海外競馬ニュース 軽種馬登録ニュース 海外競馬情報 統計データベース 海外競馬場・日程 世界の競馬および生産統計 海外競走登録 申請書類
血統書サービス 引退名馬
twitter FB
TOPページ > 海外競馬情報 > 英国産ステイヤーを保護するキャンペーンが発足(イギリス)【生産】
海外競馬情報
2015年05月20日  - No.5 - 3

英国産ステイヤーを保護するキャンペーンが発足(イギリス)【生産】


 4月13日、英国のサラブレッド生産者協会(Thoroughbred Breeders' Association: TBA)は、英国産ステイヤーの減少を防止するため、競馬産業に協力を求める大規模キャンペーンを発足させた。

 TBAは、ロンドンでの記者会見において、英国産ステイヤーと長距離レースに関する調査結果を発表した。その際、英国産ステイヤーの将来と英国競馬の多様性が、危機に晒されていることを示す統計も併せて公表した。TBAは、BHA(英国競馬統轄機構)や競馬場などの利害関係者に対し、重要な競馬の伝統を守るために見直しを実施し、一層努力するよう呼びかけた。

 障害競走用の種牡馬の大半が、かつての一流中長距離馬であることから、このキャンペーンは障害と平地の双方の関係者に対して訴えるものである。最近では、世界的に有名な障害レースであるグランドナショナルが、6億人のテレビ視聴者をひきつけ、また、平地シーズンも開幕した。このように競馬が盛り上がりを見せる中、このキャンペーンの発足は、ステイヤーを失うことが競馬界全体に打撃を与え、競馬の将来に影響を及ぼすことを関係者に想起させることになった。

 報告書には、「英国で実績をもつステイヤー種牡馬数は減少傾向にあり、その結果、すでに障害競走馬の生産に影響が及んでいる」と、記されている。

 クライヴ・ウェブ-カーター・ブラッドストックサービス社(Clive Webb-Carter Bloodstock Services)が実施したこの調査では、「英国産ステイヤーは危機に晒されているのみならず、ステイヤーとして活躍する馬は、英国での出走機会が限定されているために輸出されている」と強調している。2004〜2013年の英国長距離レース勝馬の53%は、アイルランド産馬であった。また、ステイヤーの南半球への移籍は加速し、2011年以降、豪州の調教師の管理下で、50頭以上の欧州産馬がステークス競走で優勝している。

 主要長距離レースは人気があり、競馬場と賭事産業に収入をもたらすとともに、英国競馬の財産であると見られている。報告書には、「ステイヤーを失うことにより、長距離レースに重要な安定性とスタミナをもつ馬の遺伝子が減少し、結果として長距離レースへの出走頭数は減少することになる」と記されている。また、「レーティング115以上のG1馬クラスの優良ステイヤーの割合は、過去5年間で約30%減少した」と強調している。

 報告書の全体に関しては、以下を参照されたい。

http://www.thetba.co.uk/wp-content/uploads/2015/04/A-TBA-Study-into-the-Future-of-British-Stayers-and-Staying-Races.pdf

 TBAのリチャード・ランカスター(Richard Lancaster)会長は、この調査を実施した理由について、次のように語った。「この調査のきっかけは、ヨーロッパ・パターン競走委員会がクイーンズヴァーズをG3からリステッド競走(準重賞)に降格させたこと、その後、バーレーントロフィー(G3)を“危機リスト”に加えたことです。いずれも、長距離重賞レースの存続が脅かされている状況を示しており、結果としてステイヤーは減少傾向にあります」。

 「TBAは、この問題が大きくなり、長距離重賞レースがさらに降格となる前に、ステイヤーの生産・競走に関する十分な分析・解明を行い、早急に行動を起こしたいと考えています」。

TBAは、ステイヤーの重要性を訴えるため、調査とキャンペーンに乗り出した。そして、BHAや他団体とともに、ステイヤーの出走機会を増加させる他、問題点の是正に取り組むと述べている。TBAは、この状況を改善するための提案やアイデアを、次のようにまとめている。

− 2000mや2400m以上のレースで勝った種牡馬の産駒のために、ロイヤルアスコット開催のチェスハムS(2歳限定・1400m)と同条件の未勝利レースを数レース導入する。(訳注:チェスハムSは、2000m以上のレースで優勝した種牡馬の産駒にのみ出走資格が与えられる)。

− 3歳長距離レースの検討。3歳牝馬に限定した長距離ハンデ戦は存在せず、古牝馬に限定した長距離ハンデ戦(クラス4)は2レースのみである。TBAは、牡馬と牝馬双方のために、数レースの未勝利長距離戦の新設を勧告する。

− 3歳限定のハンデ戦(クラス2)は3レースしかないため、より多くの3歳限定のハンデ戦(クラス2・3)を導入する。ノースアンバーランドプレート(3,236m 3歳以上)には、過去10年間、3歳馬の出走はない。

− 重賞プログラムの再検討。2400m以上の牝馬限定競走は、3レース(G2・G3・リステッド)のみである。TBAは、牝馬にさらに出走機会を与えることを検討する。

− ステイヤーを英国で出走させ、その後の繁殖生活を送らせるためには、3歳馬と古馬双方を対象として賞金額と出走機会を増加させる必要がある。

By Blood-Horse Staff

[bloodhorse.com 2015年4月13日「Campaign Launched to Save GB Stayers, Races」]


上に戻る