ドバイワールドカップデーのG1優勝馬の血統背景(国際)【生産】
アルクオーツスプリント(G1 1000m 芝)
優勝馬:バッファリング(Buffering)
生産者:レーストゥリー牧場(Racetree クイーンズランド州)
豪州のバッファリング(8歳・せん馬)は、アルクオーツスプリントを3/4馬身の差をつけて制し、G1・7勝目を挙げた。
バッファリングの母アクションアニー(Action Annie 父アナバー)は勝馬であり、ドイツのリステッド3着内馬ドントゴークレイジー(Don't Go Crazy)と米国のステークス3着内馬インスタントストライク(Instant Strike)の半妹である。バッファリングはアクションアニーの4頭の仔のうちの1頭である。
バッファリングの半妹と半姉はいずれも豪州の勝馬であるスイートアニー(Suite Annie)とヒュシャナ(Hussyanna)であり、半兄キャニーアクション(Canny Action)は韓国の勝馬である。また、バッファリングのファミリー(牝系)は、トップレベルの競走馬エッチャー(Etcher)、インターゲイズ、(Intergaze)、マガジン(Magazine)、リラックスドジェスチャー(Relaxed Gesture)を出している。
現在8歳のバッファリングは、2009年マジックミリオン社ゴールドコースト3月1歳セール(Magic Millions Gold Coast March Yearling Sale)で、ニュージーランドを拠点とするエージェント(馬売買仲介業者)のポール・ウィレッツ(Paul Willetts)氏により2万2,000豪ドル(約187万円)で購買され、ロバート・ヒースコート(Robert Heathcote)調教師に管理された。
バッファリングの父モスマン(Mossman)はG1馬5頭を出しており、最近ではマジックミリオン社ゴールドコースト3月1歳セール(3月21日・22日)で最高価格馬を出したことで話題となった。
ドバイゴールデンシャヒーン(G1 1200m ダート)
優勝馬:ムアラブ(Muarrab)
生産者:ストラットフォードプレイススタッド(Stratford Place Stud)
ムアラブ(7歳・せん馬)はドバイゴールデンシャヒーン(G1)を制し、G1優勝を果たした15頭目のオアシスドリーム(Oasis Dream)産駒となった。
ムアラブは、オアシスドリーム(ジャドモントファームで供用)が一番最近に出したトップスプリンターである。オアシスドリームは昨年、欧州最優秀3歳短距離馬ムハーラー(Muhaarar)と、キングズスタンドS(G1)およびアベイドロンシャン賞(G1)を制したゴールドリーム(Goldream)を出したことで、素晴らしい能力を見せつけた。
ムアラブの母は2勝馬ライセンストゥスリル(Licence To Thrill 父ウルフハウンド)である。半弟にG3馬バングルインザジャングル(Bungle Inthejungle)と半兄にリステッド勝馬ウェーブバンド(Waveband)がおり、いずれもスプリンターである。また、ムアラブは2013年仏2000ギニー(G1)優勝馬スティルヴァンドーム(Style Vendome)を出したファミリー(牝系)の出身である。
ハムダン殿下(Sheikh Hamdan)が所有する同馬は、2010年タタソールズ社10月1歳セール(2010 Tattersalls October Yearling Sale)においてシャドウェル牧場(Shadwell)により28万ギニー(約4,704万円)で購買された。
ドバイターフ(G1 1800m 芝)
優勝馬:リアルスティール
生産者:ノーザンファーム
リアルスティール(4歳・牡馬)がドバイターフで優勝したことで、ディープインパクト(社台スタリオンステーションで供用)はドバイワールドカップデーで2頭目の勝馬を出した。もう1頭の勝馬は2014年ドバイシーマクラシック(G1)を制したジェンティルドンナである。
リアルスティールの全弟にはオープン競走で優勝したプロディガルサン、全兄には6勝馬ラングレーがいる。また半姉には勝馬ラッドルチェンド(父デインヒルダンサー)がいる。
これら4頭の母ラヴズオンリーミー(父ストームキャット)は、半姉に2005年欧州最優秀2歳牝馬ランプルスティルトスキン(Rumbplestiltskin 父デインヒル)、半妹にG3馬アイアムビューティフル(I Am Beautiful)がいる。ランプルスティルトスキンはG1馬タペストリー(Tapestry)とG3馬ジョンエフケネディー(John F Kennedy)の母である。
ミエスク(Miesque)のファミリー(牝系)出身であるラヴズオンリーミーは、2009年キーンランド11月繁殖セール(2009 Keeneland November Breeding Stock Sale)において吉田勝己氏により90万ドル(約9,900万円)で購買された。
ドバイシーマクラシック(G1 2410m 芝)
優勝馬:ポストポンド(Postponed)
生産者:セントオールバンズブラッドストック社(St Albans Bloodstock)
ポストポンド(4歳・牡馬)はドバイシーマクラシックを制し、G1・2勝目を挙げた。同馬は2012年タタソールズ社10月1歳セール(2012 Tattersalls October Yearling Sale)において、ジョン・ウォレン(John Warren)氏とチャーリー・ゴードン-ワトソン(Charlie Gordon-Watson)氏により36万ギニー(約6,048万円)で購買された
ポストポンドは昨年、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)を制した。同馬の母エバーリグ(Ever Rigg 父ドバイデスティネーション)は、半妹にリステッド3着内馬バイトオブザチェリー(Bite Of The Cherry)、半姉に勝馬ピエトラデュラ(Pietra Dura)がいる。
この3頭の母ビアンカネラ(Bianca Nera)はモイグレアスタッドS(G1)勝馬であり、G1・2勝馬シンプリーパーフェクト(Simply Perfect)の母ホテルジェニードットコム(Hotelgenie Dot Com)の全妹である。
ポストポンドのこの勝利により、ドバイワールドカップデーにおけるドバウィ(Dubawi)産駒の好成績が継続された。ドバウィ(14歳・ダーレー牧場で供用)はこの5年間に、ドバイワールドカップ優勝馬2頭、すなわち2012年のモンテロッソ(Monterosso)と2015年のプリンスビショップ(Prince Bishop)を出している。
ドバイワールドカップ(G1 2000m ダート)
優勝馬:カリフォルニアクローム(California Chrome)
生産者:ペリー・マーティン氏&スティーヴ・コバーン氏(Perry Martin and Steve Coburn)
カリフォルニアクローム(5歳・牡馬)は、世界一の総賞金1,000万ドル(約11億円)を誇るドバイワールドカップを制して、究極の立身出世物語を完成させた。生涯獲得賞金額は1,250万ドル(約13億7,500万円)に上り、競馬史上(日本を除く)最高賞金獲得馬となった。
カリフォルニアクロームは、ペリー・マーティン氏とスティーヴ・コバーン氏の生産である。母は勝馬ラブザチェイス(Love The Chase 父ノットフォーラブ)であり、父ラッキープルピット(Lucky Pulpit)の種付料は当時2,000ドル(約22万円)であった。
ラブザチェイスは、2008年ファシグ・ティプトン社ミッドランティック調教2歳セール(Fasig-Tipton Midlantic Two-Year-Olds in Training Sale)においてエージェントのグレッグ・ギルクリスト氏により3万ドル(約330万円)で購買された。しかしその後、マーティン氏とコバーン氏が庭先取引によりわずか8,000ドル(約88万円)で購買した。
カリフォルニアクロームを除くと、その血統でブラックタイプ勝馬を見つけるには3代母であるリステッド勝馬チェイスザドリーム(Chase The Dream)にまで遡らなければならない。チェイスザドリームはリステッド勝馬アムレット(Amourette)を出し、アムレットはブラックタイプ勝馬アレット(Alette)を出している。
カリフォルニアクロームは、ラッキープルピットが送り出した3頭のステークス勝馬の中の最高傑作である。15歳の種牡馬ラッキープルピット(カリフォルニア州のハリスファームで供用)は、ブラックタイプ勝馬ラックアラック(Luckarack)やリステッド勝馬ラウジングサーモン(Rousing Sermon)を送り出している。
テイラーメイドファーム(Taylor Made Farm ケンタッキー州)はG1・5勝馬カリフォルニアクロームの所有権の30%を昨年購買しており、同馬を現役引退後に供用する予定である。
By Chris Hill
(1豪ドル=約85円、1ユーロ=約125円、1ポンド=約160円、1ドル=約110円)
[Racing Post 2016年3月26日「The pedigrees behind the Meydan Group 1 winners」]