メゾンラフィット競馬場、2019年末に閉場予定(フランス)【開催・運営】
1週間ほど前から噂は広まっていた。それでもフランスの競馬コミュニティーは、 11月28日(水)午前の"来年末にメゾンラフィットでの競馬開催は終了する"という発表を、衝撃と落胆をもって聞いた。
メゾンラフィット市のジャック・ミヤール(Jacques Myard)市長は、この決定を"おぞましい"と言い表した。一方、メゾンラフィットで厩舎を構えるジーナ・ラリック(Gina Rarick)調教師は、フランスギャロ(France Galop)は今回の発表を行うためにメゾンラフィット競馬場をフルに活用しないようにしていたのかもしれないと述べた。
1878年に開場したメゾンラフィット競馬場(パリの西郊)は、2000mの直線コースを有することでよく知られている。2つの重要な仏クラシックトライアル[ジェベル賞(G3)とアンプリューダンス賞(G3)]や貴重な2歳戦[ロベールパパン賞(G2)とクリテリウムドメゾンラフィット(G2)]を施行してきた。
メゾンラフィット競馬場が2019年の24開催日を終えた後に閉場予定であるという発表と同時に、メゾンラフィットの調教センターの改修工事へ150万ユーロ(約1億9,500万円)を投資する計画も発表された。1,500頭収容のこの調教センターは、現在全馬房の3分の1しか埋まっていない。競馬場閉場により31人分の職が失われることになる。
メゾンラフィット競馬場の擁護者が団結
"メゾンラフィット競馬場を守る運動"が開始され、11月28日(水)午後までに約3,300件のオンライン署名が集まっている。
メゾンラフィット市議会はこの発表に先立つ27日(火)夕方、閉場に反対する行動を起こすこと、そして "使える手段を全て使って閉場を阻止するため"にミヤール市長に全権を委ねることを満場一致で可決した。ミヤール市長は元上院議員で、長年にわたるメゾンラフィット競馬場の強力な擁護者である。
ミヤール市長は28日(水)午後にパリにおいて政府関係者と会合を持ち、フランスギャロの計画に対して政府が介入するよう強く求めた。
同市長はその後ツイッターでこう述べている。「フランスギャロによるメゾンラフィット閉場の決定は、おぞましいものです。フランスギャロの幹部は私に虚辞を重ねましたので、もはや信頼できません。彼らは競馬産業の低迷に責任があります。私は政府に対し、同産業のガバナンス(統治・統制)を早急に変えるよう求めました」。
ミヤール市長の競馬産業のガバナンスを改革する要求は、ジャン・アルチュイ(Jean Arthuis)氏が政府に委託されて最近作成した報告書の繰返しである。ただ、同市長は政府に対し、フランスギャロのメゾンラフィットおよびシャンティイの調教センターの運営費を大幅削減することも要求した。
メゾンラフィット競馬場は近年、多くの問題に悩まされてきた。今年2月には、隣接するセーヌ川が氾濫して洪水被害に遭い、右回りの円形コースで馬が滑って転倒した。
しかし、フランスギャロが経済社会委員会(Central Economic and Social Committee 従業員代表による委員会)にメゾンラフィット競馬場の閉場を勧告させたのは、帳尻を合わせるための取組みによるものである。
2013年、フランスギャロのベルトラン・ベランギエ(Bertrand Belinguier)前会長の下で、メゾンラフィット競馬場の存続可能性について調査する計画が提案されていた。しかし、労働組合や競馬従事者が徹底的に抵抗したため、その計画は断念された。
その後、フランスギャロはコスト削減の一環として、アンギャン競馬場で障害競走を開催するための賃貸契約を更新しなかった。パリ地域で最後に閉場した競馬場は、1996年に閉鎖されたエヴリー競馬場である。
労働改革の必要性
ジーナ・ラリック調教師は米国出身者として、この問題について興味深い見解を持っている。同調教師は現在500頭が在厩するメゾンラフィットの調教センターに16頭を入厩させており、メゾンラフィット競馬場の閉鎖は同競馬場の重要性を過小評価した方針の結果だろうと考えている。
しかし同調教師は、フランスギャロが施設管理のために雇用しているスタッフを減らす必要性を認め、こう語った。
「フランスギャロは今回、具体的に31人分の雇用を削減すると言っています。この発表の重要性はここにあります。メゾンラフィットが何年も前から抱えてきた問題は、働いている人が多すぎるという重荷を背負っていたことです。調教センターの規模が問題なのではありません。素晴らしい施設なので実際は多くの馬を引き付けることができたはずです」。
「フランスの賃金は高いので、彼らへの支払いはかなりの額になります。それが大問題となっていました。もしその問題が解決できるのであれば、競馬場も守れたことでしょう。フランスギャロには"閉場する"と言う以外に選択肢がないのだと思います。メゾンラフィット競馬場が本当に閉場されるかどうか、その後に不死鳥のようによみがえることができるか、フランスギャロは何を救い出すことができるのか、見当がつきません」。
ラリック調教師はこう付言した。「メゾンラフィット競馬場には本当に素晴らしい2000mの直線があります。平らで公正なレースができます。しかしその魅力的な直線はなおざりにされ、フルに活用されていません。この土地をないがしろにする策略があったのでしょう」。
By Scott Burton
(1ユーロ=約130円)
[Racing Post 2018年11月28日「Maisons-Laffitte closure plan sparks outrage and rallying cries」]