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2019年11月21日  - No.11 - 1

レーシングヴィクトリア、馬福祉戦略計画に資金提供(オーストラリア)【開催・運営】


 レーシングヴィクトリア(Racing Victoria: RV ヴィクトリア州の競馬運営組織)は10月28日、競走引退後に重点を置いたヴィクトリア州のサラブレッドの福祉のために、総額2,500万豪ドル(約18億7,500万円)の資金を提供する計画を発表した。

 RVは馬福祉戦略計画(Equine Welfare Strategic Plan)を加速・拡大するためのプログラムを進行しており、この資金はそのプログラムの最初の3年間に対して支出される。

 また、RVは競馬産業の全分野、そして競馬産業外でもサラブレッドを扱う分野に対し、サラブレッドの生存中および死に際して思いやりのあるケアを行うことに力を入れ、責任を負うことを呼び掛けた。

 以下の馬の福祉についてのイニシアティブが実施予定である。

州全体のサラブレッド受入れプログラム... 既存の基盤を活かして拡大された受入れネットワーク。これにより第2のキャリアや余生を過ごそうとしている引退競走馬を支援する。

競走引退後のキャリアの選択肢...引退競走馬が次のキャリアに就くチャンスをより多く生み出すために拡大されたオフザトラックプログラム(Off The Track Program 訳注:2012年にイギリスのRoRをモデルに開始されたプログラム)。

州全体のサラブレッド里親プログラム...引き取り手のないサラブレッドを短期的・中期的に支援するための新たな里親プログラム。

高度な追跡システム...オフザトラックプログラムの新たなデータベース。このデータベースに入っていれば、ヴィクトリア州の引退競走馬は少なくとも最初の繋養先に登録される。すべてのサラブレッド・繁殖牝馬の状況の独立監査、サラブレッドのセリのデータ分析を実施。

馬福祉特別委員会...ヴィクトリア州のサラブレッドの福祉を向上させるプログラムを提供することに重点を置いた内部の特別委員会。

人道的な安楽死措置...安楽死措置を取るしかないと判断されたサラブレッドに対し、公認の獣医師が実施する"牧場における"新たな人道的な安楽死措置プログラム。

責任ある生産...最終的に行き場のないサラブレッドを減少させるために、レーシングオーストラリア(Racing Australia)とサラブレッド生産者オーストラリア(Thoroughbred Breeders Australia)が主導する、全国的な"責任ある生産キャンペーン"の支援。

 RVは豪州のすべての競馬統轄機関に対して、豪州の屠場において動物福祉基準の維持および法令順守の厳格な実施を確実にするよう呼びかけた。

 動物福祉への責任を真剣に受け止めない者に対しての抑止力となるように、屠場に関する法律に違反した者はすべて厳しく処罰されることを期待していると、RVは表明した。ヴィクトリア州ではプライムセーフ(PrimeSafe)という機関が屠場の規制について責任を担っている。

 RVは、10月25日のレーシングオーストラリア馬福祉会議(Racing Australia Equine Welfare Meeting)における結論を支持しており、豪州馬トレーサビリティ・データベース(National Horse Traceability Database)の開発に向けて連邦政府と州政府が協力するように改めて呼びかけた。

 馬の福祉についてのイニシアティブを加速させるためのこの計画に、最初の3年間で2,500万豪ドル以上が支出される。その資金確保は以下により行われる予定である。

・ RVからの資金提供額の増加
・ 産業持続可能基金(Industry Sustainability Fund)からの資金提供
・ 競馬産業からの提供額の増加(賞金の1%を2%に引上げ)

 今回発表された出資計画は、RVとヴィクトリア州競馬産業が実施している既存の馬福祉プログラムを補完する。その中には、高い評価を受けているオフザトラックプログラムや世界トップレベルの故障予防研究などが含まれる。

 またこの発表に先立ち、RV・連邦政府・メルボルン大学は競走馬の深刻な故障の予防と早期発見に役立てるために、メルボルンへの豪州初の立位CTスキャナー導入に1,300万豪ドル(約9億7,500万円)もの資金提供を共同で行っている。

 RVのブライアン・クルーガー(Brian Kruger)会長はこう語った。

 「ヴィクトリア州は、馬福祉の実践方法(プラクティス)においてリーダーになるというビジョンを持っています。競馬産業は近年、沢山の素晴らしい成果を挙げており、将来への道ははっきりしています。私たちが進んでより多くのことを行うべきなのは明らかです」。

 「競馬で注目を集めるのはいつも馬です。競走馬が思いやりを持って扱われることに異議を唱える人はいないでしょう。この10日間に生じた出来事やそれについての報道は、世論を喚起し、競馬産業内でも議論の的となりました。そして、すでに計画されていたイニシアティブを迅速に実行する機会をもたらしました。」(訳注:テレビ局のABCが10月17日、多くの引退競走馬が非人道的な扱いを受けていることを暴露して、全国にショックをもたらした

 「私たちは今年すでに、広範囲にわたる産業内の協議を経て、馬福祉戦略計画を発表していました。サラブレッドに対して、競走生活開始前から引退後まで、その福祉を改善し続けることを目指します」。

 「私たちは本日、今後3年間で少なくとも2,500万豪ドルを支出して、ヴィクトリア州のサラブレッドにより良い福祉の成果をもたらすために、イニシアティブを拡大し加速させる計画を発表しています」。

 「克服すべき難題が多くあります。とりわけ、競馬産業が引退競走馬に対して権限あるいは監視権を持たない場合は困難です。それでも私たちは、競走馬と競馬界が一層幅広い利益を得るように、重要なステップを踏むように専念します」。

 「これは我々が単独で成し遂げられるような任務ではありません。競馬産業からの資金提供、政府からの継続的支援が必要です。連邦政府に対して、目標達成に向けて豪州馬トレーサビリティ・データベースを迅速に導入するために州政府と一緒に取り組むことを再度要請します」。

 「国内の全馬を対象としたデータベースの開発は複雑になると理解しています。私たちは、サラブレッドのための予備テストを実施するために政府と協力し合う機会を喜んで受け入れます」。

 「これらのイニシアティブを成功させるために重要なのは、各州・地域を代表する8つの主要競馬統轄団体(Principal Racing Authorities)が一丸となることです。レーシングオーストラリアが、豪州のサラブレッドに世界最高水準の馬の福祉の成果をもたらすという全国的な計画を推進できるように、私たちは大きな役割を果たすつもりです」。

 「ヴィクトリア州の競馬産業のすべての利害関係者は馬に責任があります。それゆえ、私はRVを代表して、本日ヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)が馬厚生基金(Equine Wellbeing Fund)の設立のために100万豪ドル(約7,500万円)以上を提供すると発表したことを称賛したいと思います」。

 「重要なことですが、メルボルンカップカーニバル(Melbourne Cup Carnival 11月2日~9日)に来場する人々は、VRCメンバーであろうと一般の競馬ファンであろうと、馬に恩恵をもたらす今後のイニシアティブに入場料の1%が拠出されることを知って安心するでしょう」。

 「私たちはまた、競馬に関わるビジネスパートナーが馬の福祉に関する価値観を共有していると認識しています。馬福祉プロジェクトを今後とも継続的にサポートしてもらうために、彼らと密接に取り組み続けていきます」。

 「競馬はヴィクトリア州にとって重要な産業であり、2万5,000件もの雇用を支え、地域・農村地帯のコミュニティーを団結させています。競馬産業が勢いを保ち続け、将来の世代のために長く存続することを望んでいます。私たちはこの目標を達成するために根気強く取り組んでいきます」。

(1豪ドル=約75円)

[bloodhorse.com 2019年10月28日「Racing Victoria Commits AU$25 Million to Aftercare」]


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