競走馬は速くなっているという研究(イギリス)【その他】
エクセター大学は、“競走馬は速くなっている”という新たな研究結果を発表した。これは、“スピードは頭打ちになった”とする科学者と競馬産業における一般的見解と異なるものである。
パトリック・シャーマン(Patrick Sharman)氏とアラステア・J・ウィルソン(Alastair J. Wilson)氏の論文『競走馬は速くなっている(Racehorses are getting faster)』は、英国王立協会の専門誌バイオロジーレターズ(Biology Letters)に掲載された。この論文には、「競走馬のスピードは向上していないと考えられており、また、これまでの研究でも“競走馬の能力は限界に達しているようである”と結論付けてられてきた」と記されている。
これらの研究は、少数の一流中長距離競走の勝ち時計による分析であり、馬場状態などの要素を考慮していなかったのである。
シャーマン氏とウィルソン氏は、1800年代半ばから現在までの一流競走馬の成績、および1997年以降の一流競走馬と競走馬全体のデータを詳細に分析した。
7万388頭が出走した61万6,084レースの全体データは、1850年以降、レースにおける勝ち時計が大幅に短縮され、とりわけ短距離競走における高速化が著しいことを示している。
1997年〜2012年のデータは、競走馬のパフォーマンスは向上し続けており、これは特に一流短距離馬のスピード向上に依存していることを明示している。
同時期の中長距離競走のスピード向上がそれほどではないことは、この距離におけるパフォーマンスが限界に達していること、あるいは生産者が持久力をもつ中長距離馬よりも、スピードをもつ短距離馬の生産を優先するようになったことを示しているのかもしれない。
シャーマン氏は、次のように語った。「過去30年間、“競走馬のスピードは停滞しているようである”とする一般的な見解がありました。われわれの研究は、以前より広範囲のデータを用いることにより、それが事実ではなく、競走馬は速くなっていることを示しています」。
「興味深いことに、昔も今も、スピードは短距離競走において大幅に向上しています。このスピードの向上に遺伝的な背景があるか否かの究明が、現在の課題です」。
研究成績は、スピードの向上は直線的ではないことを示している。急速なスピードの向上は、1900年代初頭と1975年から1990年代初頭に見られた。前者のスピードの向上には、前傾姿勢で鐙を短くする騎乗スタイルの変化が寄与しているものと考えられる。
一方、後者のスピードの向上は、鐙をさらに短くしたレスター・ピゴット(Lester Pigott)騎手の騎乗方法を、他の騎手が真似た結果かもしれない。しかし、この時期にはサラブレッド生産の商業化が進んでおり、このスピード向上は遺伝子の改良による可能性もある。
By Andrew Scutts
[Racing Post 2015年6月24日「Racehorses are getting faster」]