障害競走では女性騎手のほうが多くの払戻金をもたらす（イギリス）【その他】

　過去5年間のうち4年において、障害競走で女性騎手の馬券ばかりを買っていた賭事客は、男性騎手の馬券しか買わなかった賭事客よりも、実入りが良かっただろう。

　これは本紙（レーシングポスト紙）のデータが明らかにした結論であり、リヴァプール大学が導き出した"賭事客が女性障害騎手を過小評価している"と暗示する研究結果を裏付けている。

　障害競走の過去5シーズンにおいて2016/17年シーズン以外は、女性騎手のほうが男性騎手よりも馬券購入額に対する払戻金が多かったことを、本紙のデータは示している。

　リヴァプール大学の過去18年間の騎乗160万回を対象とした統計分析は、次の2つの勝率が同じことを示していた。

・単勝オッズ10倍の女性騎手が騎乗した障害競走馬

・単勝オッズ9倍で男性騎手が騎乗した障害競走馬

　2019年チェルトナムフェスティバル（3月12日～15日）の全レースのうち14.3％を女性騎手が制した状況において、これはとりわけ注目すべき研究結果である。同フェスティバルでは、女性騎手は全出走馬の9.2％にしか騎乗していなかったにもかかわらず、レイチェル・ブラックモア（Rachael Blackmore）騎手が2勝、ブライオニー・フロスト（Bryony Frost）騎手とリジー・ケリー（Lizzie Kelly）騎手がそれぞれ1勝を果たした。

　この研究論文の著者であるヴァネッサ・キャッシュモア（Vanessa Cashmore）氏はこう語った。「この統計分析は、"女性障害騎手の実際の資質"と"女性騎手の能力への一般的な認識"が大きくかけ離れていることを示唆しているようです。賭事客は女性騎手を常に過小評価しています。この研究結果は、女性騎手の能力についての否定的な世評を示しているのかもしれませんが、障害競走で女性騎手が乗る馬の馬券を買うことに妙味があるということを確かにするかもしれません」。

　「この研究結果が、女性騎手に対する態度を変化させる新たな一歩を私たちに踏み出させ、より重要なことですが、行動の変化を引き起す原動力になることを望んでいます」。

　統計分析の結果では、女性騎手は勝つ確率が五分五分の馬に乗るときは52％の割合で優勝することが見込まれる。

　BHA（英国競馬統轄機構）のダイバーシティ＆インクルージョン（多様性の受容）担当部長のローズ・グリッセル（Rose Grissell）氏はこう語った。「賭事客が女性障害騎手をどのように見ているかについて知るのは興味深いことです」。

　「女性騎手の平地競走と障害競走における地位向上は、"競馬における多様性促進グループ（Diversity in Racing Steering Group）"にとっての主な優先事項として合意されています。それには、どのようにすれば意識的および非意識的態度を変えられるかについての研究が含まれています」。

　「昨年発表されたヴァネッサのこの分野の研究により、私たちは女性騎手が能力面で男性騎手と同等であることを把握していました」。

　「どの段階で障壁を取り除くことができ、支援を強化できるかを理解するために、女性騎手のキャリア全体を検討したいと思っています。女性騎手の騎乗機会は増えつつある一方で、まだ道のりは長いです」。

　「たとえば、現在、各競馬場の女性専用施設の監査は女性騎手たちが自ら実施しています。そこから、私たちは競馬場のどこを改良できるのかを把握していきたいと思っています」。

　"競馬界の女性（Women in Racing 競馬界の女性の認知度を高め上級職への採用を奨励することを目的に2009年に設立されたグループ）"のタルラ・ルイス（Tallulah Lewis）会長はこう語った。「競走馬に騎乗するためには、高度なスキルと精神力が要求されます。それらはいずれの性別でも高められる能力です。そして、最終的にはチャンスが重要な要素となります」。

　「ヴァネッサの研究は、もし女性騎手が男性騎手と同じように機会を与えられるならば、競馬界の別部門で見られるのと同じように、彼女たちは騎手として健闘することができることをはっきりさせました」。

　この研究は、"競馬界の女性"の奨学金と競馬財団（Racing Foundation）によって支援されている。

By Richard Birch

　（関連記事）海外競馬情報 2018年No.2「女性騎手は能力面で男性騎手と同等であるという研究結果（イギリス）」

［Racing Post 2019年6月27日「Female jockeys offer better value over jumps, reveals major study」］