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2014年03月20日  - No.3 - 3

騎手組合の最優先事項は騎手の安全問題(アメリカ)【その他】


 騎手組合(Jockeys’ Guild)の2014年総会のある場面において、講演者は会場の150人の騎手に対し、レース中に落馬したことがない者に挙手を求めた。

 驚くことではないが、誰も挙手しなかった。この成り行きは、テリー・ミックス(Terry Meyocks)事務局長が2007年の就任当初から最優先事項としてきた“騎手の安全”の重要性を肝に銘じさせた。騎手組合は1月27日〜28日にフロリダ州ハリウッドで開催した今年の総会において、引き続き安全問題を重点的に取り上げた。

 神経心理学者のケネス・ペライン(Kenneth Perrine)博士は、2013年4月アケダクト競馬場で落馬事故による頭蓋骨骨折などの負傷で騎手を引退したラモン・ドミンゲス(Ramon Dominguez)元騎手などと一緒に取り組んだ経験があるが、競馬場に外傷性脳損傷と脳震盪の両方を診察し初期治療を行うことのできる医療スタッフを待機させておくことの重要性について語った。

 ペライン博士は、「ドミンゲス騎手ともう1人の騎手と、脳震盪の管理法がどれだけ小さく扱われているかについて話した時、あっけに取られました。騎手というものは自身で騎乗再開時期を決めるにもかかわらず、いかなるガイドラインも管理法も治療法もないままで、あいにく最も脳震盪になり得るスポーツ選手です」と語った。

 そして、「私はドミンゲス騎手に脳震盪の治療法と管理法について話した時、サッカーをする女子中学生の方がまだそれらの方法について把握していると説明しました」と付け足した。

 ペライン博士が頭部外傷を適切に診察する重要性を主張したこと受けて、ジョッキークラブの子会社インコンパスソリューションズ社(InCompass Solutions)のビジネスサポートマネージャーであるミッシェル・ペナ(Michelle Penna)氏は、騎手健康情報制度(Jockey Health Information System: JHIS)の一環である新しい脳震盪の基準検査プログラムがどのように機能するかについての概要を述べた。

 基準検査は騎手の健常時の体のバランスと脳機能に関する情報を提供する。医療関係者は脳震盪を発症した騎手が安全に騎乗再開できる時期を決定するときに、この情報を比較のために役立てることができる。

 また、JHISは緊急時に医療関係者が最善の治療を行えるように騎手の医療記録を提供する。現時点でJHISが対象としている騎手は約450人で、それらの記録に脳震盪の基準検査の記録を加えることができる。そして現在JHISが対象としていない騎手は、基準検査に参加することによりJHISに加えられる。

 カール・マッタコラ(Carl Mattacola)博士は、騎手負傷データベース(Jockey Injury Database)の最新情報を提供した。2012年開始のこのデータベースは、競馬場設備や騎手が使用する器具を改善するために騎手の負傷を追跡することを目的としている。データベースは馬のために同様の理由で設立された馬故障データベース(Equine Injury Database)に似ている。

 騎手たちは騎手負傷データベースへの参加競馬場が増加することを望む一方、ミックス氏は騎手組合が騎手から直接報告を集める地域担当マネージャーを持つよう取り組んでいる。マッタコラ博士は現時点でたった237件の落馬しか報告されていないので、より多くの参加の必要性を強調した。

 またこの総会において、ロバート・クラークソン保険会社(Robert Clarkson Insurrance)のチップ・アトキンス(Chip Atkins)氏は、騎手に医療費負担適正化法(Affordable Care Act)の下で健康管理を受けさせるための将来の援助の要点を述べ、それを申し出た。

 ミックス氏は、近年騎手組合のメンバーは44%増加して1,100人となったと語った。そして、「2009年の破産を切り抜けた後、騎手組合はその当時ウェイン・ガートメニアン(Wayne Gertmenian)博士の指揮下で引き起こされた貯蓄金損失を騎手たちに返済し、また多くの北米の競馬場で賞金が支払われない着外の騎手の騎乗料のベースアップ計画を導入したことにより信頼を取り戻しました」と語った。

 「破産してから現状まで回復するまでに、メンバーとならなかった騎手は大きなミスを犯しています。騎手組合は本当に良い方向に向かっています」と、ジェリー・ラサラ(Jerry LaSala)騎手は語った。

 ハビエル・カステリャーノ(Javier Castellano)騎手は、ミックス氏は騎手の安全性を高めるために懸命に取り組んできた細部に気を配る人物であると語った。

 そして次のように続けた。「私たちは大きく前進しました。競馬というスポーツにおいては多くのことが起きますが、ミックス氏は人馬の安全に関してどのような些細な事柄も主張します。この姿勢はどの騎手にとっても前進となるでしょう。人馬ともに安全な環境にいれば、観衆、関係団体、賭事客の全員が利益を受けることになります」。

 また騎手たちは、カリフォルニア州、ケンタッキー州、ニューヨーク州、オハイオ州およびウエストヴァージニア州で騎手組合のロビー活動を行う人々と会う機会を持った。ケンタッキー州のロビイストであるビル・メイ(Bill May)氏は、「騎手組合は、新しい法律や財源に対して反発する団体から、このような提案を可決して初めから騎手の懸念に対応するルールを制定することを試みることで、より積極的な役割を演じる団体に変化しました」と語り、「過去とは違い、私たちは最前線にいます」と付け足した。

 ミックス氏は、近い将来多くのロビイストが加わるだろうと述べた。

 またこの総会において、競馬の振興のために騎手たちを採用するアイデアについて話し合われた。ドミンゲス騎手は、騎手たちは競馬の振興に必要なことであれば協力することに乗り気であることを競馬場に知らせるべきであると語った。

 ドミンゲス騎手は、「改善に多くの余地が残されており、騎手を売り込むことで多くの事が実現できます。騎手たちがオープンでできることがあれば協力したいと考えていることを人々に知らせる必要があります」と語った。

By Frank Angst

[The Blood-Horse 2014年2月8日「Safety Priority for Jockeys’ Guild Members」]


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