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海外競馬情報
2018年09月21日  - No.9 - 1

競馬はデジタルマーケティングで大きな遅れをとっている(アメリカ)【開催・運営】


 NBA(全米バスケットボール協会)はデジタルマーケティング(訳注:電子メディアを通じて製品やブランドのプロモーションを行うこと)の分野で大きな足跡を残しているが、競馬産業はその足元にも及ばない。

 8月12日のジョッキークラブ円卓会議(Jockey Club Round Table Conference ニューヨーク・サラトガスプリングスで開催)で、マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey and Co. コンサルティング会社)は、競馬産業のデジタルメディアへのアプローチは他のスポーツに比べて大きく遅れていると説明した。同社のマイク・サルヴァリス(Mike Salvaris)氏は、「競馬界は魅力あるモバイルコンテンツを制作し、その中でも最良のコンテンツのプロモーションを行うことが必要です。また、SNSを積極的に利用することでファンデータを獲得し、的を絞った個別のマーケティングに投資すべきです」と述べた。

 これらの目標を達成するために、競馬産業が歩む道のりは長い。

 サルヴァリス氏はこう続けた。「ある競馬統轄機関は、フェイスブックに275件以上の動画を投稿しています。しかし全体的に見れば、成功させるのに必要な規模でデジタルメディアを活用している競馬統轄機関は現在ほとんどありません。競馬産業はコンテンツを飛躍的に増加させ、ファンの目に大いに触れるようにしなければなりません。優れたスポーツサイトは動画・記事・ポッドキャスト・ツイートなど、1日に200個以上のコンテンツを制作しています。」。

 SNSの活用に関しては、NBAが全てのスポーツ協会を先導している。

 サルヴァリス氏はこう語った。「NBAはかなり多くのオンライン視聴者を獲得しています。フェイスブックのフォロワーは3,600万人であり、これはNFL(全米フットボール協会)の倍に上ります。また、ツイッターには2,700万人、インスタグラムには3,000万人のフォロワーがいます。しかも、これらはNBAのアカウントだけのフォロワー数で、選手やチームのアカウントも併せると莫大な数になります。たとえば、レブロン・ジェームズ選手(ロサンゼルス・レイカーズ)、ステフィン・カリー選手(ゴールデンステート・ウォリアーズ)、ドウェイン・ウェイド選手(マイアミ・ヒート)はインスタグラムだけで合計で5,200万人のフォロワーがいます」。

 「NBAはどのようにしてこれほど多数のオンライン視聴者を獲得したのでしょうか?それは、彼らが大量のコンテンツを制作しているところが大きいです。NBAのデジタル班だけで約30人います。その班は"試合のハイライト"、そして重要なところでは、"ライフスタイル・コンテンツ"を制作・配信し、大成功を収めています」。

 数年前に多くの競馬場が資金提供を打ち切ったため、NTRA(全米サラブレッド競馬協会)はもはや、競馬の全国的なマーケティングを主導していない。一方で、米国ジョッキークラブはアメリカズベストレーシング(America's Best Racing:ABR)を設立して、その穴埋めを図ろうとしてきた。

 米国ジョッキークラブのスチュアート・ジャニー(Stuart Janney III)氏は今年の円卓会議で、ABRを本格的なデジタルメディアサービス会社に拡張する計画を発表し、「競馬産業内のパートナーと一緒に取り組むことで、1年後には、ABRが制作・配信する動画は100万人ものカジュアルファン(ファンになりかけの人々)を引き付けられるでしょう」と述べた。

 半数以上の競馬場は、レース映像をいまだに標準画質で配信している。そのような時代遅れな競馬産業に明るいニュースはあるのだろうか?

 サルヴァリス氏は、競馬というスポーツはソーシャルメディアに適していると指摘し、こう語った。「NBAと同様に競馬にとっても、ライフスタイル・コンテンツは成果が期待できる分野です。牧場の仔馬から、競馬場でのファッションや食べ物にいたるまで、コンテンツの材料は多岐にわたります。それにレース動画はすぐに視聴可能です。競馬が新しいファンを獲得するにあたり最も必要なのは、競馬に興味を持った人々を引き付けるために感動的なデジタルコンテンツを迅速に提供し、 競馬日和に設備の整った競馬場に行きたいと思わせることです」。

 グーグル社(Google)の販売戦略・運営主任のクリス・ポラック(Chris Pollak)氏は、さらに良い情報を提供した。それは動画制作には高額の制作費が掛からないことである。同氏は、ユーチューブ(YouTube)で大きな成功を収めた広告にはそれほど費用は投じられていないと語った。

 サルヴァリス氏は、「コンテンツを一層多く制作するからには、それらのコンテンツを競馬ファンになる可能性のある人々に確実に見てもらわなければなりません」と述べた。

 そしてこう続けた。「競馬産業はコンテンツをプロモートすべきです。そうしなければ、それらはカジュアルファンの目に触れません。どのようなタイプのウェブサイト所有者も、彼らのサイトやアプリ以外で消費行動の大半が生まれていることを発見します。それゆえ、彼らはファンを絞り込み、SNSでファンに向けてコンテンツをプロモートするために投資する必要があります」。

 最終的に、競馬産業はファンを理解するためにSNSを活用しなければならない。

 サルヴァリス氏はこう付言した。「マーケティングは従来メディアからデジタルメディアにシフトしています。そのため、極めて個別化されたサービスを提供することで、ファンを特定してコミュニケーションを図れるようにすることが重要です。それには、ファンのデータベースとEメールアドレス、クッキー(訳注:Webサイト側が、Webブラウザを通じて訪問者のコンピュータに一時的にデータを書き込んで保存させる仕組み)などが必要となります。現在、メジャースポーツ(野球・アメリカンフットボール・バスケットボール・アイスホッケー)は、現地で試合観戦するファンの40~50%を認識しています。また、カジノやテーマパークは顧客の70~90%について把握しています。一方、大半の競馬場は来場するファンの10~15%しか特定できていません。またメジャースポーツとは違い、競馬産業内全体における"ファンの集中データベース"も"ファンデータの共有"もありません」。

By Frank Angst

[bloodhorse.com 2018年8月20日「Experts: Horse Racing Left at Gate in Digital Marketing」]


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