ニューヨーク州競馬協会、財務および顧客サービスが好調(アメリカ)【開催・運営】
NYRA(ニューヨーク州競馬協会)の理事長兼CEOクリストファー・ケイ(Christopher Kay)氏の契約延長が発表された。同日、ケイ氏はNYRA理事会に対して報告書を提出し、2013年7月の就任以来達成した財務面および顧客サービス面での成功を強調した。
今年のサラトガ開催は、パリミューチュエル賭事売上げおよび入場者数が、それぞれ前年比13.2%と9.7%の増加を記録した。ケイ氏はこの増加について、顧客サービスの改善(新しい指定席の予約方法、接待エリアのアップグレード)や、競馬の魅力向上(ビッグレース開催日の強化)など様々な要因を挙げた。
ケイ氏は、夏の素晴らしい天候とアメリカンファラオ(American Pharoah)のトラヴァースS(G1)出走も、この増加に寄与したと語った。またサラトガ競馬場では今年、芝競走は10レース(昨年は30レース)しか施行されず、平均出走頭数は0.38%増加した。
ベルモントパーク競馬場の売上げも昨年を上回っている。10月18日までの開催28日間で前年比5%増を記録している。
競馬運営からの純収入は1億3,370万ドル(約160億4,400万円)となり、予算よりも400万ドル(約4億8,000万円)上回るなど、現時点までの好調な業績は、ケイ氏に自信を持たせている。同氏は、NYRAがアケダクト競馬場内のリゾートワールドカジノニューヨークシティのスロットマシン収入に頼らずに、再び利益を出せると考えている。同氏は2015年の利益について、昨年を40万ドル(約4,800万円)上回る210万ドル(約2億5,200万円)と見積もっている。
また、NYRAのCXO(最高ユーザー体験責任者)リン・ラロッカ(Lynn LaRocca)氏が発表した、サラトガ競馬場の顧客6,500人(回答率37%)を対象とした調査の結果も同様に後押しとなった。回答者の49%は60歳以上、2%は18歳〜25歳、12%は26歳〜44歳であった。
回答者の90%はサラトガ開催中に馬券を購入し、69%は毎日8レース以上の馬券を購入している。また、33%は1レースあたりの平均馬券購入額が20〜50ドル(約2,400〜6,000円)であると答えた。
ラロッカ氏は次のように語った。「事業の成長の可能性を測定する基準“ネットプロモータースコア(顧客満足度調査)”において、NYRAは−100点〜+100点中、+78点を獲得しました。82%の回答者がサラトガ競馬場での体験を10点中、9あるいは10点と評価しています」。
ケイ氏の契約は10月に終了したが、当初、NYRAがニューヨーク州の管理下に置かれる期間も10月までとされていた。2012年秋、アンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)州知事はNYRA理事会と合意し、3年を期限としてNYRAを管理下に置いていた。しかし、クオモ州知事はこの春、NYRAを州管理下に置く期間を1年延長すると発表した。
ケイ氏との契約は現在と同じ条件で2016年12月まで延長された。その給料は30万ドル(約3,600万円)であり、さらに25万ドル(約3,000万円)のボーナス受給資格がある(2014年と2015年は受給)。
オーナーブリーダーのレン・リッジオ(Len Riggio)氏が率いる競馬委員会は、2016年の競馬開催日程を承認した。この開催日程はニューヨーク州ゲーミング委員会(New York State Gaming Commission:NYSGC)にはまだ承認されていないが、ニューヨークサラブレッド生産者協会(New York Thoroughbred Breeders)とニューヨークサラブレッドホースメン協会(New York Thoroughbred Horsemen’s Association)の支持を得ている。また、アケダクト競馬場の冬場の開催日が削減されると見込まれている。
リッジオ会長によれば、競馬委員会は、NYRAが薬物改革においてリーダーとなるべきだと考えている。それには、北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International: RCI)が定めた模範ルールの支持や、薬物使用ルール違反に対処する権限の拡大が含まれる。「競馬委員会は、薬物ルールを作成し実施に移すNYSGCと“見解の一致”を模索するでしょう」と、同会長は語った。
馬安全委員会のマーク・ホリデー(Marc Holliday)委員長は、「グレイソン-ジョッキークラブ(Grayson-Jockey Club’s)が実施する抗出血薬フロセミド(商品名サリックス、別名ラシックス)の効果についての研究に、NYRAは1万5,000ドル(約180万円)を補助します」と語った。
NYRAの施設担当理事であるグレン・コザック(Glen Kozak)氏は理事会において、様々な設備改良の進捗状況について最新情報を発表した。その中には、サラトガ競馬場とベルモント競馬場の厩舎地区における寄宿舎の改築と建設、ベルモント競馬場の馬房改善が含まれている。
当初の再編計画の下で、NYRAは再び民営化されるだろう。クオモ州知事の任期が延長され、NYRA理事会は来年4月までに再民営化計画を提出することを求められている。ケイ氏は任期延長が発表される前に、この計画案はほぼ最終段階に入っていると述べていた。そして、この計画案の大幅な変更は想定しておらず、1年後の再民営化に向けて、2016年4月に州知事に提出する予定であると語った。
By Teresa Genaro
(1ドル=約120円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2013年No.29「NYRAが新CEOを任命、民営化は依然として重要課題(アメリカ)」
[bloodhorse.com 2015年10月21日「NYRA Touts Finances, Customer Service 」]