駒を出す牝系もあれば、そうではない牝系もあります。毎年優良馬を育成し上場し健闘している牧場もあるので、血統も重要なのです」と語った。

 レーンズエンド牧場(Lane’s End Farm)のビル・ファリッシュ(Bill Farish)氏は、ザファクター(The Factor)やユニオンラグズ(Union Rags)のような新種牡馬にはさまざまなタイプの繁殖牝馬を組み合わせることが望ましいと主張した。

 同氏は、「まず初めに、新種牡馬には多様性のある繁殖牝馬を徹底して与えることとし、いろいろなタイプの血統や馬格の馬を配合するよう努めます。なぜなら、種牡馬にたった一つのクロスやタイプだけしか組み合わせないならば、それが上手く行かなかったときに彼が優良馬を出すチャンスを台無しにしてしまうからです」と語った。

 新種牡馬のタピザー(Tapizar)、トゥオナーアンドサーヴ(To Honor and Serve)に種付を予定しているゲインズウェイ牧場(Gainesway Farm)のマイケル・ハーノン(Michael Hernon)氏は、生産者、ブルードメアサイアー、競走成績のような基準をざっと確認すると同時に繁殖牝馬の受胎能力にも注意を払っていると述べた。

 同氏は、「皆さんは生殖の観点から繁殖牝馬のリスクを算出したいと思うでしょう。私たちは種牡馬の供用初期に多くの牝馬を交配させ、その種牡馬の血統を持つ多くの馬が生産されることを望んでいます。市場はあまり我慢強くはありませんので、早くに結果を出さなければなりません」と語った。

 ダーレー牧場のボーデン氏と新種牡馬アルゴリズムズ(Algorithms)を繋養するクレイボーン牧場(Claiborne Farm)の種牡馬主任バーニー・サムズ(Barnie Sams)氏は、生産者を最優先する。

 サムズ氏は「私にとっては血統と生産者が重要です」と述べ、ボーデン氏は「優秀な生産者の繁殖牝馬をどの種牡馬のもとに送るかについての考えに取って替わるものは何もありません」と語った。

 外部の生産者を若い種牡馬に注目させることに加え、生産牧場はしばしば、新種牡馬に供用開始からの数年間、あらかじめ繁殖牝馬を確保するために、長期的なパートナーが存続するシンジケートを組む。しかし経済不況と手元資金の枯渇のために、近年シンジケートは下火になっている。今もシンジケートを重要と見なす生産牧場もあるが、他の生産牧場はシンジケートを組むことを控え、自分が所有している繁殖牝馬で種牡馬を支えている。供用1年目の種牡馬は外部の繁殖牝馬を惹きつける傾向があり、このため2年目以降の難しくなるシーズンにおいては、シンジケートあるいは自己所有の繁殖牝馬が重要な役割を果たす可能性が高い。

 ウォルデン氏は、「シンジケートが組まれた繁殖牝馬はその重要な部分となります。私たちは常に自分たちのシンジケートを組もうと努力しています。また、供用1年〜2年目の種牡馬に繁殖牝馬を送ることを望む生産者グループと、供用3年〜4年目の種牡馬に繁殖牝馬を組み合わせるリスクを負ってくれる別の生産者グループを別々に築き上げるよう努めます」と語った。

 ファリッシュ氏はシンジケートが組まれた繁殖牝馬を“私たちの成功の基礎”と呼び、次のように語った。「これは父ウィル・ファリッシュ(Will Farish)が常に採っていた手段です。種牡馬の既得権益と持ち分を共有するそれらのシンジケートメンバーを持つことは、種牡馬にとって難しい時期に優良牝馬を送り込むのに不可欠です。新種牡馬に繁殖牝馬を送り込むことと、種牡馬が本当に繁殖牝馬を必要とする供用2年〜4年目に優良繁殖牝馬を送ることは別物です」。

 ゲインズウェイ牧場のハーノン氏も、これに同意し次のように語った。「種牡馬を支援する人々は、その種牡馬の大使的存在であり、毎年優良産駒を出せばよりよく売り込むことができますので、彼らは優良馬の生産を支えてくれる財産です」。

 エアドリー牧場は、シンジケートのビジネスモデルから手を引き、今まで以上に所有繁殖牝馬を種牡馬に送り込むことを考えている。同牧場は多くの優良馬を生産し、競走においても大成功を収めている。

 ブレレトン・ジョーンズ氏の息子ブレット氏は、「私たちは自力またはわずかな協力者と一緒に取り組むことが絶好のチャンスとなると感じています。なぜなら、優良種牡馬を作り出すためにすべきことについて同じ哲学を共有しているからです。適切なメンバーが揃えば、シンジケートが有益となり得ることは間違いありませんが、種牡馬そのものの将来を作り出すことができるのは、今採っている方法です」と語った。

 父親のジョーンズ氏は、「多くの人々がウォール街で株を買うような方法でシンジケートの持分を買うようになりました。彼らは自身の繁殖牝馬を送り込むのではなく、市場が売りに適した時期となるのを待ってその持分を売ります。私と同じくらい種牡馬を信じてくれる人々を求めています」と付言した。

 ジョーンズ氏は、ノーザンダンサー(Northern Dancer)とその母ナタルマ(Natalma)のクロスが成功したことを確認し、プラウドシチズン(Proud Citizen 母系の3代前にノーザンダンサーの半妹)を優良種牡馬に作り上げることができた。外部の繁殖牝馬を組み合わせていれば起こり得ないクロスで2頭のケンタッキーオークス馬プラウドスペル(Proud Spell母馬の父系3代前がノーザンダンサー)とビリーヴユーキャン(Believe You Can母馬の父系3代前がノーザンダンサー)を生産したのだ。エアドリー牧場は、新種牡馬クリエイティヴコーズ(Creative Cause)とプラウドスペル、ビリーヴユーキャンの母エルファスト(El Fasto)、G1馬ノーサッチワード(No Such Word)、G1馬を出しているメーゼルトフ(Mazel Tov)、複数のG1馬を出しているドントトリックハー(Don’t Trick Her)およびG1馬を出しているヘンダーソンバンド(Henderson Band)を交配させることで、この新種牡馬の種付予定をフルにする。

 シクラ氏は、「強力なシンジケートのおかげで、資金調達し高額馬を購買できるようになりましたが、ここ数年経済が低迷し始めたことで市場は手を引きました。負債を支払い、牧場を存続できるかどうか心配しているときは、生産者にとって1シーズンごとの支払いが無難です。私たちは今年、所有している繁殖牝馬のうち25頭を新種牡馬マクリーンズミュージック(Maclean’s Music)と交配させます。今は、新種牡馬に、所有している繁殖牝馬の多くを送り込まなければならない時代です」と語った。

 私たちが話を聞いた種牡馬マネージャーは全体的に、最適な種付頭数は年間110頭〜150頭であると考えている。この頭数により、産駒を市場に溢れさせて馬の価値を下げることはなく、やがて種牡馬にとって支えとなるのに十分な産駒を誕生させることができる。

 新種牡馬の評価は、その産駒の当歳、1歳、2歳時の落札価格で初めて分かる。いくつかのクロスを頼りにしていたばかりに、配合の調整が求められていることに気付く種牡馬マネージャーもいるかもしれない。また、各種牡馬オーナーは、何が成功して何がしてないかを評価するため、スタッフに種牡馬の産駒をできるだけ多く観察させている。

 ウォルデン氏は次のように語った。「長所と短所を見て、前例に倣って、短所を最小限にするように努めます。たとえば、ディストーテッドヒューマー(Distorted Humor)は繋養されてから2年〜3年目までの間に、曲飛で繋の緩い産駒を出しました。私たちはしっかり時間をかけて後肢が直立で真っ直ぐの牝馬を生産して同馬と交配させ、その短所をあまり目立たなくしました」。

 種牡馬マネージャーは、繁殖牝馬を送ってくれる可能性のある生産者に対し、いい馬体に繋がると思われるクロスを知らせようとする。しかし、生産者は固執する独自の考えを持っている。

 ファリッシュ氏は、「その情報を評価する生産者もいますが、“ご助言本当にありがとうございます”と言って他に行ってしまう生産者もいます」と語った。

 ハーノン氏は、種牡馬と功を奏する一定のクロスに気付いたときには、ぴったりの繁殖牝馬であることを生産者に知らせると語った。そして、「あなたは、その繁殖牝馬が素晴らしい1歳馬を出産したら、もう一度種付けに来させたいと思うでしょう。うまく行ってその産駒が高値で売れれば、その生産者は戻って来たくなるでしょう」と付言した。

 ダービーダン牧場では、ノートン氏は新種牡馬シャックルフォード(Shackleford)、ダイアルドイン(Dialed In)およびジャージータウン(Jersey Town)を管理しており、2つか3つのサイアーラインがこれらの馬それぞれと成功を収めるだろうと考えている。

 「繁殖牝馬を勧誘するときに重視しているのはこれです。おそらくサイアーラインの1つか2つかは良い結果を出し、思いもよらなかった子孫が見栄えの良い産駒に成長することがあります。私たちはどのような見栄えの馬体が成功するかをピンフッカーと産駒のエンドユーザーから意見を聞き、再調整し、成功したサイアーラインを持つ繁殖牝馬を集めます」。

 ボーデン氏は喜んで生産者たちに決断させている。

 そして次のように語った。「フィップス一族(Phipps family)が電話を掛けてきて、ストームフラッグフライング(Storm Flag Flying)を我々の種牡馬に交配させることを望むのであれば、彼らに何も言うつもりはありません。それは自然の力が支配する世界であり、私たちは繁殖牝馬Aと種牡馬Bとの交配で何が起きるか予言できるほどの才能には恵まれていません」。

 ハメルバック氏は次のように続けた。「アデナスプリングス牧場(Adena Springs)オーナーのフランク・ストロナック(Frank Stronach)氏の哲学は、1歳馬を生産してもなお、競走成績とクロスを探すというものです。馬体の見栄えは重要ですが、走るときに性格が素直でない馬は沢山います。ジンジャーパンチ(Ginger Punch)は前膝を痛めていましたが、それでも風のように走り抜いていました。私たちは問題をごっちゃにするつもりはなく、馬の気質はなるようにしかなりません」。

 サムズ氏はこれに同意し、次のように語った。「私たちは生産者にどの牝馬を送り込むか促したり助言したことはありません。どのような交配が成功するかを言うことは簡単ですが、馬が出走してそれが証明されるまで誰にも分かりません」。

 新種牡馬は新鮮で未来があるので、供用1年目に繁殖牝馬を集めることは、それに続く年に比べたら困難なものでは全くない。2年〜4年目、あるいは種牡馬の魅力を増大させる出走産駒が出て来るまで、生産牧場は“自家生産繁殖牝馬”を強化し多くをその種牡馬と交配させ、種付頭数を下支えするようにシンジケートのメンバーを頼りにする。

 ウォルデン氏は、「勢いを持続することは難しいが継続させなければなりません。産駒の質と種付頭数を維持したいので、数年は新種牡馬を後押します」と語った。

 ファリッシュ氏は次のように語った。「新種牡馬が初年度で125頭程度の繁殖牝馬を集められないのであれば、何かが上手くいっていないことになります。実際、重要なのは2年目です。私の父は主として、多くの所有牝馬を新種牡馬と交配させ、その後それが本当の意味で救いになりました。キングマンボ(Kingmambo)、レモンドロップキッド(Lemon Drop Kid)およびスマートストライク(Smart Strike)のような種牡馬は一時的な低迷を経験したが、その後本当に強くなりました。スマートストライクの場合はサムサン牧場(Sam-Son Farms)がサポートしていました」。

 平均的な種牡馬のいる牧場は、産駒成績が明らかになるまで種牡馬生活を存続させるためのいくるかのプランを実行します。大半の牧場は、複数頭の繁殖牝馬に種付けするとその種付料を下げたり、仔分けの手配をしたり、スペンドスリフト牧場(Spendthrift Farm)が始めた繋養開始から2年間の種付けシーズンに前金支払いがあれば生涯の種付権利を与える“シェアザアップサイド(Share the Upside)”のようなプログラムを実行するだろう。

 これらのプランはすべて、十分な頭数の産駒を競馬場に送り込み、そこで成功を収めるチャンスを高めるためのものである。いくら血統研究や馬体の見栄えを踏まえても、最終的には産駒の競走成績が種牡馬にとっての厳密な評価となるからだ。商業的に成功したものの産駒の競走でのパフォーマンスが今一つの種牡馬は、種牡馬生活を長く続けることができないだろう。逆に言えば、馬体に欠点のある産駒を送り出してもその産駒が重賞勝馬になった場合、この種牡馬は非常に多忙な種牡馬生活を送ることになる。

 シクラ氏は次のように語った。「明らかな馬体の欠点は、セリでの落札価格に影響します。しかし、結局一番大事なのは産駒が走るかどうかです。ストームキャット産駒は、オフセットニー(訳注:前膝において、前腕の軸と管部の軸がずれている不良構造)でした。曲がりすぎていたほどです。しかし産駒は走り、それはストームキャット産駒の特徴の1つとなりました。生産者たちは、“典型的なストームキャット産駒の膝だ”と言うようになりました。ノーザンダンサーについては、“こんな小さな馬に繁殖牝馬を送ることはないだろう”と言っていたものです。その後ノーザンダンサー産駒が走り出すと“典型的なノーザンダンサー産駒”となり、ディストーテッドヒューマー産駒が走り出すと“典型的なディストーテッドヒューマー産駒の繋だ”と言われるようになりました。これらの欠点は、産駒が走りさえすれば利点となります」。

 そして次のように付言した。「管理している種牡馬の産駒が競馬で素晴らしいスタートを切ることは、まるで高校の同窓会に行くようなものです。20年間話さなかった人々があなたを心から歓迎し、彼らはあなたがこれを達成することはずっとわかっていたと言います」。

 クロス配合が競走で功を奏せば、生産者と種牡馬マネージャーはその種牡馬に同じ系統の繁殖牝馬を送るようになる。ウィンスター牧場はスパイツタウン(Speightstown)がデピュティーミニスター(Deputy Minister)の牝馬と相性が良いことを発見し、それまであまり優れた仔を出していなかったデピュティーミニスターの牝馬ビジネスプラン(Business Plan)をスパイツタウンと交配させた。そして、このカップリングはトラヴァースS(G1)勝馬ゴールデンチケット(Golden Ticket)を生み出した。

 ファリッシュ氏は、「サドラーズウェルズ(Sadler’s Wells)のクロスがキングマンボの血統とうまく行くや否や、誰もが所有牝馬を連れて飛んできました」と語った。

 ハーノン氏は、「瞬間的に情報が伝わる今日の世界では、結果が出れば情報があっという間に拡散します。ダービーに繋がるレースでの結果は、取引にさらに影響を及ぼし、種牡馬により多くの人気をもたらします」と指摘した。

 ダーレー牧場のボーデン氏は、「ニュースに出てくる特定の血統の組み合わせが事業を後押しすることになります。キャッシュコールフューチュリティ(G1)勝馬ヴァイオレンス(Violence)は、父メダグリアドーロ(Medaglia d’Oro)で母ゴーンウエスト(Gone West)の牝馬ですが、私は今年どれだけ多くのゴーンウェスト牝馬をメダグリアドーロと交配させたか分かりません」と語った。

 ブレレトン・ジョーンズ氏はより簡潔に述べた。「競馬場でうまく行っていることに従って進めていかなければ、あなたは倒産するでしょう」。

 おそらく生産者の数と同じぐらい多くの生産理論がある。見逃すことのできない実績ある種牡馬がいる一方で、次にブームとなる比較的マイナーな種牡馬がいる。血統を組み合わせるツールと心拍数と完歩の分析は生産者たちを助けるための手段としてインターネットにすべて掲載されているが、多くの人々にとってステークス勝馬を得ることは定義が難しく、その科学も不正確なままである。毎年、一流競走馬がリーディング新種牡馬になっているように思われる一方で、生産者たちは少なくとも初めのうちはウォーフロント(War Front)、キャンディライド(Candy Ride)、ハーランズホリデー(Harlan’s Holiday)およびキトゥンズジョイ(Kitten’s Joy)のような現在の人気種牡馬を相手にしなかった。馬生産は、今日成功しているものに人気の流れを取りこむ努力をする事業のようだ。しかし逆張り投資家が成功する余地が多く残っている事業でもあり、繁殖牝馬を決めることを任務とする種牡馬マネージャーを最も奥深いプロセスに引き込んでいくことになる。

By Lenny Shulman

[The Blood-Horse 2013年3月9日「GOOD READ―How stallion managers put together a book of mares」]


上に戻る