ヨーロッパ短距離競走の競馬番組を補強(欧州)【開催・運営】
世界との競合に直面する欧州の短距離競馬部門では、トップレベルのスプリンターの減少に歯止めをかけるために、抜本的な見直しが行われている。
ヨーロッパ・パターン競走委員会(European Pattern Committee: EPC)は8月26日、3歳馬の競馬番組の強化を中心とした多くの変更を発表した。これには、2015年ロイヤルアスコット開催の金曜日に6ハロン(約1200m)の3歳限定G1競走を新設することが含まれる。なお、まだ競走名が決定していないこの新設競走を最大限に成功させるために、ダイヤモンドジュビリーS(G1)は古馬限定となる。
英国ではそれ以外にも、例えば英チャンピオンズスプリントSが来年、英国チャンピオンズデーの4つ目のG1競走となるほか、アイルランド、フランス、ドイツでも競走が格上げされる。
ブックメーカーは、ロイヤルアスコット開催に新設競走を組み入れるためにバッキンガムパレスS(約1400m 3歳以上ハンデ戦)が除外されることには慎重な姿勢だが、調教師たちはこの変更を歓迎した。
EPCのブライアン・カヴァナー(Brian Kavanagh)会長は、「EPCは、短距離以外を走る馬のために、3歳馬が古馬に挑む態勢が整うとされる真夏まで、一連の3歳限定戦を提供しています。マイラーや中距離馬に関しては、欧州に世界最高レベルの馬がいると主張できますが、それは偶然なことではありません。しかし、トップレベルの欧州3歳スプリンターが不足しているのは明らかです」と語った。
そして次のように続けた。「実行しようとしている措置は、次の2点です。それは、(1) ロイヤルアスコット開催の新設G1競走をクライマックスとする欧州の平地シーズン前半に、一定数の3歳限定重賞競走を導入すること、(2) トップレベルのスプリンターを欧州で出走させるために、より多くの機会とインセンティブを与え、短距離競走の競馬番組全体をよりバランスの取れたものにすること、です」。
「これには、英国チャンピオンズデーの英チャンピオンズスプリントSをG1に、愛チャンピオンズウィークエンドのフライングファイブSをG2に引き上げるなど、いくつかのレースの昇格が含まれています」。
「大胆な策であることは認めますが、これが欧州の競馬と生産に大きな利益を与えることを確信しています」。
「ここ10年、ロイヤルアスコット開催の短距離G1競走2レースにおける北半球の3歳馬の成績は素晴らしいものです。エクイアーノ(Equiano)がキングズスタンドSを、キングスゲートネイティヴ(Kingsgate Native)とアートコノサー(Art Connoisseur)がダイヤモンドジュビリーSを3歳時に制しました」。
それに対して、ゼブディー(Zebedee)、ダークエンジェル(Dark Angel)、ホーリーローマンエンペラー(Holy Roman Emperor)のようなトップクラスの2歳馬はすべて2歳シーズン終了後に種牡馬入りしたと、BHA(英国競馬統轄機構)の競馬番組担当理事であるルース・クイン(Ruth Quinn)氏は指摘した。
そして次のように付け加えた。「重賞勝馬が2歳シーズン終了後に種牡馬入りするのを多く目にしますが、これは3歳シーズンにその馬の強さを発揮できる競馬番組の不在が影響しているのです。このような結果になるのは競馬にとって利益をもたらすやり方ではないと考えました」。
6ハロン(約1200m)の2レースのG1昇格に加え、リステッド競走(準重賞)であるパヴィリオンSのG3昇格で、アスコット競馬場は明らかに恩恵を受ける。同競馬場のCEOチャールズ・バーネット(Charles Barnett)氏は3歳限定G1の新設がアスコット競馬場の国際的な魅力を損なう恐れはないと述べた。
そして、「新設競走への出走頭数を最大限にするために、ダイヤモンドジュビリーSには3歳馬が出走できないようにします。しかし、南半球の3歳馬は4歳馬と見なされるので、同レースの海外へのアピールに大きな悪影響を及ぼすことはないでしょう。それに、私たちが香港、日本、米国から勧誘しようとするスプリンターはいつも古馬です」と語った。
バーネット氏は、除外するレースにバッキンガムパレスSを選んだ理由として、レース自体の歴史が比較的浅く、また、アスコット競馬場が他に多くの7ハロン(約1400m)のハンデ戦を施行していることを挙げた。
ロイヤルアスコット開催から馬券売上げの良いハンデ戦が除外されることについて、ラドブロークス社(Ladbrokes)のスポークスマンであるデヴィッド・ウィリアムズ(David Williams)氏は次のように語った。「最近は賭事客の間で、夏のスプリント競走がG1からハンデ戦まで人気を博しています。近年の国際的なスプリンターの成功が水準を引き上げたのは良いことに違いありませんが、賭事産業にとって2015年の競馬番組補強の効果はその売上げに見られることになるでしょう」。
2015年からのヨーロッパ短距離競走の変更 | |||||
開催月 | 競馬場 | レース名 | 距離 | これまでの格付 | 今後の格付 |
4月 | シャンティイ | シジー賞 | 1200m | リステッド | → G3 |
4月 | アスコット | パヴィリオンS | 約1200m | リステッド | → G3 |
5月 | メゾンラフィット | テクサニタ賞 | 1100m | リステッド | → G3 |
5月 | カラ | グリーンランズS | 約1200m | G3 | → G2 |
5月 | ヘイドック | サンディレーンS | 約1200m | リステッド | → G2 |
6月 | ネース | ラッケンS | 約1200m | リステッド | → G3 |
6月 | アスコット (ロイヤルアスコット開催) |
未定(新設競走) | 約1200m | → G1 | |
7月 | カラ | サファイアS | 約1000m | G3 | → G2 |
8月 | バーデンバーデン | ゴールデネパイチェ | 1200m | G3 | → G2 |
9月 | カラ | フライングファイブS | 約1000m | G3 | → G2 |
10月 | アスコット | 英チャンピオンズスプリントS | 約1200m | G2 | → G1 |
By Scott Burton
[Racing Post 2014年8月14日「Europe bids to fight back with sprint overhaul」]