種付料引下げは歓迎だが過剰生産を助長してはならない(イギリス・アイルランド)【生産】
この1週間に開催された低価格の1歳セールで、またもや247頭の上場馬に買い手がつかなかった。今年、英国とアイルランドで主取(未売却)となった1歳馬は、968頭に上る。
ゴフス社UKオータム1歳セール(Goffs UK Autumn Yearling Sale 10月31日)では、上場馬133頭のうち87頭が購買され売却率は65%となり、3頭に1頭が主取となった。また、ゴフス社オープン1歳セール(Goffs Open Yearling Sale)では、上場馬191頭のうち148頭が購買され、売却率は77%となった。さらに、ゴアズブリッジ社10月セール(10月28日)とタタソールズ・アイルランド社アスコット11月セール(11月3日)でも売却頭数は伸び悩み、12頭が主取となった。主取となった1歳馬には、セリ場の外で取引が成立する馬もいるが、それ以外の馬はブリーズアップセールで再上場されるだろう。
多くの売り手はこの厳しい状況に立ち向かわなければならないだろう。自ら馬主となって主取となった馬を出走させるか、調教師と馬の賃貸契約を交わすかである。
多くのピンフッカーは大打撃を受けるだろう。それゆえ、来秋に再上場するために当歳馬を購買するピンフッカーを当てにして、この冬のセリに多数の当歳馬が上場されることは、理想的な状況から程遠い。
ウェザビーズ社(Weatherbys)が繁殖牝馬報告書(Return of Mares)で発表した数字によれば、2016年のアイルランドの生産頭数は前年比7%増の8,792頭であり、また、英国の生産頭数は前年比3%増の4,597頭である。
タタソールズ社とゴフス社は、その看板とも言える当歳セールの上場頭数を昨年と同水準に保った。しかし、ゴフス社とタタソールズ・アイルランド社が今後開催するセリで、過剰生産の影響が見られても驚くには当たらないだろう。
当歳セールが奇跡的に予想外の結果を出したり、需要に大幅な回復が見られないかぎり、来年の生産がこれまでどおりに行われるのは難しいだろう。実際に生産者は、2015年の一連の当歳セールでの低い売却率を目の当たりにして、牝馬の交配をこれまでより制限しているようである。
このような事情により、最近発表された多くの種牡馬の種付料は大変興味深いものになっている。多くの種付料はかなり抑えられており、同額維持か引き下げられている。それは種牡馬の成績が不振であるという理由だけではない。
当然のことながら、種付料の引下げは生産者に歓迎されるだろう。しかし、見込みのなさそうな繁殖牝馬を持つ生産者を"もう一度種付してみよう"という気にさせる危険もある。
By Martin Stevens
[Racing Post 2016年11月5日「Stud fee cuts are welcome but must not encourage more overproduction」]