デインドリームの仔がタタソールズ社10月セールに上場予定(イギリス)【生産】
2011年凱旋門賞(G1)優勝牝馬デインドリーム(Danedream)の仔(父ドバウィ)が、タタソールズ社10月1歳セール・ブック1(Tattersalls October Yearling Sale Book 1)に上場予定である。[訳注:デインドリームは2011年ジャパンカップ(G1)でブエナビスタの6着。]
凱旋門賞(G1)の優勝牝馬の仔がセリに上場されるのは、マイタイフーン(My Typhoon 父ジャイアンツコーズウェイ 母アーバンシー)以来である。優秀な母アーバンシー(Urban Sea)は、ガリレオやブラックサムベラミー(Black Sam Bellamy)のようなG1馬をすでに送り出していたが、マイタイフーンは2002年のタタソールズ社のセリにおいて、ライブオークスタッド(Live Oak Stud)に最高価格の180万ギニー(約2億6,460万円)で落札された。
ブック1に上場予定のデインドリームの仔(牡駒)は、母系・父系ともに大変魅力的である。
父ドバウィは、G1馬30頭を送り出しており、今年はネズワー(Nezwaah)、ソウベツ(Sobetsu)、ザラック(Zarak)がG1を制している。昨年のブック1では、2頭のドバウィ産駒がそれぞれ260万ギニー(約3億8,220万円)の最高価格で落札された。また、上場された15頭のドバウィ産駒の平均価格は、驚異的な約97万ギニー(約1億4,259万円)に上った。
一方、母デインドリームは3歳の時に凱旋門賞を5馬身差で圧勝し、近年で最高の牝馬の1頭であることを印象付けた。4歳の時には、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)でナサニエル(Nathaniel)を鼻差で下して優勝した。
馬主の吉田照哉氏の代理でデインドリーム(父ロミタス)を繋養するニューセルズパークスタッド(Newsells Park Stud)が、この牡駒をブック1に上場する予定である。
同スタッドのジュリアン・ドラー(Julian Dollar)場長はこう語った。「この牡駒は本当に見栄えが良く、堂々としています。実にバランスが取れていて、力強くて、競走に向いた馬です」。
「牧場を訪れ放牧場を通りかかったときに、この牡駒を見掛けて"なんという馬なんだ!"と感嘆する人の多さに大変驚きます。彼にはスターになるちょっとした素質があるようです」。
欧州において吉田氏はトップクラスの競走馬の購買者としての方が有名かもしれないが、同氏が率いる社台ファームは日本の当歳・1歳のセリにおいて大変重要な生産者である。JRHAセレクトセール(7月10日・11日)では、2億円で落札されたディープインパクト牡駒(母:米国G1馬コンテスティッド)などの生産馬を上場した。
ドラー場長はこう続けた。「吉田氏とそのチームは、このドバウィ牡駒を大変気に入っていて、彼を見るためにここへ来たほどです。しかし、吉田氏は偉大なオーナーブリーダーであると同時に優れたビジネスマンです。彼らは今年2歳になるデインドリームの仔(牡駒 父フランケル)も所有しています。デインドリームはまだ若く、牝駒も出産しています。それでこの牡駒を1歳セールに送りこむ準備ができたのでしょう」。
現在3歳のデインドリームの牝駒ナッシングバットドリームス(Nothing But Dreams 父フランケル)はロジャー・ヴァリアン(Roger Varian)調教師に管理されるが、現在は軽度の怪我を回復させるためにニューセルズパークスタッドにいる。
デインドリームは今年フランケル牝駒を出産し、再びフランケルと交配した。吉田氏はフランケルを使って、今年の優駿牝馬(G1)優勝馬ソウルスターリング(母スタセリタ)を生産している。
誉れ高いタタソールズ社10月1歳セール・ブック1は、10月3日から3日間にわたり開催される。
凱旋門賞優勝牝馬の繁殖牝馬としての活躍
2016年優勝馬ファウンド(Found)
最初の交配相手はウォーフロント(War Front)と伝えられている。ウォーフロントの優良産駒は、エアフォースブルー(Air Force Blue)、デクラレーションオブウォー(Declaration Of War)、ロリーポリー(Roly Poly)など。
2013年・2014年優勝馬トレヴ(Treve)
今年2月に初仔のドバウィ産駒を出産。その後無事にシャラー(Shalaa)と交配。
2012年優勝馬ソレミア(Solemia)
初仔のダンシリ牡駒は現在2歳で、ソレジリ(Solesili)と名付けられ、カルロス・ラフォン-パリアス(Carlos Laffon-Parias)調教師に管理されている。第2仔は1歳のダンシリ牝駒アルクマニア(Arcmania)。第3仔は当歳のシーザスターズ牝駒。
2008年優勝馬ザルカヴァ(Zarkava)
6頭の仔が競走年齢に達しているが、デビューしたのは現在4歳のドバウィ牡駒のザラックのみ。同馬は今年のサンクルー大賞(G1)を制した。現在2歳のフランケル牝駒ザルカミヤ(Zarkamiya)は、ザラックと同じくアラン・ド・ロワイエ-デュプレ(Alain de Royer-Dupre)厩舎に所属。他に1歳のインヴィンシブルスピリット牡駒、当歳のシユーニ牝駒がいる。今年はドバウィと交配。
1993年優勝馬アーバンシー
歴代最高の繁殖牝馬かもしれない。9頭の仔すべてがブラックタイプ勝馬。その中には英ダービー馬でリーディングサイアーとして君臨するガリレオ、英ダービーと凱旋門賞を制し、種牡馬としてクラシック勝馬を出しているシーザスターズがいる。アーバンシーは他にも、G1馬のブラックサムベラミーとマイタイフーン、クラシック3着内のオールトゥービューティフル(All Too Beautiful)とメリカー(Melikah)を出している。
1993年優勝馬オールアロング(All Along)
繁殖牝馬としての才能はあまり発揮されず、11頭の仔のうち4頭が勝馬となった。その中には、グレフュール賞(G2)優勝馬アロングオール(Along All)とリステッド競走優勝馬アルナクール(Arnaqueur)がいる。
1982年優勝馬アキーダ(Akiyda)
無事に成長した仔はたった1頭であり、不出走。しかしその馬アキシュカ(Akishka)は繁殖牝馬として、長距離を得意とするアクバル(Akbar)など3頭のステークス勝馬を送り出した。
1981年優勝馬ゴールドリバー(Gold River)
仏2000ギニー(G1)2着馬ゴールドネイエフ(Goldneyev)と、サンタラリー賞(G1)優勝馬リヴィエールドール(Riviere D'Or)を送り出した。リヴィエールドールは、歴史を作った名牝ゴルディゴヴァ(Goldikova)の祖母であり、ゴルディコヴァの娘テラコヴァ(Terrakova)は今年6月の仏オークス(G1 ディアヌ賞)で惜しい3着となった。
1980年優勝馬デトロワ(Detroit)
5頭出した勝馬はすべてブラックタイプ勝馬となったが、カーネギー(Carnegie)ほど優秀な仔は出さなかった。カーネギーはデトロワの14年後に凱旋門賞を制し、母子での凱旋門賞制覇を実現した。デトロワはバニンパイア(Banimpire)やオサイラ(Osaila)の先祖でもある。
1979年優勝馬スリートロイカス(Three Troikas)
4頭の勝馬を出し、そのうち最も優秀なのは、サンタラリー賞2着のスリーエンジェルス(Three Angels)である。スリートロイカスのファミリー(牝系)はこれまであまり目立たなかったが、今年3月にアルクオーツスプリント(G1)を制したザライトマン(The Right Man)を出した。
By Martin Stevens
(1ポンド=約140円)
[Racing Post 2017年7月26日「Fasten your seatbelts: colt out of Danedream catalogued for Book 1」]