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海外競馬情報
2017年04月20日  - No.4 - 5

ゴドルフィンはダービーを勝てるドバウィ産駒を出せるか(イギリス)【生産】


Q:「2012年と2014年の英ダービー(G1 約2400m)において、この"尊敬に値する"競走距離でそれぞれ5着に敗れたミックダーム(Mickdaam)とレッドガリレオ(Red Galileo)の共通点は何か?」

A:「レッドガリレオという名前は実に紛らわしいが、これらの馬はこれまで英ダービーに出走したわずか2頭のドバウィ産駒である」。

 外見と競走成績の華やかさにおいて、コロネーションカップ(G1約2400m)優勝馬ポストポンド(Postponed)ほど、種馬場とセリにおけるドバウィの価値を証明する産駒はいないだろう。また、英オークス(G1 約2400m)3着のレディオブドバイ(Lady Of Dubai)もドバウィ産駒であることを記しておかなければならない。また一方で、書類上で見る限りでは、ドバウィはスタミナを伝える能力を持つ種牡馬とはそれほど言えない、というのも事実である。しかしそれは、英ダービー馬のシーザスターズ(Sea The Stars)とゴールデンホーン(Golden Horn)、名牝ウィジャボード(Ouija Board)を送り出したケープクロス(Cape Cross)にも言える。また、ドバウィ自身が現役時代に、その才能を伸ばして英ダービー3着に健闘したことも思い出しておきたい。

 いずれにせよ、種付料25万ポンド(約3,500万円)で、出走産駒の10%が重賞勝馬であり、2016年の1歳産駒の平均価格がほぼ100万ポンド(約1億4,000万円)だった種牡馬ドバウィが、現在までにダービーでほとんど実績を残していないことはつじつまが合わない。たとえば、同じダーラムホールスタッド(Dalham Hall Stud)で供用されていた故ホーリング(Halling)は、ダービーで2着馬、3着馬、そして4着馬2頭を出している。

 言うまでもなく、ガリレオ(Galileo)およびモンジュー(Montjeu)の産駒と、エイダン・オブライエン(Aidan O'Brien)調教師を擁するバリードイルの英ダービーにおける勢いを食い止めようとしている人々にとっては、近年厳しい状況が続いている。しかし、それは敗北主義を正当化する理由にはならない。 何はさておき、近年のバリードイルのクラシック支配の主な理由の1つは、幼稚なまでの商業主義により、早熟性やスピードに優れると考えられている種牡馬に種付依頼が殺到していることである。これらの種牡馬がダービーどころかギニー競走(約1600m)でも通用する産駒を出すことは決してないだろう。この2年間のダービーで、ハーザンド(Harzand)とゴールデンホーンが示したように、このことを克服できるオーナーブリーダーが、結果として競合性が低下してきているトップレベルのレースで、勝つことができるのである。

 それ故、ガリレオ産駒が手に入らないからと言って、ダービーから手を引くべきではない。優良牝馬さえ所有していれば、世の中にはクールモアのチャンピオン馬に対抗できる産駒を授けてくれる完璧な種牡馬が明らかにいる。そして、1歳市場でドバウィ産駒を買い占めるゴドルフィンの決意から判断すれば、ドバウィは明らかにそのリストのトップに挙がっていると考えられる。

 昨秋、最も高額なドバウィ産駒12頭のうち9頭が、ゴドルフィンのジョン・ファーガソン(John Ferguson)氏によって購買された。現在ウェザビーズ社(Weatherbys)が調教馬として登録している2歳のドバウィ産駒うち、37頭がチャーリー・アップルビー(Charlie Appleby)調教師とサイード・ビン・スルール(Saeed Bin Suroor)調教師によって管理されているが、最近ではゴドルフィンの所有馬の拠点は広範囲に広がっている。

 これは、現在行われているゴドルフィンの改革の一環であり、今シーズンのゴドルフィンの保有財産の状況をもって、今後進むべき方向を示すものと捉えるにはあまりにも時期尚早だろう。最近のゴドルフィンのクラシック競走での成績が標準レベルを下回っていると見る人々は多いだろうが、結局のところ、平地競走において生産と競走で結果を出すためには、人々が考える以上の忍耐強さを必要とする。

 実際、果実を収穫しながらその木を伐採することはできない。しかし、生産事業には関係ないが、極めて不快なマームード・アル・ザルーニ(Mahmood Al Zarooni)元調教師のスキャンダル(管理馬にステロイドを使用した事件)を受けて、モハメド殿下は自らのサラブレッド事業全体に徹底的な見直しを実施することを承認したようだ。役に立たないと思われる血統、広がり過ぎた血統には大鉈が振るわれた。若馬、高齢馬を問わず数百頭が選別され、セリで新たな良血を手に入れつつ生産事業は続けられて行くだろう。

 生産事業の"合理化"は、ゴドルフィンの調教に関する新たな戦略とそう大きく異なるものとはならないだろう。今や、数ヵ国において調教師の多様化を進めたことで、ゴドルフィンの所有馬への管理責任は共有されている。

 ゴドルフィンのクラシック競走での復活は、現在の再編に係わるすべての関係者を大いに元気づけるに違いない。そして、マクフィ(Makfi)、ナイトオブサンダー(Night Of Thunder)あるいはニューベイ(New Bay)と張り合うために、ドバウィが優良3歳馬を送り出すことができれば、なおさら素晴らしいことだ。

 現在、ドバウィ牝駒ウヘイダ(Wuheida)が大きな期待を背負っている。2戦目にしてマルセルブーサック賞(G1)を制したウヘイダ(アップルビー厩舎)は、現時点で英1000ギニー(G1)においてロードデンドロン(Rhododendron 父ガリレオ)に次ぐ2番人気である。またアップルビー厩舎には、ソーベツ(Sobetsu 父ドバウィ)もいる。同馬は残念なことにドバイフィリーズマイル(G1)でロードデンドロンの5着となったが、デビュー戦での10馬身差の勝利からすれば、まだチャンスは十分にあるだろう。そしてもう1頭の可能性のあるドバウィ牝駒は、昨秋デビュー戦を勝利で飾ったシャドウェル牧場のエティサアル(Ettisaal フレディ・ヘッド厩舎)である。他にも2頭の未勝利産駒が英1000ギニーを目指している。

 ウヘイダは、リブルスデールS(G2 約2400m)優勝馬ヒバーイェブ(Hibaayeb 父シングスピール)の娘なので、英オークスの距離に対応できるだろう。その一方でドバウィは、現時点において英オークスの賭事で人気を集めている牝駒コロネット(Coronet ジョン・ゴスデン厩舎)も出している。コロネットはデンフォードスタッド(Denford Stud)の勝負服を背負い、2戦2勝を果たしている。

 英2000ギニー(G1)に出走を予定しているドバウィ産駒は、ドリームアヘッド(Dream Ahead)の半弟ビンバトゥータ(Bin Battuta ビン・スルール厩舎)1頭のみである。同馬は昨年6月にウィンザー競馬場でデビュー戦を勝利で飾ったが、ニューマーケットのジュライフェスティバルで残念な結果を出して以来出走していない(訳注:4月2日にドンカスター競馬場のハンデ戦に出走して優勝した)。

 英ダービーに出走する可能性があるドバウィ産駒は、ビンバトゥータを含む11頭である。その中には未勝利・未出走馬が6頭、そしてアップルビー厩舎の2頭の勝馬がいる。また、ステークス競走での実績があるディーバイ(D'bai)、ウォルヴァーハンプトン競馬場の未勝利戦を制したファーストネーション(First Nation 半兄はセントレジャー優勝馬マスタリー)がいる。

 ゴドルフィンの所有馬以外では、英ダービーを目指す2頭の興味深いドバウィ産駒がいる。それはデビュー戦で3着となったアガ・カーン殿下所有のデヴァマニ(Devamani アラン・ド・ロワイエ-デュプレ厩舎)と、ゴルディコヴァ(Goldikova)の半姉を母とするレッドラベル(Red Label ルカ・クマーニ厩舎)である。レッドラベルは、レスター競馬場の未勝利戦を制している。

 これらのドバウィ産駒の中には、英ダービーの賭事において目立った人気馬はいない。しかし、希望はとめどなく湧き出ている。最近では交配相手としてこれまでにないほどの優良牝馬に恵まれているドバウィが、英ダービーにおいてその遺産(レガシー)を確実にする産駒を得るのは時間の問題である。

 英ダービーを、種牡馬を作り出すためや評価するための最終的なレースとして見なさない人もいる。しかし、フランキー・デットーリ騎手との決別やアル・ザルーニ元調教師の不名誉なスキャンダルを受けて、冷静さと固い決意の下でゴドルフィンの再構築を実行しているモハメド殿下にとって、英ダービー優勝は最も喜ばしい褒賞となるだろう。

By Chris McGrath

(1ポンド=約140円)

[Racing Post 2017年3月20日「Why Godolphin and Dubawi could both do with a Derby colt」]


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