米国サラブレッド産業は本当に回復したか?(アメリカ)【生産】
2013年は、ケンタッキー州に限らず全米において、1歳セール、2歳トレーニングセールおよび繁殖牝馬セールの売上げが大幅に増加しサラブレッド市場が回復した年であった。しかし、長期的にみて生産者の自信を反映する重要な統計値である現役繁殖牝馬数には、著しい増加が見られなかった。
ジョッキークラブの2013年繁殖牝馬報告(Report of Mares Bred)によれば、10月の報告締切時において、繁殖牝馬3万4,174頭が1,698頭の種牡馬と交配していた(2012年同時期は繁殖牝馬3万5,391頭が1,861頭の種牡馬と交配)。これは全米の現役繁殖牝馬数の3.4%減を示しているが、特に2008年〜2011年の生産規模の急減を味わった後において、全体的な数字として2012年〜2013年は極めて安定していたことを示している。
国内の現役繁殖牝馬の45.9%が繋養されサラブレッド生産が最も盛んなケンタッキー州では、2013年の繁殖牝馬数が2.2%増加し、現役種牡馬数が224頭から235頭に増加した。しかし地域市場においては、楽観的な状況ではない。全米トップ10に入るサラブレッド生産州では、メリーランド州だけが2012年〜2013年に種牡馬数(23頭⇒30頭 30.4%増)と繁殖牝馬数(554頭⇒647頭 16.8%増)で大幅な増加を示した。2位から5位のフロリダ州、カリフォルニア州、ルイジアナ州およびニューヨーク州では2013年に受胎が報告された繁殖牝馬の25.1%が繋養されているが、繁殖牝馬数は平均4%の減少、種牡馬数は平均7.1%の減少であった。
減速しつつも続いている広範囲にわたる地域市場の縮小を見ると、市場での高額取引の復調が中間層のレベルまで及びつつある一方で、小規模な生産牧場は引き続き苦しんでいることが分かる。そういうわけで、オカラブリーダーズセール社(Ocala Breeders’ Sale: OBS)10月混合セールにおいて売上げが堅実に増加したことは、2年連続での2歳トレーニングセールと1歳セールの増加もあり、歓迎すべき兆候であった。
フロリダ州のジャーニーマンスタッド(Journeyman Stud)の共同オーナーであるブレント・ファーナング(Brent Fernung)氏は、次のように語った。「生産者に馬を上場してもらうには、彼らが稼ぐことができると納得する必要があります。生産界に従事するようになってから何回かこのサイクルを目にしてきました。そしてサラブレッド市場で回復が一番遅いのは常に生産部門です。生産者は、若馬がよく売れ始めるようになって初めて、稼ぐことができると確信し、繁殖牝馬を購買するか前年に繁殖に使わなかった牝馬を使うのです」。
広範囲の地域生産市場の健全性を示す指標は、さらに現れ続けている。12月9日のファシグ・ティプトン社(Fasig-Tipton)ミッドランティックセールの平均価格は38.8%増加し、中間価格は25%増加した。今後開催されるセリは、1月22日〜24日のOBSウィンター混合セール、1月27日のバレッツ社(Barretts)1月混合セールである。フロリダ州では少なくとも種牡馬マネージャーは慎重ではあるものの楽観的である。同州は、愛ダービー勝馬トレジャービーチ(Treasure Beach)、2009年にフランスでレーティングの高かった2歳馬だったパッションフォーゴールド(Passion for Gold)など18頭の新種牡馬を歓迎している。
やや驚くべきはペンシルヴァニア州(15%減)とルイジアナ州(11.5%減)での繁殖牝馬の急激な減少であり、これらの州はスロットマシン収入で増加した賞金額のために市場の改善あるいは少なくとも安定性が見られることを多くの人々が期待していた。その大きな原因は政策であった。ペンシルヴァニア州の事業年度上半期のスロットマシン収入が期待以下であったことと、当初ペンシルヴァニア州競走馬開発基金(Pennsylvania Race Horse Development Fund)に計上されていた財源を引き続き州の一般会計に転用したことにより、同州の馬主と生産者に期待よりも少ない奨励金しか提供されないという事態を招いていた。またルイジアナ州については、2012年後半から2013年前半にかけて、同州4場のスロットマシン収入が低迷したことが一因となっていた。
経済不況は、生産の世界から質の低い繁殖牝馬や種牡馬を取り除かせるのに役立つ一方、米国全体の半分以上を占める地域市場における健全で安定したサラブレッド数は、競馬産業全体の健全性のために不可欠である。今後地方の混合セールおいて引き続き売上げが増加すれば、米国サラブレッド産業における回復がしっかりした基盤の上に築かれたものであることは一層確実なものとなるだろう。
By Avalyn Hunter
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