香港ジョッキークラブ、中国における馬の福祉への意識向上を呼び掛ける(香港)【開催・運営】
香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club: HKJC)のCEOウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges)氏は、競馬インフラと動物の福祉を真剣に検討せずに中国大陸での競馬発展を計画することは大きな惨事をもたらすだろうと警告した。
中国本土の競馬と生産についての5時間にわたるセッションで締め括られた3日間のアジア競馬会議(Asian Racing Confrence: ARC)の後、ブレスケス氏は本紙(レーシングポスト紙)に対し、「賭事面について考え始める前にこれについて考えるべきです」と語った。
ますます中国が重要視されていることで、英国競馬界の幹部はオーストラリア、フランスおよびアイルランドのカウンターパートに倣い急いで中国の実情調査に踏み出した。しかし、このセッションに参加していたとすれば、中国競馬の発展の可能性よりも問題点について多くを学んだだろう。
ブレスケス氏は主な懸念を次のように総括した。「規制体制の構築が重要ですが、人々の意識が最大の問題です。上空9,000メートルを事もなげに飛ぶことはできません。それには地上において念入りな作業が必要であり、人々を訓練しなければなりません。それは厩舎スタッフから競馬場の役員にいたるまであらゆる段階で行われるべきです」。
馬の福祉について、同氏はHKJCの獣医臨床サービス主任のクリス・リッグス(Chris Riggs)博士の発表を挙げた。同博士はこの発表において、馬の近代的な診療に精通した獣医師の著しい不足、限られた臨床施設(中国全体で馬診療所は1つしかない)、最新の薬剤が十分に無いことについて強調した。
さらにリッグス博士は、獣医師は一般的に軽視されているのと同時に馬産業から十分な支援を受けておらず、馬主もその存在を十分に認識していないと語った。
近年いくつかの競馬場をオープンさせる計画があったが、そのほぼすべてが当局により迅速に頓挫させられるか中止させられた。武漢競馬場だけが今年14日間の競馬開催を行う予定であり、定期的な競馬を行っている。
中国に馬を販売する人々に対し中国人の福祉分野における進捗状況をよく観察するよう呼び掛けるブレスケス氏は、次のように語った。「現行の計画の多くは土地開発を財源としているので、設備投資は簡単です。問題は運営費であり、言い換えれば賭事収入無しでどのように運営費を賄い出資するかは、誰も推測できません」。
「人々は競馬をスポーツとして発展させることに本当に熱心であり、初めて次官が中国馬術協会(China Equestrian Association)の会長となったことはとても前向きな兆候です」。
「しかし賭事面は、まず第一に公正なスポーツを構築しなければならないので、全く別の問題です」。
香港から車で3時間の広州近郊の、2010年にアジア馬術競技会が開催された従化トレーニングセンター(Conghua Training centre)を開発することがこの問題に対するHKJCの対応であった。
すでに多くのお役所仕事に遭遇しているこの計画は、2017年のオープンが予定されており、当初450頭とされていた収容頭数は1,500頭にまで増加するかもしれない。これはシャティン競馬場の混雑状態を和らげることを意図しており、同時に香港と中国大陸の馬主からの預託馬に満足の行く調教を施し、中国大陸の人材を育てることを目的としている。
ブレスケス氏は次のように語った。「これは香港の調教事業の拡大ですが、預託馬が出走することになるシャティン競馬場に似た馬場を設置しました。依然として賭事面には問題がありますが、今は一旦それを脇に置き着実に準備を進めます」。
By Howard Wright
[Racing Post 2014年5月10日「HKJC urges welfare consideration」]