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2015年10月20日  - No.10 - 7

優良種牡馬の重要な評価基準となる2歳シーズン(アメリカ)【生産】


 1800年代後半から、米国競馬界において“2歳シーズン”はしばしば議論の対象となってきた。偉大なチャンピオン馬の多くが2歳シーズンから活躍し、その後の栄光につながっていく。しかし、未熟な肢体に過大なストレスを受ける2歳シーズンの“弊害”は、常に議論されている。

 2歳シーズンの成績は、将来有望な種牡馬になるかを判断する上で、重要な評価基準として正しいと言えるのだろうか。それとも、それに伴うダメージが大きすぎる無意味なテストなのだろうか?

 研究によれば、若いサラブレッドの骨の強化には、必要レベルの運動誘導性ストレスが要求されることが明らかにされている。しかし、その“必要レベル”が問題である。競走距離を走り切るための確固たる基礎を築き、スピード力をつけるための方法ではあるが、一流調教師でさえも、若馬を使いすぎたり、競走中の不運に遭わせたりすることがある。

 20世紀後半の偉大な種牡馬2頭、すなわちヘイルトゥリーズン(Hail to Reason)とレイズアネイティヴ(Raise a Native)は代表的な例である。いずれも最優秀2歳牡馬となったが、2歳シーズン中に故障を発症し引退した。ヘイルトゥリーズンは18戦9勝の成績を挙げた後、調教中に種子骨粉砕骨折を発症した。“18戦は走らせすぎだ”と言う者もいるだろうが、競馬殿堂入りしたハーシュ・ジェイコブス(Hirsch Jacobs)調教師は、“ヘイルトゥリーズンは健康だったが、何かを踏みつけた”と主張した。

 レイズアネイティヴの場合は、少し異なる。4戦4勝後、8月の5戦目に向けた調教において腱断裂を発症し、同世代のほとんどが競走生活を始める前に引退した。競馬殿堂入りしたバーリー・パーク(Burley Parke)調教師も、レイズアネイティヴに不調の兆候はなかったと主張した。

 2頭は傑出した優良種牡馬であることが証明された。レイズアネイティヴは、秀逸性と早熟性を備える産駒を出し、ヘイルトゥリーズンは丈夫で優れた産駒を多数出した。少なくともヘイルトゥリーズンにとって、故障は虚弱体質の証拠ではなかった。

 ブリーダーズカップ創設時の1984年から現在に至るまで、2歳と3歳の両シーズンで最優秀牡馬に選出されたのは、ルッキンアットラッキー(Lookin At Lucky)1頭のみである。そして、アメリカンファラオ(American Pharoah)が間違いなく2頭目となるだろう。いずれもBCジュヴェナイル(G1)は制していない。また、最優秀2歳牡馬に選出されたチーフズクラウン(Chief’s Crown)、フォーティナイナー(Forty Niner)、イージーゴア(Easy Goer)、ストリートセンス(Street Sense)、アンクルモー(Uncle Mo)、シェアードビリーフ(Shared Belief)も、3歳シーズンに優秀な成績を残した。同様に、最優秀3歳牡馬の多くは、2歳シーズンでも最上位に近い成績を残している。

 同時期に、7頭の最優秀2歳牡馬が故障し、3歳シーズンの前もしくはその前半に引退した。それは、デヒア(Dehere)、マリアズモン(Maria’s Mon)、ボストンハーバー(Boston Harbor 父は最優秀2歳牡馬カポーティ)、アニーズ(Anees)、ヴィンディケーション(Vindication)、スティーヴィーワンダーボーイ(Stevie Wonderboy)、ウォーパス(War Pass)である。驚くべきことに、その多くが種牡馬として成功し、全く駄目だったのはスティーヴィーワンダーボーイのみであった。アニーズとウォーパスは2〜3世代の産駒しか出さなかったが、十分な種牡馬成績を残し、その早世が惜しまれた。

 一般論として、最優秀2歳牡馬に輝くことは大抵の場合、種牡馬としての成功への信頼を高める。レースの緊張感に押しつぶされることは、種牡馬としての成功を著しく阻害することではなさそうだ。

 しかし、丈夫な馬よりも壊れやすい馬を使う方が良いと言っているのではない。馬が早熟である場合、それは遺伝的に何か優れていることを示している可能性が高い。また、ヘイルトゥリーズンの例からも、私たちは“故障”が必ずしも脆弱さや不健康を示すものではないことを知っている。

 タピット(Tapit)が首位であった2014年北米リーディングサイアーランキングの上位25位までを見てみよう。2歳シーズンに未出走だったのは次の5頭だけであった。キャンディライド(Candy Ride)、カーリン(Curlin)、ティズナウ(Tiznow)、スマートストライク(Smart Strike)、バーナーディニ(Bernardini)。着外だったのはスパイツタウン(Speightstown)とストーミーアトランティック(Stormy Atlantic)の2頭、3着だったのはメダグリアドロ(Medaglia d’Oro)であった。すなわち、2歳シーズンで未勝利だったのは、上位25頭のうち8頭(32%)で、勝馬は17頭(68%)であった。

 カーリン、ティズナウ、バーナーディニ、メダグリアドロは、大型馬で晩成型であった。一方、スマートストライク、スパイツタウン、ストーミーアトランティックは才能が開花しなかったというよりも故障で戦線離脱となり、優秀な2歳産駒を送り出す種牡馬となった。将来の種牡馬としてどのような特徴を産駒に継承するかを読み解く上で、2歳シーズンに成績が振るわなかった理由を把握することは重要である。

 2014年リーディングサイアー上位25位内のうち10頭が2歳シーズンに重賞を制した。それは、G1馬のストリートセンス、ジャイアンツコーズウェイ(Giant's Causeway)、シティジップ(City Zip)、レモンドロップキッド(Lemon Drop Kid)、アフリートアレックス(Afleet Alex)、スカイメサ(Sky Mesa)、G2馬のモアザンレディ(More Than Ready)、G3馬のタピット(Tapit)、ハーランズホリデー(Harlan’s Holiday)、バーンスタイン(Bernstein)である。また、ハードスパン(Hard Spun)はステークス勝馬であり、ストリートクライとワイルドキャットヘア(Wildcat Heir)は重賞2着馬であった。キトゥンズジョイ(Kitten's Joy)、ゴーストザッパー(Ghostzapper)、マリブムーン(Malibu Moon)、オフリーワイルド(Offlee Wild)はその他の競走の勝馬であった。

 以上のように、2歳シーズンでの優れた成績は、リーディングサイアーの共通ファクターであり、早期の故障は、遺伝的に欠点があるということではない。

By Anne Peters

[bloodhorse.com 2015年9月11日「The Importance of Racing at 2」]


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