2019年の全米の賞金額は増加も発売金は減少(アメリカ)【開催・運営】
2019年は競馬界で様々な問題が生じたが、場所によっては賞金額増加でホースマンが楽観的になっただろう。しかし、1月6日にエクイベース社(Equibase)が発表した『2019年米国サラブレッド競馬界の経済指標』には、間違いなく多くの懸念事項がみられる。
ケンタッキー州、とりわけチャーチルダウンズ競馬場における賞金の大幅増加が寄与し、全米の賞金額は2019年に前年比4.5%増加して11億6,792万1,650ドル(約1,284億7,138万円)となった。2018年にも賞金額は3.5%増加したので2年連続で成長したことになる。
チャーチルダウンズ競馬場の賞金額は2,100万ドル(約23億1,000万円)近く増加した。チャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)がケンタッキー州ルイビルで運営するヒストリカルレーシング(訳注:スロットマシンに似たゲーム機。配当金を確定する際に過去のレースを利用する)施設の好調な成績が大きな後押しとなった。ケンタッキー州でヒストリカルレーシングも運営する4つの競馬場、チャーチルダウンズ、エリスパーク、キーンランド、ケンタッキーダウンズにおいて、賞金額は合計で2,571万6,560ドル(約28億2,882万円)増加して1億408万1,494ドル(約114億4,896万円)となった。2019年の全米の賞金は合計で5,020万ドル(約55億2,200万円)増加したので、4場の増加分はこの半分を占める。
ほかに賞金額の大きな伸びを見せたのは、この数年好調なオークローンパーク競馬場である。同競馬場はこの数年間、最初にヒストリカルレーシングにより賞金額を増やし、その後マインドスポーツゲーム機(games of skill)を追加し、2019年にはカジノゲームの運営を開始した。アーカンソー州ホットスプリングスにあるこの競馬場は2019年に競馬開催日数を2日増やし、賞金額は前年比18%増の517万ドル(約5億6,870万円)以上となった。
2019 年の全米の賞金額は、世界金融危機前に11億8,000万ドル(約1,298億円)以上もの賞金を提供していた2007年以降で最高となった。その一方で、2007 年と比較して2019年の競走数は42%減少している。そのため、2019年の1レース当たりの平均賞金額は2007年を40.2%上回る3万2,256ドル(約355万円)となっている。
*発売金には世界中で行われている米国の競走を対象とした共同賭事を含む。
2019年は賞金額が増加した一方で、全米の発売金は前年と比較して2%減少し110億3,879万395ドル(1兆2,142億6,694万円)となった。この減少は、サンタアニタパーク競馬場で生じた予後不良事故の頻発により同場での競馬開催は3月8日から3月29日の再開まで中止が余儀なくされ、馬券発売に影響が及んだことによるものだろう。
この2%の減少は、4年連続(2015年~2018年)していた発売金の増加をストップさせた。2018年は高額配当の的中馬券に関する源泉徴収と申告のルールの変更が初めて通年で適用された年で、その発売金は前年比3.3%増となっていたが、2019年にはそのルール変更による恩恵はなかった。
エクイベース社のデータによれば、サンタアニタの問題が生じた2019年上半期の全米の発売金は3.23%減少した。下半期にはこの減少幅は0.66%まで縮まったものの、前年比でプラスとなることはなかった。
また、2019年の競馬開催日数は前年比0.16%減の4,425日(-7日)となり、競走数は1%減の3万6,207レースとなった。
競走数が減少したにもかかわらず、1レース当たりの平均出走頭数は1.56%減少し、7.53頭となった。
By Frank Angst
(1ドル=約110円)
[bloodhorse.com 2020年1月6日「Purses Up, Pari-Mutuel Handle Down in 2019」]