公認賭事パートナー制度導入が競走のスポンサー契約に影響(イギリス)【開催・運営】
誰もが待ち望む障害競走チェルトナムゴールドカップ(G1)のスポンサーがいなくなった。“賦課金支払いに好意的なブックメーカーとしか取引しない”とする最近の競馬界の公約の犠牲となったのである。
ベットフェア社(Betfair)、ベット365社(Bet 365)、32レッド社(32Red)などが、公認賭事パートナー(authorised betting partner: ABP)のステータスを獲得した。このステータスは、10月にBHA(英国競馬統轄機構)、ホースメングループ(Horsemen’s Group)、競馬場協会(Racecourse Association: RCA)が発表した計画の下、公平で持続可能な資金関係を競馬界と築いているブックメーカーに与えられる。しかし、ベットフレッド社(Betfred)はABPのステータスを獲得せず、ゴールドカップのスポンサー契約を継続しなかった。
この決断は、ベットフレッド社の共同創立者フレッド・ダン(Fred Done)氏が単独で下したとされる。同社は、賦課金が課されていない海外賭事事業からの資金提供を約束させる競馬界の新たな要求を理由に、スポンサー契約の更新を辞退した。
ベットフレッド社は、トート社(Tote)買収後にチェルトナムゴールドカップのスポンサー契約を引き継いでいた。同社の消息筋は、「弊社はスポンサー契約を続行できないことにがっかりしています。これで、ヘイドックスプリントカップ(G1)のスポンサー契約も終了することになります」と語った。
チェルトナム競馬場もヘイドック競馬場も、ジョッキークラブ競馬場社(Jockey Club Racecourses: JCR)に所有されている。同社はアリーナレーシング社(Arena Racing Company:ARC)とともに、ブックメーカーがABPのステータスを獲得しない限り、レーススポンサーとなることを禁ずる措置を支持している。
ABP制度が正式に導入されるのは1月だが、JCRとARCはこれに基づくパートナーシップが締結されるまで、(海外賭事に係る)賦課金を支払わない賭事業者と新たな商業契約を交わさないことで合意した。すでに締結した契約については履行される。
ABP計画の発表前に、ベットフレッド社とJCRは契約条件に合意していたと考えられる。しかし、ベットフレッド社は“ABPのステータスを獲得しなければ、スポンサー契約を中止できる”とする契約条項を受け入れないだろう。
JCRとベットフレッド社の間で締結された他の全ての契約は2018年まで続行するので、影響を受けるのはまだ先になるだろう。
JCRのポール・フィッシャー(Paul Fisher)社長は11月22日、ベットフレッド社のスポンサー契約における多大な貢献を認め、次のように語った。「ベットフレッド社がこの2レースを支援してくださったことに感謝したいと思います。その過程において、私たちはベットフレッド社のチームと楽しく取組んできました。すでにトートプール社などと商業関係を結んでいる分野においては、ベットフレッド社との関係を継続していきたいと思います」。
「ABP計画の支持者として、現在のパートナー契約にある程度影響があるかもしれないと認識していました。しかし、競馬の将来のために求められる持続可能な財源を確保すべく、英国競馬界が必要な手段を講じることは不可欠です。これは英国競馬界で働く人々、そして日常的に英国競馬を重要な商品としている賭事産業にとっても利益となります」。
11月22日のベットフレッド社の発表の前に、ABP計画が機能した最初の事例が見られた。ベットフェア社が、サンダウン競馬場のティングルクリークチェイス(G1)とロンドンナショナル(L)のスポンサーになることが発表されたのだ。
クイーンマザーチャンピオンチェイス(G1)のスポンサーであるベットウェイ社(Betway)もティングルクリークチェイスのスポンサー契約を狙っていたが、ABPのステータス獲得を約束しなかったことで、スポンサー契約は認められなかった。
その上、ベットフェア社とJCRは、競馬開催における命名権、ブランディング権、販売権に関する2年間のパートナー契約を初めて締結した。
ABPのコンセプトの発起人の一人であるジョッキークラブのCEOサイモン・バザルゲット(Simon Bazalgette)氏は、次のように語った。「ベットフェア社は英国競馬の主要な支援者です。ジョッキークラブは、ベットフェア社が最初にABPのステータスを獲得し、我々との関係を拡大したことに満足しています。ABP制度が導入されてこれほど早く契約が締結されたことは、この計画をさらに後押しするでしょう」。
「ベットフェア社は、英国競馬界とのこの長期的な商業契約を通じて、正当な見返りや結果的に生じる利益、さらにはスポンサー契約などのチャンスが得られる競馬の重要性について再認識しています」。
[訳注:今後4年間、通信会社ティミコテクノロジーグループ(Timico Technology Group)がチェルトナムゴールドカップのスポンサーを務めることになった。同競走の総賞金は2万5,000ポンド(約463万円)増額され過去最高の57万5,000ポンド(約1億638万円)となる]。
ABPのステータスを獲得していないブックメーカーがスポンサーを務めるレース | |||
レース名 | 競馬場 | スポンサー | |
2月 | シリーアイルズノヴィスチェイス(G1) | サンダウン | ベットフレッド社 |
3月 | シュプリームノヴィスハードル(G1) | チェルトナム | スカイベット社 |
チャンピオンハードル(G1) | スタンジェームズ社 | ||
クイーンマザーチャンピオンチェイス(G1) | ベットウェイ社 | ||
コーラルカップ(G3) | コーラル社 | ||
ワールドハードル(G1) | ラドブロークス社 | ||
◎リンカーンH | ドンカスター | ベットウェイ社 | |
4月 | アニバーサリー4歳ジュヴェナイルハードル(G1) | エイントリー | ベットフレッド社 |
ベットフレッドボウル(G1) | |||
マイルドメイノヴィスチェイス(G1) | |||
メリングチェイス(G1) | |||
7月 | ◎エクリプスS(G1) | サンダウン | コーラル社 |
9月 | ◎セントレジャーS(G1) | ドンカスター | ラドブロークス社 |
◎ケンブリッジシャーH | ニューマーケット | ベットフレッド社 | |
10月 | ◎ロシア皇太子H | ニューマーケット | ベットフレッド社 |
11月 | パディパワーゴールドカップ(G3) | チェルトナム | パディパワー社 |
ファイティングフィフスハードル(G1) | ニューキャッスル | スタンジェームズ社 | |
12月 | クリスマスハードル(G1) | ケンプトン | ウィリアムヒル社 |
キングジョージ6世チェイス(G1) | |||
ウェルシュグランドナショナル(G3) | チェプストウ | コーラル社 | |
ファイナルジュヴェナイルハードル(G1) |
◎:平地競走
高額賞金拠出スポンサーランキング | ||
スポンサー | レース数 | 賞金総額 |
ベットフレッド社 | 228 | £6,495,655(12億 170万円) |
欧州生産者基金(European Breeders’ Fund:EBF) | 616 | £6,053,280(11億1,986万円) |
32レッド社 | 797 | £4,929,517(9億1,196万円) |
Qipco社 | 12 | £4,684,625(8億6,666万円) |
トートプール社 | 442 | £4,582,915(8億4,784万円) |
ラドブロークス社 | 349 | £3,362,621(6億2,208万円) |
コーラル社 | 271 | £3,345,818(6億1,898万円) |
インヴェステック社 | 24 | £3,043,460(5億6,304万円) |
ベット365社 | 100 | £2,464,703(4億5,597万円) |
ベットフェア社 | 52 | £2,450,026(4億5,325万円) |
By Jon Lees
(1ポンド=約185円)
[Racing Post 2015年11月23日「Gold Cup without sponsor as Betfred pull out of deal」]