米国税制改正は馬主・生産者・馬券購入者に恩恵をもたらす(アメリカ) 【開催・運営】
NTRA(全米サラブレッド競馬協会)の初期評価によれば、議会を通過しトランプ大統領が署名して成立した税制改革法案には、生産者と馬主に恩恵をもたらす条項が多数含まれている。
税制改革法案では、法人税率と大半の個人所得税率が引下げとなり、遺産税の基礎控除額は500万ドル(約5億5,000万円)から1,000万ドル(約11億円)に倍増する(2011年以降の物価水準上昇に対する調整)。さらに、一部のパススルー事業体に課税特別措置が適用される。これらは競馬産業に利益をもたらすだろう[訳注:パススルー事業体は、事業体そのものには課税されず、事業体の構成員が受け取った所得に対し個々に納税する。個人事業、パートナーシップ、有限責任会社(LLC)、S法人など]。
一連の税制改正には、1歳馬・繁殖馬・農業設備などについての減価償却や即時償却についての大幅で有益な変更が含まれる。それは以下の通りである。
特別償却の拡大:2017年9月28日~2022年末に固定資産(新規・中古)を取得かつ事業供用した場合、取得価額の100%を即時償却できる(現行法では50%)。これにより、初年度の1歳馬・繁殖馬・農場設備の購入額は100%経費として計上できる(現行法では新規資産にかぎり50%)。この特別措置は2022年まで100%で実施され、2023年から毎年20%ずつ段階的に引き下げられ、2027年に廃止となる。
即時償却の拡大:改正法において内国歳入法179条の下、固定資産(新規・中古)の100万ドル(約1億1,000万円)までの即時償却が認められる[現行法では50万ドル(約5,500万円)まで]。さらに、即時償却が適用される年間の固定資産取得価額の上限が、現行の200万ドル(約2億2,000万円)から250万ドル(約2億7,500万円)に引き上げられた。この額を超える場合は、償却額は逓減される。いずれの上限額も永続的に拡大しており、物価水準が上昇すれば調整されるだろう。
農業資産:農業経営のために使用される機械・設備類には、5年間の耐用期間の加速度償却と200%定率法を用いた減価償却を利用できる。現行法では、7年間の耐用期間の加速度償却と150%定率法を用いた減価償却。
NTRAの理事長兼CEOのアレックス・ウォルドロップ(Alex Waldrop)氏はこう語った。「700ページ以上に及ぶ税制改革案とそれに付随する声明は、実に膨大かつ複雑です。個人への全体的な影響はさまざまですが、総じて条項の多くは競馬界と生産界の経済にプラスの効果をもたらすはずです」。
法人税率・個人所得税率の引下げ、パススルー事業体に適用される課税特別措置により、多くの馬券購入者には恩恵がもたらされるかもしれない。NTRAは馬券購入者のために、"ギャンブル損失額の項目別控除"を完全に廃止する修正案を阻止することに成功した。そのため馬券購入者は引き続き、ギャンブル損失額(すなわち外れ馬券)をギャンブル収益額(払戻合計額)まで控除できる。2018年1月1日~2025年末の間は、ギャンブル損失控除の上限額(払戻合計額まで)は、実際の馬券購入額だけではなく、その賭事活動に関連する旅費・宿泊費などにも適用される。
ウォルドロップ氏はこう付言した。「この発表で示された情報は、税制改革法案を包括的に説明するものではありません。NTRAは税制改正を懸念するすべての競馬関係者に、税務顧問に相談するよう勧めています。彼らは、それぞれの状況に当てはまる情報と助言を与えてくれるでしょう」。
By NTRA Press Release
(1ドル=約110円)
[bloodhorse.com 2017年12月21日「NTRA: Tax Bill Benefits Owners, Breeders, Horseplayers」]