フランケルの仔受胎のオークス馬、約7億円で落札(イギリス)【生産】
ダンシングレイン(Dancing Rain)は、12月2日のタタソールズ社12月繁殖牝馬セール1日目、モハメド殿下の馬購買顧問ジョン・ファーガソン(John Ferguson)氏に400万ギニー(約7億1,400万円)で落札され、2011年の英国とドイツのオークスを制したときと同様、人々の期待を裏切らなかった。
聖書にあるモーゼの海割りのように観客と購買者の波が分かれ、貴重なフランケルの仔を受胎しているこの日のスターホースのダンシングレインは、期待に溢れた雰囲気の中でリングに入場した。
今回のセリの目玉となるこの上場馬に対する戦術にふさわしく、競り合いは、グラント・プリチャード-ゴードン(Grant Pritchard-Gordon)氏が付けた最初の価格200万ギニー(約3億5,700万円)から始まったが、ファーガソン氏が落札価格に至る過程は熱狂的というよりも静かなもので、競り合いに参加していたデヴィッド・ミントン(David Minton)氏とロブ・スピアーズ(Rob Speers)氏をわずか1回の付け値で突き放した。
「これは要するに、いつもクラシック勝馬を手に入れるための可能性を高めるゲームなのです。ダンシングレインのような牝馬あるいはその牝駒を所有していると、クラシック勝馬を手に入れるための確率は上がることになるのです」とファーガソン氏は語った。
ダービー馬ドクターデヴィアス(Dr Devious)を近親に持つダンシングレインは、メイビー(Maybe)がモイグレアスタッドS(G1)を制したことにより2011年のセールにおいて240万ギニー(約4億2,840万円)で落札されたその母スモラ(Sumora)の3/4妹でもある。
「我々のダーレー牧場には多くの牝馬がいますが、常に宝石を探していており、ダンシングレインはまさに宝石です」とファーガソン氏は語った。
「彼女は血統表からみても完璧で、そして美しく素直な牝馬です」。
「そしてもちろん、フランケル(Frankel)と交配させる必要がないことは、非常に魅力的です」。
今回の落札価格は、リアム・ノリス(Liam Norris)氏とハンティンドン(Huntingdon)卿が、ダンシングレイン(父デインヒルダンサー)が1歳時にゴフス社(Goffs)のセリで支払った落札価格20万ユーロ(約2,800万円)の20倍を優に超える。同馬はその後、マーティン&リー・テイラー(Martin and Lee Taylor)兄弟の勝負服でクラシック勝利を達成した。そしてこの2人は、同馬が欧州の公式セリで売却された2番目の高額牝馬となるのを目撃することとなった。
しかしこの日の驚くべき落札額は優秀な牝馬フィエゾラーナ(Fiesolana)で、同馬はニアルコスファミリー(Niarchos family)のレーシングマネージャーであるアラン・クーパー(Alan Cooper)氏に96万ギニー(約1億7,136万円)で売却されたが、この落札額は、ランウェイズ牧場(Lanwades)で供用されているオージールールズ(Aussie Rules)産駒の最高売却額の4倍以上に相当する。
バリーフィリップスタッド(Ballyphilip Stud)が上場し、10月のチャレンジS(G2)で牡馬相手に勝ったフィエゾラーナについて、クーパー氏は次のように語った。「フィエゾラーナは美しく、丈夫な牝馬です。長期的計画としては、マキシオス(Maxios)と交配させます。現役を続けさせるかどうかについて長い間じっくり考えていますが、まだ結論はでていません。最後の勝利を目の当たりにして、彼女がいろいろな面での強さを持っており、強靭なファミリー出身であることが分かります」。
勝鞍のあるクリスエス(Kris S)の牝馬タイダルリーチ(Tidal Reach)を母とするフィエゾラーナは、G2勝馬イニット(Innit)、実績のある障害馬タイダルフューリー(Tidal Fury)およびティダラエンジェル(Tidara Angel)の半妹である。
ダンシングレインの高額落札は高値購買の連鎖を呼び、このオークス勝馬とフィエゾラーナの間に挟まれて、キャッスルブリッジコンサインメント(Castlebridge Consignment)のドロップス(Drops)は、フランケルの仔を受胎して上場されシルフィールドブラッドストック(Silfield Bloodstock)に75万ギニー(約1億3,388万円)で落札された。
キャッスルブリッジコンサインメントのチャーリー・メイソン(Charlie Mason)氏は、「ドロップスは匿名の顧客に購買されましたが、同馬が大成することを望んでいます」と語った。
「ドロップスは私の牧場に戻り、そのフランケル産駒は牡馬か牝馬に拘わらず出走させるでしょう。フランケルの仔が腹にいるという要素は大きかったですが、カタログにはそれらの情報はすべて書き込まれています」。
4歳牝馬ドロップス(父キングマンボ)は、2006年に460万ギニー(約8億2,110万円)で落札され欧州最高額牝馬となったマジカルロマンス(Magical Romance)の半妹で、クラシック2勝のチャンピオン牝馬アレクサンドロヴァ(Alexandrova)の娘。
ドロップスの後にはG3勝馬レディウィングショット(Lady Wingshot)がリングに登場し、クラシック優勝馬主イマド・アルサガール(Imad Al Sagar)氏の代理のトニー・ナーシズ(Tony Nerses)氏に65万ギニー(約1億1,603万円)で落札された。
もう1頭のG3勝馬レディーズファースト(Ladys First)は、同じ65万ギニー(約1億1,603万円)で匿名の顧客の代理のトム・ゴフ(Tom Goff)氏に落札され、セリ終盤に面白味を添えた。ゴフ氏は、同馬を"絶対的な女王"と言い表し、おそらく直接繁殖入りするだろうと付け足した。
ダンシングレインは10万ギニー(約1,785万円)超えを果たした39頭のうちの1頭であり、売上げが昨年の同セッションを64%上回る合計1,869万3,000ギニー(約33億3,670万円)となるのに寄与した。平均価格と中間価格はいずれも、2012年をそれぞれ51%と40%上回り、9万2,084ギニー(約1,644万)と4万2,000ギニー(約750万円)となった。
(訳注:なお、タタソールズ社12月セール2日目の12月3日には、イモータルヴァースが欧州記録の470万ギニー(約8億3,895万円)で落札された)
タタソールズ社12月セールの最高価格馬6頭 | ||||
年 | 馬名 | 上場者 | 購買者 | 購買額 |
2013 | イモータルヴァース (Immortal Verse) |
マウントクートスタッド (Mount Coote Stud) |
BBAアイルランド社 (BBA Ireland) |
470万ギニー (8億3,895万円) |
2006 | マジカルロマンス | エルムススタッド (Elms Stud) |
ロンドンティーブレッドサービス社 (London T'bred Services) |
460万ギニー (8億2,110万円) |
2013 | ダンシングレイン | クレアモントスタッド (Clairemont Stud) |
ジョン・ファーガソン氏 (John Ferguson) |
400万ギニー (7億1,400万円) |
2007 | サトワクイーン (Satwa Queen) |
ジャン・ド・ルーアル氏 (Jean De Roualle) |
ジョン・ファーガソン氏 | 340万ギニー (6億690万円) |
2007 | サンダーカミロ (Sander Camillo) |
シャルフリートステーブル (Shalfleet Stables) |
ジョン・ファーガソン氏 | 320万ギニー (5億7,120万円) |
2007 | オーシャンシルク (Ocean Silk) |
スウェッテナムスタッド (Swettenham Stud) |
ジョン・ファーガソン氏 | 320万ギニー (5億7,120万円) |
By Katherine Fidler
(1ポンド=約170円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2014年No.3「イモータルヴァース、欧州記録の470万ギニー(約8億3,895万円)で落札(イギリス)」
[Racing Post 2013年12月3日「4,000,000gns」]