ブリットベット社とトート・コンソーシアムが契約締結(イギリス)【開催・運営】
以前はライバル関係にあったブリットベット社(Britbet)とトート・コンソーシアム(Tote consortium)は、5,000万ポンド(約72億5,000万円)の"英国競馬にとって画期的な契約"を交わした。
ブリットベット社は、英国にある競馬場のうち55場による共同プール賭事の運営を計画していた団体である。一方トート・コンソーシアムは、ベットフレッド社(Betfred 訳注:2011年にトート社を買収。その独占プール賭事運営免許は今年7月に終了)とパートナーのアリゼティ社(Alizeti)により設立された。両者間で7年間の契約が交わされたことで、7月のプール賭事市場開放後に両者が競合することでプールの分散による取引総額の"希薄化"で生じるダメージは避けられる。
トート社株の25%を所有するアリゼティ社のCEOアレックス・フロスト(Alex Frost)氏は、「トート社に新しい活力を与え、英国競馬界の次世代のための財源を確保するうえで、この契約は"非常に重要な一歩"です」と語った。
ブリットベット社のパートナー競馬場55場は、今後7年間で5,000万ポンド(約72億5,000万円)以上を受け取ることになる。
競馬界はベットフレッド社が2011年にトート社を買収して以来、7年間で8,800万ポンド(約127億6,000万円)の直接資金提供をベットフレッド社から受けていた。しかしその提供額には、年間700レースの総額600万ポンド(約8億7,000万円)にのぼるスポンサー料が含まれていた。
トート社のブランドは今回締結された契約の下、ブリットベット社のパートナー競馬場55場で運営を継続する。この55場には、アリーナレーシング社(Arena Racing Company: ARC)とジョッキークラブ競馬場社(Jockey Club Racecourses: JCR)が所有する競馬場や、グッドウッド・ニューベリー・ヨークなどの競馬場が含まれる(訳注:ARCは16場、JCRは15場を所有)。
アスコット競馬場は今年7月、トート社のサポートを受けて独自のプール賭事"ベットウィズアスコット(Bet With Ascot)"を開始した。
ブリットベット社はパートナー競馬場55場でのプール賭事運営を管理する。一方トート・コンソーシアムは、トート社のオンライン賭事とベッティングショップの運営を続けるほか、デジタル商品の提供と販売促進を担当する。
トート社の経営は、3社の代表で構成される運営グループによって監督される。
ベットフレッド社の創設者フレッド・ダン(Fred Done)氏はこう語った。「弊社がトート社を所有した7年間、我々のチームは懸命に取り組み、数々の結果を出してきました。今回の契約締結はそれを基盤としています。私たちは新たな時代を迎えるトート社の一員であり続けることを光栄に思います。そして引き続き、アスコット競馬場と"ベットウィズアスコット"を共同で運営することを楽しみにしています」。
ブリットベット社のニール・グールデン(Neil Goulden)会長は、「この契約は、パートナー競馬場55場に対してプール賭事からの利益を最大限に還元する、という目標を実現します」と述べた。
そしてこう続けた。「私たちはトート・コンソーシアムと協力することを楽しみにしています。プール賭事を発展させ、競馬に寄与する革新と投資をもたらすことを目指します。55場における新しいプール賭事の開始と7月13日から実施している運営管理は、これからもブリットベット社の構想の中心となります。今後はこの契約により、私たちは競馬場来場者に対してより豊富な体験をもたらすことができます」。
トート・コンソーシアムとブリットベット社は6月に現状維持協定を結んでいた。この協定は10月末で期限切れとなる予定だったが、話合いが継続され、今回の契約締結に繋がった。
ジョッキークラブのCEOサイモン・バザルゲット(Simon Bazalgette)氏は、アリゼティ社とは友好的な話合いを持てたと述べ、「この契約は、トート社に対する多額投資を含むアリゼティ社の方針をベースとし、プール賭事を発展させ、そこから得られた利益をできるかぎり競馬界に還元するように策定されました。私たちはこの契約を支持することをとても嬉しく思います」と語った。
ARCのCEOマーティン・クラッダス(Martin Cruddace)氏も、この契約締結を歓迎してこう語った。「私たちは、顧客にとって魅力あるインパクトが強いプール賭事商品を展開することに専念しています。またこの契約締結により、強力なプール賭事運営が英国競馬にもたらすチャンスを最大限にできるでしょう」。
「これは英国競馬にとって画期的な契約締結です。私たちはこの協調的な方針の下で、ブリットベット社、トート・コンソーシアム、そして同業者であるJCRと協力して取り組むことを楽しみにしています。本日、英国競馬は大きな一歩を踏み出しました。この契約締結を可能にした関係者すべてに感謝したいと思います」。
今後は、アリゼティ社がトート社株を全て買収するという野望をいつ達成できるかについて関心が向けられるだろう。
これは2019年の重要度の高い事柄の1つと考えられているが、トート社運営において控除率を引き下げて賭事客の利益を向上させる取組みも優先度が高い。
アリゼティ社のCEOフロスト氏はこう語った。「私たちは新しい活力が与えられたトート社を通じて、英国競馬界の次世代のための財源を確保するよう努めています」。
「この契約締結は、トート社とアスコット競馬場のパートナーシップに続くものであり、財源確保に向けたもう1つの大きなステップです。それに、これによって競馬界のプール賭事に関する方針が統一化されます」。
アスコット競馬場のCEOガイ・ヘンダーソン(Guy Henderson)氏もこの契約締結を高く評価し、「英国が単一のプールを運営することは朗報です。トート社の専門知識・経験・国際提携から恩恵を受けることになるでしょう」と語った。
BHA(英国競馬統轄機構)のスティーヴ・ハーマン(Steve Harman)会長もこの契約締結を歓迎し、こう語った。「この契約締結を嬉しく思います。競馬界が新しい投資を呼び込み、トート社の国際的な賭事商品をさらに発展させることができることを議会や政府関係者に示すうえで、重要なステップです。これは競馬の将来の財源を確保するうえでの大きな前進であり、賦課金制度のさらなる発展の一助となるでしょう」。
今年3月のチェルトナムフェスティバルでハーマン会長が投資家グループのアリゼティ社のフロスト氏を接待したことは、"利益相反取引にあたるのではないか"という嫌疑を招いていた。ハーマン会長はその嫌疑を晴らしていたが、予定よりも数ヵ月早い11月に辞任する。
なお、チェスター競馬場とバンガー競馬場は引き続き独自の場内賭事を運営し続け、この契約に加わらない。
By Bill Barber
(1ポンド=約145円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2018年No.28「ベットフレッド社のプール賭事独占運営満了に伴う今後の勢力図(イギリス)」
[Racing Post 2018年10月30日「Britbet and Tote agree £50m pool-betting deal」]