ニューヨークで芝の三冠競走が誕生(アメリカ)【開催・運営】
NYRA(ニューヨーク競馬協会)は、ベルモントダービー招待S(芝G1)とベルモントオークス招待S(芝G1)の創設が好評であることを受け、次のステップとして2組の芝の三冠競走を設立する。
間もなく発表される2019年NYRAステークス競走日程(サラトガ競馬場・ベルモントパーク秋開催)には、3歳限定の芝ステークス競走2レースと、3歳牝馬限定の芝ステークス競走2レースが新たに含まれる。これらのレースはベルモントダービーとベルモントオークスと一緒に、牡馬の芝三冠競走"ターフトリニティ(Turf Trinity)"、牝馬の芝三冠競走"ターフティアラ(Turf Tiara)"として施行される。
牡馬の芝三冠競走"ターフトリニティ"は、ダート三冠競走、すなわちケンタッキーダービー(G1)・プリークネスS(G1)・ベルモントS(G1)と同じ距離の3レースで構成され、以下の日程で施行される。総賞金はいずれも100万ドル(約1億1,000万円)。
7月6日(土)ベルモントダービー(約2000m ベルモントパーク競馬場)
8月4日(日)サラトガダービー(約1900m サラトガ競馬場)
9月7日(土)ジョッキークラブダービー(約2400m ベルモントパーク競馬場)
NYRAの競馬運営担当上席副理事長のマーティン・パンザ(Martin Panza)氏は声明においてこう述べている。「"ターフトリニティ"は米国ダート三冠競走を手本に考案されました。賞金総額300万ドル(約3億3,000万円)のこのシリーズは米国ダート三冠競走と重複しないスケジュールで開催されます。また世界中の3歳馬に、夏の終わりに向けて競い合う機会を提供するでしょう」。
牝馬の芝三冠競走"トリプルティアラ"は次の日程で施行される。総賞金はそれぞれ75万ドル(約8,250万円)。
7月6日(土)ベルモントオークス(約2000m ベルモントパーク競馬場)
8月2日(金)サラトガオークス(約1900m サラトガ競馬場)
9月7日(土)ジョッキークラブオークス(約2200m ベルモントパーク競馬場)
パンザ氏は、「"ターフトリニティ"の対称となるのが、賞金総額225万ドル(約2億4,750万円)の"ターフティアラ"です。将来ターフで活躍する馬を浮上させる明確なレースパターンを提供し、スピード・万能性・持久力をはかるテストとして機能するでしょう」と述べた。
これらの高額賞金の芝ステークス競走を新設することで、ベルモントダービーの総賞金は120万ドル(約1億3,200万円)から100万ドル(約1億1,000万円)に、ベルモントオークスの総賞金は100万ドル(約1億1,000万円)から75万ドル(約8,250万円)に引き下げられる。
現在のところ、これらのシリーズの三冠達成馬へのボーナスは計画されていない。
これらの新設4レースは3年目の開催まではグレード競走として格付けられない。しかし、ジョッキークラブダービーは"勝てば出走できる(Win and You're In)"条件のブリーダーズカップチャレンジ競走の1つになると見込まれる。このレースの優勝馬は、BCターフ(G1)の出走権を獲得できる。
米国ジャドモントファームの場長であるギャレット・オールーク(Garrett O'Rourke)氏は、新設の芝ステークス競走と芝三冠競走はホースマンと生産者に恩恵をもたらすだろうと述べた。そしてこう語った。
「ニューヨーク競馬の大きな補強となるでしょう。最近では多くのことが、調教師がターフ馬を増やす励みとなっています。このような重要な芝ステークス競走が創設されれば、ターフ馬を生産する目的ができ、米国の生産者が再びターフ馬に投資することを後押しするでしょう」。
「米国の生産者は30年前にターフ馬に投資していました。それをやめた理由は、米国の調教師がターフ馬を出走させられるステークス競走があまりないと考えたからです。新設の芝ステークス競走がニューヨークの美しい競馬場で施行されれば、トップクラスのターフ馬が出走するようになるでしょう。そして生産者はさらに優秀なターフ馬を生産するでしょう」。
オールーク氏は新設の芝ステークス競走はベルモントダービーやベルモントオークスと同様に、欧州の調教師から支持されると確信しており、こう語った。
「彼らはお金のあるところに現れるので、当然欧州からトップクラスの馬を連れて来るでしょう。ニューヨークへは飛行機ですぐに来られます。エイダン・オブライエン調教師がそれを証明しています。人々は馬の海外遠征を怖がらなくなりました。オブライエン調教師は、ボブ・バファート調教師がサンタアニタからベルモントに来るぐらい簡単に、アイルランドのバリードイルからニューヨークに遠征してきます」。
「9月のレースは、凱旋門賞(G1 10月第1日曜日に施行)による影響があるかもしれませんが、オブライエン調教師のようなトレーナーは各部門でトップホースを5頭ずつ手掛けているので、ナンバー1の馬を凱旋門賞に向かわせても、ナンバー2の馬をニューヨークに送り込めます。ナンバー2でもかなりの能力があるでしょうから、その馬はブリーダーズカップに戻ってくるかもしれません」。
NYRAは、これらの芝三冠競走の全米テレビ放映も調整している。ジョッキークラブダービー&オークス、ベルモントダービー&オークスはNBCで放映される。サラトガダービーはFOXスポーツ1、サラトガオークスはFOXスポーツ2で放映される。
さらにベルモントパーク秋開催が開幕する週末の9月7日には、総賞金30万ドル(約3,300万円)のグランプリ米国ジョッキークラブ招待S(ダート 約2400m)が施行される。このレースは昨年9月30日に施行されていた総賞金20万ドルのテンペランスヒル招待S(ダート 約2600m)が転換されたものである。
9月7日は『ジョッキークラブダービー競馬フェスティバル(Jockey Club Derby Racing Festival)』と呼ばれるだろう。
NYRAは2月13日、引き続き3歳馬の芝・ダート競走の強化に努める一方で、ホースマンがあらゆるレベルの馬を出走させられるように幅広く多様な選択肢の提供に尽力していくと述べた。
パンザ氏はこう付言した。「米国競馬は芝競走に歩み寄りつつあります。これら2組の芝の三冠競走は芝の競走馬・種牡馬・繁殖牝馬の質を強化するはずです。これが牧場・生産者・セリ会社・馬主を支援することとなり、ファンが新たな競馬イベントを楽しむのであれば、私たちの努力は報われるでしょう。NYRAは3歳ダート競走日程の強化にも引き続き懸命に努力し、ダート・芝それぞれで最高のレースを提供します。競馬産業から格別の支援があり、NYRAはこれに関わった人々の理解と協力に感謝したいと思います」。
By Bob Ehalt
(1ドル=約110円)
[bloodhorse.com 2019年2月14日「NYRA Unveils Turf Triple Series for 3YOs, 3YO Fillies」]