韓国競馬の急成長で豪州・ニュージーランド生産界にチャンス到来か(韓国)【開催・運営】
豪州・ニュージーランド生産界が東アジアで一攫千金を夢見るのであれば、韓国競馬に目星を付けると良いだろう。ソウルで開催されたアジア競馬会議(5月13日~18日)をうけて、韓国競馬は中国本土の海南省で競馬が解禁される前の大本命とされているようだ。
アジア競馬会議がソウルで開催されたことと、それにより名声を得られたことは、KRA(韓国馬事会)が政府と交渉する際に助けとなるだろう。現政府は前政府よりも競馬に対して好意的であると考えられている。
韓国競馬には2つの重要な課題がある。1つ目はもちろん、芝コースの敷設である。これはソウルの冬の厳しい天候により困難となる任務である。2つ目は、合法オンライン賭事の導入である。これにより、現在違法賭事に流れている110億ドル(約1兆2,100億円)をいくらか取り戻せるかもしれない。
このテーマはアジア競馬会議において重要な議題となっていたが、同様に、香港やマカオのように規制がある程度緩い中国の海南省における競馬発展の可能性についても重点的に議論された。
この数週間アジアにおいて、競馬記者ではなくビジネス記者や社会部記者による報道がこの見解に冷や水を浴びせている。香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)のCEOウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges)氏はこの会議で予定になかった演説を行い、海南省で競馬・賭事が解禁されるかもしれないという憶測については冷静になるべきだと述べた。
しかし最近の新聞報道は、海南省の当局者が競馬とスポーツくじを規制する機関を選定し始めていると主張している。もちろん、くじと賭事は別物である。国営の中国新聞社(China News)によれば、海南省の競馬場やその他の観光・商業施設の発展を担当するのは、同省の文化・ラジオ・テレビ・出版・スポーツ庁である。
こう論じることはできるかもしれない。一筋の光明はある。パリミューチュエル賭事プールからの控除額を適切な目的で使用すれば、中国政府が持ついかなる懸念も最終的に乗り越えるという考え方は広く受け入れられていると。
海南省は観光地となっているが、現在のところ海外からの観光客は全体の3%にとどまっている。2020年までにその数を大幅に増加させる計画が進行中である。すでに海南省馬術協会(Hainan Equestrian Association)があり、中国政府は海南省を香港のように"開放したがっている"と信じられている。
それは実現するかもしれないが、一夜にして起こらないことは明らかである。
おそらく、韓国の芝コース敷設についても同様の見通しができる。一方で、韓国の犯罪学者で統計家のイ・チャングン(Lee Changhun)氏による国内違法賭事に関するプレゼンには説得力があり、合法オンライン賭事の再導入が急速に進むかもしれないと考えさせるものだった。これは違法賭事市場に流れている巨額の資金を取り戻せるかもしれないことを示している。
アジア競馬会議で垣間見られたように、韓国競馬は成長し続けている。そしてこの会議がこれほど多彩な競馬国を呼び集めたことを踏まえると、この状況は9月9日(日)に迫ったKRAの国際競走2レースに良い影響をもたらすだろう。
最も重要なキーンランドコリアカップ(ダート1800m 3歳以上)は、総賞金90万ドル(約9,900万円)を誇る。前座レースであるキーンランドコリアスプリント(1200m)も、その総賞金は64万5,000ドル(約7,095万円)に上る。2016年創設のこれら2レースは、当然ながら日本や香港などから優良馬を引き付け、素晴らしい競り合いが繰り広げられている。
それらのレースは、急成長し今なお上昇スパイラルにある韓国競馬の象徴である。違法賭事市場の規模を推測すると、オンライン賭事が再導入されれば、韓国競馬はさらに躍進するだろう。
賞金総額や競馬開催日の増加(2017年は192日)だけにとどまらないかもしれない。重要な課題の1つとなった芝コース敷設が完了すれば、長期的に見ると、豪州とニュージーランドのサラブレッド販売者に刺激がもたらされるかもしれない。また、韓国産馬の質の向上と頭数増加が徐々に見られ(2017年の生産頭数は1,361頭)、さらなる発展が推し進められるだろう。
ニュージーランドブラッドストック社(New Zealand Bloodstock: NZB)のマイク・ニーボーン(Mike Kneebone)事業開発部長は、韓国におけるニュージーランドの市場占有率が現時点では最小レベルであることを認めているが、NZBの今後の成長の可能性をよく認識している。
ニーボーン部長はこう語った。「現在私たちのビジネスを制限している主な要因は2つあります。1つは、ニュージーランド・豪州から韓国までの馬の輸送費です。これについては現在、航空会社と一緒に取り組んでいるところです」。
「しかし最も重要な要因は、韓国に芝コースがないことだと思います。私たちが販売する馬は、香港やシンガポールなどで証明されているとおり芝以外の馬場でも走ります。しかし韓国に足掛かりを得て、地元の馬主と調教師に私たちのサラブレッドの質の良さを伝えるには、芝コースがあれば全く違うでしょう」。
「NZBの代表としてロビン・リー(Robin Lee)氏が韓国に駐在しています。業界内では有名人であり、動物輸入ビジネスを運営しています。私たちは、彼の業界に対する熱意と彼がニュージーランドのさまざまなクラブから受けている支援によって支えられています」。
「私たちは長年、韓国でビジネスを行うために徹底的な調査を行ってきました。最近は、韓国競馬の急成長を非常に興味深く見てきました。韓国競馬はいつも、大勢の観客を引き付けています」。
「韓国が国際的に重要な競馬国になるかもしれないと考えることはかなり現実的です。韓国競馬は次のレベルに進むための素材が十分に揃っています」。
By Steve Moran
(1ドル=約110円)
[Racing Post 2018年5月23日「Opportunities could abound for Australasian breeders in Korea」]