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2019年04月20日  - No.4 - 3

2019年ドバイワールドカップデーで注目された3頭の血統(国際)【生産】


 ドバイワールドカップ(G1):サンダースノーの偉大な母イースタンジョイ

 イースタンジョイ(Eastern Joy)は、サンダースノー(Thunder Snow)が3月30日(土)のドバイワールドカップ(G1 メイダン競馬場)で歴史的勝利を達成したことで、優良繁殖牝馬としての地位をさらに高めた。ダーレーの自家生産馬サンダースノーは、グロンコウスキー(Gronkowski)との叩き合いを勇敢に制し、史上初のドバイワールドカップ連勝馬となったのだ。

 サンダースノーはヘルメット(Helmet)が南北両半球で送り出したステークス勝馬10頭のうちの1頭であり、唯一のG1優勝馬である。豪州産のヘルメット(父エクシードアンドエクセル)は、豪州でG1を3勝した後に種牡馬入りした。2013年~2018年にダーラムホールスタッド(イギリス)とキルダンガンスタッド(アイルランド)にシャトルされ、今シーズンはドイツのファーホフ牧場(Gestut Fahrhof)にて種付料9,000ユーロ(約113万円)で供用されている。

 サンダースノーは、イースタンジョイ(父ドバイデスティネーション)の最高傑作である。

 驚くべきことに、イースタンジョイのこれまでデビューを果たしている3歳以上の仔5頭すべてがブラックタイプ勝馬である。

 初仔イーティマル(Ihtimal 父シャマルダル)はサイード・ビン・スルール調教師に管理され、2013年にメイヒルS(G2)とスウィートソレラS(G3)で優勝した。また2014年にはUAE1000ギニー(L)とUAEオークス(G3)を制して、メイダンの馬場にかなりの適性があることを見せた。とりわけUAEオークスでは10馬身ぶっちぎって優勝したのだ。

 イーティマルに続くイースタンジョイの仔は以下のとおりである。

  第2仔 オールウェイズスマイル(Always Smile 父ケープクロス)

      [リステッド勝馬。2016年サンチャリオットS(G1)2着]

  第3仔 ファーストヴィクトリー(First Victory 父テオフィロ)

      [2016年オーソーシャープS(G3)優勝馬]

  第4仔 サンダースノー

  第5仔 ウィンターライトニング(Winter Lightning 父シャマルダル)

      [イーティマルの全妹。2018年UAE1000ギニー優勝馬]

  第6仔 イースタンワールド(Eastern World 父ドバウィ) 2歳牡駒

  第7仔 1歳牝駒(父ドバウィ)

 ダーレーの自家生産馬イースタンジョイは、アンリ-アレックス・パンタール(Henri-Alex Pantall)調教師の管理の下、ヴィシー競馬場でのデビュー戦を勝利で飾り、その後の3レースはすべて3着内に入った。同じくモハメド殿下が所有してパンタール調教師が手掛けた2007年仏オークス(G1 ディアヌ賞)優勝馬ウエストウィンド(West Wind 父マキャベリアン)の半妹である。この姉妹の母レッドスリッパーズ(Red Slippers 父ヌレイエフ)は1992年サンチャリオットSを制している。

 モハメド殿下は1991年、レッドスリッパーズが2歳でアスコットの未勝利戦を圧倒的な強さで制したのを目にして、ロバート・サングスター氏から同馬を購買した。その2年後、殿下はレッドスリッパーズの半妹(父ストームバード)を同じ関係者から購買して、当時駆け出しだったゴドルフィンで調教した。そしてこの牝駒は、英オークス(G1)と愛ダービー(G1)を制覇する名牝バランシーヌ(Balanchine)に成長する。バランシーヌはゴドルフィンの初めてのG1優勝馬であり、その25年後にチームの看板となる傑出馬サンダースノーは同馬の近親にあたる。


 ドバイターフ(G1):誰の目もアーモンドアイに釘付け

 2018年の日本年度代表馬アーモンドアイは、ドバイターフにおいて先頭でゴールを駆け抜け、そのきわだった卓越性を観客に見せつけた。このレースでは、ノーザンファームの生産馬が1~2着を占め、日本生産界の優れた一面が世界に示された。

 2018年ジャパンカップ(G1)優勝馬アーモンドアイは、初めての海外遠征だったにもかかわらず、2017年ドバイターフ優勝牝馬ヴィヴロスを2着に退けた。ヴィヴロスはG1を制したディープインパクト産駒39頭のうちの1頭だが、アーモンドアイは2013年の日本の年度代表馬ロードカナロアの初年度産駒である。いずれの種牡馬も社台スタリオンステーションで供用されている。

 ロードカナロア(父キングカメハメハ)は2014年、オルフェーヴルやノヴェリストから成る強力な新種牡馬群の一頭となった。現役時代には安田隆行調教師の管理のもと、数々のG1競走を不屈の精神で戦った。3歳ではG3までしか勝てなかったが、4歳ではスプリンターズS(G1)と香港スプリント(G1)を優勝するまでに成長した。

 5歳シーズンには、さらに圧倒的な力を見せるようになり、高松宮記念(G1)、安田記念(G1)、そしてスプリンターズSと香港スプリントの2勝目を含む5勝を挙げた。

 この優秀なスプリンターには、供用初年度から優良牝馬の種付予約が集まった。そのリストには2011年コーフィールドカップ(G1)優勝馬サザンスピード(Southern Speed)や、自らもG1馬で数々の重賞勝馬を送り出しているトゥザヴィクトリーが名を連ねていた。フサイチパンドラ(父サンデーサイレンス)を母とするアーモンドアイは、ロードカナロアの初年度産駒187頭の中でも最も注目を浴びているが、他にも2018年マイルチャンピオンシップ(G1)優勝馬ステルヴィオなどが活躍している。

 また、ホープフルS(G1)優勝馬サートゥルナーリアと京王杯2歳S(G2)優勝馬ファンタジストを筆頭にセカンドクロップからも活躍馬が出ている[サートゥルナーリアは4月14日に皐月賞(G1)優勝]。そのおかげで、ロードカナロアは2歳種牡馬ランキングでディープインパクトに次ぐ2位となっている。

 ロードカナロアの今シーズンの種付料は、2018年度の800万円から引上げられ1,500万円となった。

 2018年の牝馬三冠達成馬でもあるアーモンドアイは、ロードカナロアが父キングカメハメハと同様に牝馬のサンデーサイレンスの血統を発揮させられることを示す初期の例である。サイアーライン(牡系)が重視される競馬産業において、このような類似性は疑いようもなく重要である。

 ロードカナロアが送り出したステークス勝馬10頭のうち8頭は、母がサンデーサイレンスの産駒あるいは孫であり、その中にはアーモンドアイのほかにステルヴィオとファンタジストが含まれている。

 アーモンドアイは、2006年エリザベス女王杯(G1 京都2200m)で繰上げ優勝した母フサイチパンドラのスタミナを受け継いでいるようだ(訳注:2006年エリザベス女王杯で1位入線したカワカミプリンセスは審議の末、12着に降着となった)。フサイチパンドラは中団でレースを進めた2007年ジャパンカップでも、優勝馬アドマイヤムーンにそれほど差のない9着に健闘した。

 フサイチパンドラはセックスアピール(Sex Appeal)の孫である。セックスアピールは、エルグランセニョール(1984年欧州年度代表馬)やトライマイベスト(1977年デューハーストS優勝馬)の母として有名であり、その母ベストインショー(Best In Show)の子孫は現在でも強い勢力を保っている。

 1986年カムリーS(G3)優勝馬ベストインショーの子孫は、世界を網羅している。過去20年間だけでもシティスケープ(Cityscape)、ピーピングフォーン(Peeping Fawn)、スピニングワールド(Spinning World)、ラグストゥリッチズ(Rags To Riches)、名種牡馬リダウツチョイスなどがこの牝系に属している。


 UAEダービー(G2):プリュクパルフェの若き父ポイントオブエントリーは優秀なターフ馬

 米国からの参戦馬プリュクパルフェ(Plus Que Parfait ブレンダン・ウォルシュ厩舎)はUAEダービーで優勝し、若い種牡馬ポイントオブエントリー(Point Of Entry)にとって6頭目のステークス勝馬となった。

 ポイントオブエントリーが2014年にケンタッキーのアデナスプリングス牧場(Adena Springs Farm)で種牡馬入りしたときは、その父ダイナフォーマー(2012年没)の後継種牡馬になるだろうとの期待が高かった。

 フィップス家(Phipps family)の生産馬ポイントオブエントリーは現役時代、驚異的なターフ馬であった。シャグ・マゴーイ(Shug McGaughey)調教師に管理されて18戦9勝を果たした。優勝したレースには、トレジャービーチ(Treasure Beach)を破ったジョーハーシュターフクラシック招待S(G1)やスウォードダンサー招待S(G1)、ガルフストリームパークターフH(G1)、マンハッタンH(G1)が含まれる。

 現在、ポイントオブエントリーがダイナフォーマーの牡系の健全性を保つのに貢献しているという評価は固まりつつある。なぜなら、初年度産駒のアナライズイット(Analyze It)が2018年ベルモントダービー(G1)と2018年セクレタリアトS(G1)で2着となりG3優勝を達成したことで、種牡馬として見事な滑り出しを見せているからだ。アナライズイットがポイントオブエントリーの初年度産駒76頭の中でも最高傑作であった一方で、プリュクパルフェはセカンドクロップ60頭の中で最も成功している。

 またあまり目立たないものの、ポイントオブエントリーはジョン・ゴスデン調教師が手掛けるリステッド競走3着内馬コレリ(Corelli)や、昨年夏のコークでのデビュー戦で勝馬となったダケッツグローブ(Duckett's Grove)などが活躍していることで、欧州でも実績を残している。

 同馬は今シーズン、アデナスプリングス牧場(オーナー:フランク・ストロナック氏)において種付料2万ドル(約220万円)で供用されている。

 キャロウェイステーブル(Calloway Stables, LLC ケンタッキー州)により生産されたプリュクパルフェは実のところ、ポイントオブエントリーとオーサムアゲインの牝馬の相性の良さを示している。この組合せの仔馬は5頭出ているが、その中にはベネズエラのG2勝馬カチャトーラ(Cacciatora)がいる(訳注:オーサムアゲインはアデナスプリングス牧場の看板種牡馬)。

 プリュクパルフェはベルヴェデラ(Belvedera)の第2仔である。ベルヴェデラは、カナディアンオークス優勝馬タッチダイアル(Touch Dial)の半妹で、2017年キーンランド9月セールでオラクルブラッドストック社(Oracle Bloodstock)により13万5,000ドル(約1,485万円)で購買された。ベルヴェデラは現在1歳のコンペティティブエッジ牝駒も送り出している。

By Nancy Sexton

(1ユーロ=約125円、1ドル=約110円)

[Racing Post 2019年3月30日「Godolphin's true blue hen, the best of Japan and the heir to Dynaformer」]


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