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海外競馬情報
2017年12月20日  - No.12 - 4

英国の調教師、馬ヘルペスウイルスの予防接種の義務化を懸念(フランス)【獣医・診療】


 英国の調教師たちは、フランスギャロ(France Galop)が導入しようとしているルールに懸念を示している。そのルールとは、フランスの全出走馬に対して馬ヘルペスウイルスの予防接種を義務付けるというものだ。

 BHA(英国競馬統轄機構)は、フランスギャロに続いてこのルールを導入するつもりはないと述べた。しかし、BHAは英国の調教師たちに対し、来年このルールが発効した後は、管理馬に適切に予防接種を受けさせていなければフランスで出走させられなくなると注意喚起した。

 今回のフランスのルール変更は、昨年シャンティイの多くの厩舎で馬ヘルペスの呼吸器症状が相次いで確認されたことがきっかけとなった。

 今年、ジャン-クロード・ルジェ(Jean-Claude Rouget)厩舎では、馬ヘルペスの神経症状により2頭が命を落とした。また、ケヴィン・ライアン(Kevin Ryan)厩舎ではこの夏、この病気の発生により一時的に厩舎を閉鎖しなければならなかった。

 全国調教師連合会(National Trainers Federation)のCEOルパート・アーノルド(Rupert Arnold)氏は、このルールは英国の調教師にとって問題となるとし、こう述べた。

 「第一に、以前比較的手軽に使えた馬ヘルペスウイルスのワクチンの供給が深刻なほど不足しています。これ以外に輸入ワクチンもありますが、過去にこの輸入ワクチンを使用してひどい思いをした調教師もいます。つまりこのままでは、ワクチンを使いたくないがためにフランスでの出走権利を失うか、ひどい思い出のあるワクチンを管理馬に接種して出走させるかの、どちらかの選択が突きつけられます」。

 BHAの馬の健康・福祉担当理事であるデイビット・サイクス(David Sykes)氏は、ルール発効後も大きな問題は生じないとの見解を示し、こう語った。

 「フランスの新ルールの下、調教師たちが行うことは、現在すでに義務付けられている馬インフルエンザの予防接種の手順と同じです。それゆえ、英国の調教師たちが適応する上で大きな問題が生じるとは思いません」。

 しかしながらBHAは、フランスに倣ってルールを導入することは、もたらされる利益よりも掛かる費用の方が大きいと考えている。

 サイクス氏はこう続けた。「現在のところ、馬ヘルペスウイルスは予防接種では根絶できません。大半の馬は生後6ヵ月になるまでにこのウイルスに曝されているため、実のところほとんどの競走馬にはこのウイルスが潜伏しています。予防接種は妊娠馬の流産を防ぐなど、いくつかの状況において効果があります。しかし、競走馬に対しては短期間しか効果を発揮せず、馬ヘルペスの神経症状は防げません。結局のところ、とりわけ馬主が負担するだろう多額のコストの点から見ても、予防接種の義務化についてはもっと議論しなければなりません」。

 ルール変更の原則については、フランスギャロの取締役会において満場一致で可決された。生産者および調教師の団体がこの変更を強く要求していた。

 農業大臣の承認を得られれば、新ルールは来年1月1日に発効する。フランスの全出走馬は、最初の2回の予防接種を受けていなければならない。そしてこのプロセスを可能とするための適切な時期として、ルールは4月1日から実施される予定である。

 フランスギャロではポール-マリー・ガド(Paul-Marie Gadot)博士がこの件に関するサイクス氏のカウンターパートである。同博士はBHAおよびホースレーシングアイルランド(Horse Racing Ireland)と連携して取り組んでいる。また昨年末には、ニューマーケットで開催されたサラブレッド仲介業者協会(Federation of Bloodstock Agents)の会合でこのテーマについて講演した。

 ガド博士はこう語った。「獣医師のほぼ全員が予防接種に賛成していると思います。結局は費用の問題です。しかし2016年にシャンティイのいくつかの厩舎が7月ないし8月まで適切に馬を出走させられなかったという事態を考えてみれば、その経済的打撃の方が甚大でしょう。フランス調教師連合(French Trainers Association)の会長であるクリケット・ヘッド-マアレク(Criquette Head-Maarek)調教師の厩舎でも、馬ヘルペスウイルスは発生しました。彼女も"予防接種を義務付けなければならない"と主張し始めた調教師の1人です。確かに新ルールには費用が掛かることは承知していますが、何も手を打たないことによる代償の方がもっと大きいはずです」。

 フランスで馬ヘルペスウイルスの予防接種が繁殖馬に義務付けられるようになってから12年が経つ。この新ルールがフランスギャロによって正式に導入されれば、セリ会社のアルカナ社(Arqana)は、1歳馬・2歳調教馬・現役馬のセリにおいて、予防接種を上場の条件にすると予想されている。

By Bill Barber and Scott Burton

[Racing Post 2017年11月16日「Trainers concerned over new French equine herpes rules」]


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