カリフォルニアクロームは第2のサンデーサイレンスになるか(日本)【生産】
私たちは、「サラブレッド競馬は野外で行われる最高のスポーツである」、「サラブレッド生産はビジネスである」ということを自明の理だと考えている。若馬がセリに上場されるとき、競走馬が引退して種牡馬入りするとき、種牡馬が他の事業体に移されたり他国に売却されるときはいつも、このことを思い出す。
サラブレッド市場は国際色豊かである。キーンランド11月セールの担当者は、サウジアラビア、トルコ、韓国からの購買者が総売上額の増加に一役買ったと述べた。
11月20日にはびっくりするようなニュースが舞い込んだ。2014年ケンタッキーダービー(G1)&プリークネスS(G1)優勝馬で米国年度代表馬に2度輝いたカリフォルニアクロームが、日本の生産者に売却されたというのだ。
カリフォルニアクローム(父ラッキープルピット)は、テイラーメイド牧場(Taylor Made Farm)の種牡馬群の中でも特に人気ある種牡馬だった。同牧場がツアーを催して、華やかな栗毛の同馬の周りにファンが集まるほどだった。米国の生産者に不人気だったわけではない。米国ジョッキークラブの種付牝馬報告(Report of Mares Bred)によれば、同馬は北米で供用された3年間(2017年~2019年)の各年において、145頭、133頭、143頭に種付けを行った。
日本に送られたケンタッキーダービー馬は他にもいる。2011年ケンタッキーダービー馬アニマルキングダムも今年10月にJBBA(日本軽種馬協会)に売却されたばかりである。カリフォルニアクロームが日本に輸出されるというニュースは同馬の熱烈なファンにショックを与え、多くの反響があった。その日のSNSはこの話題で溢れかえったことだろう。カリフォルニアクロームのツイッターアカウント(@CalChrome)には、1万7,800人以上ものフォロワーがいる。
日本に売却されたもう1頭のケンタッキーダービー&プリークネスS優勝馬・米国年度代表馬は、サンデーサイレンスである。"ボールドイーグル(Bald Eagle)"という異名をとる偉大なチャーリー・ウィッティンガム(Charlie Whittingham)調教師に手掛けられた。
サンデーサイレンスの馬主だったアーサー・ハンコック3世(Arthur Hancock III)は、「サンデーサイレンスを売却した後、事務所に電報・ファックス・電話が殺到しました。"よくそんなことができるもんだ"といった状況でした」と当時を振り返った。
そしてこう続けた。「いいですか、私は自分がやったことについてきちんと始末をつけてきた人間です。確かに売却するという決断を下しましたが、それがサンデーサイレンス、ストーンファーム(Stone Farm ハンコック氏の牧場)、子供が6人いる私の家族、チャーリーにとって一番得策だったのです」。
サンデーサイレンス(父ヘイロー)の日本への売却は、カリフォルニアクロームのときとは少し事情が違う。ハンコック氏が育成し、同氏とウィッティンガム氏およびアーネスト・ガイヤード(Ernest Gaillard)博士に所有されたサンデーサイレンスは、競馬ファンの間では人気があったが、ケンタッキーの生産者は無関心だった。
ハンコック氏はこう語った。「1990年に彼を売却したときには大きな悲しみに襲われましたが、それは私のせいではありません。米国の生産者が無関心だったためにそうせざるをえなかったのです」。
「私はサラブレッド界のあらゆる人物を知っています。ジョン・アジャー(John Adger)氏とフィル・オーウェンズ(Phil Owens)氏に助けてもらいながら、フランス、英国、米国などにいる100人もの知人に片っ端から電話しなければなりませんでした。しかし誰もサンデーサイレンスの所有権を買おうとはしませんでした」。
「サンデーサイレンスが競走から引退する4~5ヵ月前だったと思いますが、チャーリーが電話してきたときに、その状況について初めて耳にしました。サンデーサイレンスは3歳シーズンを終えた頃でした。チャーリーから『アーサー、不思議なことに、サンデーサイレンスを種牡馬として使うために見に来る人がいません』と伝えられたのです。それを聞いて、私は、『生産者たちは多分、彼がストーンファームで供用されることを知っているのでしょう』と答えました。彼は、『いいえ、私が話しているのは、生産者たちが彼を供用するどころか繁殖牝馬の相手とすら考えてくれていないということです』と言いました。その時、私はそのことについてあまり実感していませんでしたが、彼が正しかったのです」。
ハンコック氏は、伝えられるところによると1,000万ドル(約11億円)でサンデーサイレンスを売却した。そしてサンデーサイレンスは日本において13年連続でリーディングサイアーとなり、ステークス勝馬を172頭送り出し最も成功した種牡馬となった。
ハンコック氏はこう思いを巡らせた。「カリフォルニアクロームが優秀な種牡馬になるかどうか誰にも分かりません。彼は強い心臓を持ち、サンデーサイレンスのように偉大な競走馬でした。サンデーサイレンスが何を成し遂げるのか、確かなことは誰にも分かりませんでした。蓋を開けてみれば、彼は競馬史上最高の種牡馬の1頭でした。チャーリーは『馬が死んでから少なくとも10年経つまでは何も言うべきではない』と言っていました」。
何事も時間が経てばわかることである。
By Evan Hammonds
(1ドル=約110円)
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[bloodhorse.com 2019年11月26日「What's Going On Here―Unlikely Japan」]