フランケル牝駒、アイルランドの当歳馬最高価格で落札(アイルランド)【生産】
フランケル(Frankel)とフィンシャルベオ(Finsceal Beo)の牝駒は、ゴフス社11月当歳セール(Goffs November Foal Sale)の最終日(11月20日)に、エージェント(馬売買仲介業者)のダーモット・ファリントン(Dermot Farrington)氏により、アイルランドのセリでの当歳馬の最高価格180万ユーロ(約2億6,100万円)で購買された。
偉大なフランケルの初年度産駒が上場されることは確実視されていたが、待ちに待たれたこの数ヵ月間はドラマチックな形で最高潮を迎えた。
昨年このセリ会場で285万ユーロ(約4億1,325万円)で落札されベレスフォードS(G2)を制した無敗のダービー有力馬オルマンリヴァー(Ol’ Man River 父モンジュー)の半妹が、アルエイルスタッド(Al-Eile Stud)により上場された。この牝駒がこのセリの主役を演じることはずっと前から予想されており、競り合い当初からこうなることははっきりしていた。
これまでのアイルランドの当歳馬最高価格は、2011年にシーザスターズ(Sea The Stars)牡駒に付けられた85万ユーロ(約1億2,325万円)であったが、フランケルの牝駒は競り合いの早い段階ですでにこの価格を上回った。競売人のヘンリー・ビービ(Henry Beeby:ゴフス社のCEO)氏が始値を200万ユーロ(約2億9,000万円)としたことが、多くの来場者を驚かせ、フィリップ・シュタウフェンベルク(Philip Stauffenberg)氏は入札を150万ユーロ(約2億1,750万円)から始めるよう促した。
しばらく反応が見られなかったが、その後ファリントン氏が160万ユーロ(約2億3,200万円)を付け、そして数分後に彼が2度目に付けた価格は、ジム・ボルジャー(Jim Bolger)厩舎の才気あふれる英愛1000ギニー勝馬フィンシャルベオの仔を獲得するのに十分であった。
ファリントン氏は次のように語った。「この牝駒を獲得できたことを非常に嬉しく思います。匿名の顧客のために購買しましたので、これ以上詳細を述べることはできません。彼女は差し当たりアイルランドに留まるでしょう。このように並外れて素晴らしい牝駒が上場されることは滅多にありません」。
180万ユーロ(約2億6,100万円)という落札額により、この牝駒は2002年以降に欧州で落札された中で最高価格の当歳馬となるとともに、これまでの欧州の落札額の中でも3番目に高い価格となった。
このフィンシャルベオの仔は、画期的なゴフス社11月当歳セールの中心的存在となったが、この日は他にも3頭のフランケル産駒が上場され呼び物となった。フリアーズタウンスタッド(Friarstown Stud)が上場した2頭は惜しくもリザーブ価格(販売希望価格)に達しなかったが、エアリースタッド(Airlie Stud)が上場したロイヤルロッジS(G2)勝馬スティーラー(Steeler)の半妹であるフランケル牝駒を巡っては競り合いが行なわれた。
同馬は当初55万ユーロ(約7,975万円)で売買が成立したが、誤って同一人物による2つの付け値が受け付けられたうえに、その人物は競り合いには実際関わっていなかった。結局、英国に拠点を置くシンジケートのRBLが46万ユーロ(約6,670万円)でこの牝駒を落札したことで、この事件は解決した。シンジケートはこの牝駒を来年秋のセリで上場するかもしれないし、手元に置いてレースに使うかもしれない。
マイルのG1を2勝し最近引退したトロナード(Toronado)を半兄とするガリレオ産駒も、昨年の最高価格42万ユーロ(約6,090万円)を上回った。リトルジョンブラッドストック(Littlejohn Bloodstock)所有のこの牝駒は、ロベール・ナタフ(Robert Nataf)氏がデヴィッド・ボウ(David Bowe)氏に競り勝ち52万ユーロ(約7,540万円)で獲得した。
ナタフ氏は、「顧客の代理でこの牝駒を購買しました。おそらく来年のアルカナ社(Arqana)の8月1歳セールで再び上場されるでしょう。トロナードを生産したのは兄ポールなので、私はこの牝駒とそのファミリー(牝系)についてよく知っています」と語った。
ロペデヴェガ(Lope De Vega)産駒の需要は引き続き高く、エートルアム牧場(Haras d’Etreham)のニコラ・ド・シャンビュール(Nicolas de Chambure)氏はこのリーディング新種牡馬の牝駒に30万ユーロ(約4,350万円)を支出した。この牝駒の半姉は、何度もG1競走で2着〜3着となっているヴェニュスドミロ(Venus De Milo)である。
各地のセリで活躍するエージェントのミック・フラナガン(Mick Flanagan)氏は日本人顧客の代理として購買を行い、ジム・ボルジャー調教師のレッドモンスタウンスタッド(Redmonstown Stud)が上場したニューアプローチ(New Approach)の牡駒に29万ユーロ(約4,205万円)を支出した。この牡駒は、2歳時と3歳時に同調教師の管理のもとで活躍したドーンアプローチ(Dawn Approach 父ニューアプローチ)に近い血統である。[訳注:ドーンアプローチはこの牡駒の母フェイン(Fainne 父パントルセレブル)の半弟である。]
フラナガン氏は次のように語った。「この牡駒はアイルランドで活躍できるのでここで出走してもいいですし、日本に輸出することもできます。アイルランドで強い競走馬になるでしょうが、1歳時の維持費のことを考えたくはありません」。
この日は、優れた血統を有するもう1頭のガリレオ牝駒が注目を浴びた。この愛1000ギニー(G1)の勝馬サオワール(Saoire)の仔は、ヒューゴ・メリー(Hugo Merry)氏により25万ユーロ(約3,625万円)で購買された。
メリー氏は次のように語った。「アンドリュー・ローゼン(Andrew Rosen)氏の代理でこの牝駒を競走馬として購買しました。私は2009年にここのオービーセール(Orby Sale)での最高価格でこの牝駒の半姉ピンクディーヴァ(Pink Diva)を購買しました。デビュー戦で優勝し、才能に溢れていましたが、残念ながら故障し、現在は繁殖入りしています。私はこのファミリーを大いに信頼しており、この牝駒はずっと価値を持ち続けるでしょう」。
By Ryan McElligott
(1ユーロ=約145円)
[Racing Post 2014年11月21日「Legend’s foal sets €1.8m Irish record」]