三冠馬ジャスティファイ、薬物陽性の報道に関係者がコメント(アメリカ)【開催・運営】
ニューヨークタイムズ紙は、三冠馬ジャスティファイが2018年サンタアニタダービー(G1)優勝後の競走後薬物検査に引っ掛かっていたことを暴露する衝撃的な記事を発表した。数人の関係者は9月12日、薬物検査での陽性反応は汚染によって引き起されたと反論した。
9月11日夜にニューヨークタイムズ紙のウェブサイト(NYTimes.com)に掲載された記事は、ジャスティファイがサンタアニタダービー優勝後に禁止薬物スコポラミン(scopolamine)の陽性反応を示したと伝えている。同紙が入手した書類をもとに執筆されたこの記事は、カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board:CHRB)のこの陽性反応への対応を疑問視している。(1)検査結果の確認に1ヵ月以上かかったこと、(2)CHRBが裁定委員会を実施しなかったこと、(3)CHRBが密室の会議においてこの事案についての決定を下したこと、が指摘されている。
この記事はボブ・バファート調教師がコメントを出すのを拒んだとしているが、殿堂入りトレーナーは9月12日、陽性反応は汚染によるものだと述べている。
同調教師は、「どの管理馬にもその薬物を使用したことはありません。それがどこから、どのように紛れ込んだのかも分かりません」と述べた。
CHRBは2016年11月14日、寝藁の中にヨウシュチョウセンアサガオ(訳注:熱帯アメリカ原産のナス科植物。幻覚・昏睡症状を起こす麻薬が採れる)が見つかったと警告を発した。この雑草にはスコポラミンが含まれている可能性があり、それによる汚染が原因で競走後薬物検査で陽性反応が出るかもしれないからだ。
CHRBの医療担当理事であるリック・アーサー(Rick Arthur)博士は当時、「おそらく危機をもたらすようなものではありませんが、この雑草には禁止薬物スコポラミンが含まれているかもしれません」と述べていた。ニューヨークタイムズ紙の記事では、CHRBがホースマンたちに警告したこの出来事についても触れられていた。
記事によると、その当時スコポラミンの陽性反応を示した馬は失格処分になっていたが、CHRBはジャスティファイの陽性反応の4ヵ月後に密室で行われた役員会議でこの事案に決着をつけた。CHRBのリック・ベデカー(Rick Baedeker)専務理事はこの記事において、汚染の可能性があるためにCHRBは慎重に行動したと述べ、ヨウシュチョウセンアサガオは不注意で餌に混入しうると語っている。
バファート調教師は、ジャスティファイがサンタアニタダービーの後にスコポラミンの陽性反応を示したのは、汚染が原因だったと確信しており、こう語った。
「スタッフに気を付けるように常に呼びかけていますが、ヨウシュチョウセンアサガオを見つけることは、干し草の山の中から1本の針を見つけるようなものです。敷料として寝藁も扱っているので、特に大変です。運良くそれまで紛れていませんでしたが、他の厩舎で紛れていたのは目にしていました。いつか起こるのではないかとやきもきするだけで、私たちは無防備です。汚染を防ぐのは至難の業です」。
「一般の人々は、汚染はどうしても起こってしまうことだと知るべきです。スコポラミンのようなものを馬に故意に与えるような者はいないというのは常識です。そのようなことをするはずがありません。それが起こってしまったときは"本当ですか?そんなのはばかげています。"というような反応しかできません。私はダービーで勝つために集中していたので、この事案は弁護士に任せていました」。
ウィンスターファーム(WinStar Farm)の会長・CEO・レーシングマネージャーを務めるエリオット・ウォルデン(Elliott Walden)氏もこの記事に反論した。ウィンスターファームは、チャイナホースクラブ(China Horse Club)、ヘッドオブプレーンズパートナーズ社(Head of Plains Partners)、スターライトレーシング社(Starlight Racing)と共同でジャスティファイを所有していた。同ファームは2018年4月中旬に競走後薬物検査に引っ掛かったことを知らされ、その事案を弁護士に任せたが、その後はCHRBから一切連絡がなかったと、ウォルデン氏は述べた。
同氏はこう語った。「非常に残念なことです。このことが今になって取り沙汰されるのもおかしなことです。カリフォルニアではスコポラミンはよく知られた汚染物質です。他のトップトレーナーたちはこの問題に対処してきました。ボブやジャスティファイ、そして私たちの評判に関わることなので残念です。ボブは偉大なホースマンであり、彼がこの上なく評価されていることがすべてを物語っています」。
ニューヨークタイムズ紙の記事において、2011年から2018年までケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission)のために薬物検査所を運営していたリック・サムズ(Rick Sams)博士は、スコポラミンは気管支拡張剤の役割を果たし、馬の気道を確保し、心拍数を最適化し、馬の能力を高めると語っている。また、ジャスティファイから見つかったスコポラミンの量、300 ng/mLは過剰であると述べた。
9月12日、バファート調教師の弁護士であるレキシントンのクレイグ・ロバートソン(Craig Robertson III)氏は、ニューヨークタイムズ紙のジョー・ドレイプ(Joe Drape)記者に宛てた書簡の写しを本誌(ブラッドホース誌)に送付した。同弁護士はこの書簡において記事に関する懸念を提起したが、法的措置を取ることには言及していない。そして、ジャスティファイにスコポラミンを故意に投与したことはなく、投与されていたとすれば、それは理不尽で常識に反すると述べている。
ロバートソン弁護士は、「これまで馬にスコポラミンを投与した調教師はいないでしょう。この薬物には抑制作用があり、馬の能力を向上させるどころか低下させる可能性があります。スコポラミンが能力を向上させる属性をもつことを示唆するには、科学的根拠が全くありません」と語り、CHRBのこの事案への対応を称賛している。
バファート調教師とウォルデン氏は、競走後薬物検査で陽性反応が出たことはジャスティファイの名誉を傷つけるものではないと述べている。また、ジャスティファイの三冠競走でのパフォーマンス、そしてその後の薬物検査をクリアしたことは、サンタアニタでの陽性反応が汚染によるものであるということを一層裏付けるものであると述べている。
ウォルデン氏はこう語った。「陽性反応が出た後に、ジャスティファイは3つの州で出走しました。すべての薬物検査をクリアし、三冠達成を果たしました。その成績が何よりの証拠です」。
バファート調教師は、ジャスティファイの偉業がすべてを物語っていると述べ、こう語った。「このようなことが起きて大変残念です。馬、関係者、そして私にとってフェアではありません。とても残念です。ジャスティファイはその前後にも薬物検査を受けていますので、このことは彼の偉業を貶めるものではないと考えています。彼は断トツの一番人気だったので常に厳しく監視されていました」。
By Lenny Shulman, Eric Mitchell and Frank Angst
[bloodhorse.com 2019年9月12日「Connections React to Story on Justify Failing Drug Test」]