賦課金制度改革により、賦課金収入が過去10年で最高となる(イギリス)【開催・運営】
英国政府が賦課金制度を改革したことで、競馬界に過去10年間で最高の賦課金収入がもたらされた。
7月23日、競馬賭事賦課公社(Levy Board 賦課公社)の年間報告書と2017-18年度決算書が議会に提出された。この中で、年間収入総額は前年度の6,510万ポンド(約91億1,400万円)から45.5%増の9,470万ポンド(約132億5,800万円)となり、2007-08年度の1億1,530万ポンド(約161億4,200万円)以来の最高額となることが伝えられている。
この賦課金制度改革は、賦課公社が海外に拠点を置く賭事業者から賦課金を徴収することを初めて可能にした。賦課公社のポール・リー(Paul Lee)会長は報告書の中で、改革が成功裏に実施されたことに満足していると記し、「これは、ブックメーカーが前向きな姿勢で協力してくれたおかげです」と補足している。
賦課公社は、賦課金制度改革後の年間収入は約9,000万ポンド(約126億円)になるという想定の下に取り組み、実際はそれを5%上回った。CEOのアラン・デルモンテ(Alan Delmonte)氏は新しい賦課金制度の実施に尽力したスタッフに感謝の意を表しながらも、将来の収入について確実に想定するのは時期尚早だと述べた。
デルモンテ氏はこう続けた。「年初から私たちが述べてきたとおり、多数のブックメーカーの競馬賭事ビジネスに関するトラックレコードを一切持っていないので、1年目の予測は大変困難です。予測値の9,000万ポンドを5%上回ったことは歓迎されましたが、全くの想定外ではありませんでした。ただ5%下回るよりも5%上回るほうが明らかに朗報です」。
賦課公社は準備金も2,500万ポンド(約35億円)から4,600万ポンド(約64億4,000万円)に引き上げることができた。この額は2018年末までに5,000万ポンド(約70億円)に達する見込み。
デルモンテ氏は、この額は競馬産業にある程度の安堵を与えるはずだと述べた。とりわけ、政府がゲーム機FOBT(固定オッズ発売端末)の賭け限度額を2ポンド(約280円)に引き下げることを決定し、ベッティングショップの店舗数が大幅に減少すると予測されている中で、準備金の増加は衝撃を和らげるかもしれない。
しかし、賦課公社は2019年4月に解散予定である。その後、賦課金徴収を賭事委員会(Gambling Commission)が、賦課金の使途決定を新設の競馬機構(Racing Authority)がそれぞれ引き継ぐ。また、将来の準備金のレベルを定めるのは、競馬機構の役割となる。
競馬機構の会長に任命されたサー・ヒュー・ロバートソン(Sir Hugh Robertson)元スポーツ大臣は競馬機構と賭事委員会の間の議論で中心的役割を担ってきたと、デルモンテ氏は語った。
リー会長は報告書にこう記している。「ロバートソン元大臣は極めて優秀です。競馬機構に関連する事柄について、気の置けない協力関係をすでに築いています。新しい体制にスムーズに移行するために、私たちは全力を尽くすでしょう」。
デルモンテ氏は、来年4月の新しい体制への移行に関する細部の作業は秋に開始されると述べ、「賦課金の"徴収"と"使途決定"の双方についての全ての業務を達成するために、私たちは約6ヵ月間、全力で打ち込んでいく所存です」と語った。
政府は、賦課金制度改革を完結させるために必要とされる法案を提出する予定。クリスマス休暇までにこの法案を通過させることを目指す。
デルモンテ氏は、「法案が提出されれば、賭事委員会と競馬機構で必要とされるスタッフに関して明確となるでしょう。そうすれば、賦課公社のスタッフのこれら団体への移行についてより多くのことが分かるでしょう」と付言した。
By Bill Barber
(1ポンド=約140円)
[Racing Post 2018年7月23日「Levy reforms boost income to ten-year high of £94.7 million」]