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2020年02月21日  - No.2 - 1

チャーチルダウンズ競馬場、ダービーに向けて発馬機を導入(アメリカ)【開催・運営】


 チャーチルダウンズ競馬場は2月3日、豪州を拠点とするステリラインレーシング社(Steriline Racing)と契約したことを発表した。同社が設計・製造する特注の20頭用発馬機は、5月2日のケンタッキーダービー(G1)で初めて披露される。

 新たな発馬機はケンタッキーダービーでのみ使用される。同レースではこれまで、14頭用発馬機に補助的な6頭用発馬機を組み合わせて使用していたが、主要発馬機と補助発馬機の間に"隔たり"があったために取り換えられる。14頭用発馬機はダービー以外の全レースで引き続き使用される。

 ステリラインレーシング社は、競馬場の設備(発馬機・柵・ゴール板・パトロールタワーなど)の設計・製造・設置・メンテナンスを専門としている。同社は豪州では大半のレーシングクラブに競馬場の設備を提供している。そして、アジア・欧州・中東・米国など世界50ヵ国以上にそれらを輸出している。

 チャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.:CDI)は、「4月前半に納品予定の20頭用発馬機の幅は65フィート(約19.8m)です。¼マイル標識のあるケンタッキーダービーの発走地点のコース幅は120フィート(約36.6m)なので、難なく収まるでしょう」と述べた。

 2005年にジャコモ、2018年にジャスティファイでダービーを制したマイク・スミス騎手は、「ダービーにとって良いことだと思います。主要発馬機(1~14番ゲート)と補助発馬機(15~20番ゲート)の間には大きな隔たりがあるので、1~2番ゲートだけでなく、大外からの発走も少し不利です。今までの発馬機では20番ゲートから発走する馬は内側に向かって走ることになり、1番ゲートから発走する馬は真っ直ぐ走るために内側の柵にぶつからないようにしなければなりません。そろそろ改善が必要なときだと考えていました。CDIは良い決断をしました。レースは不公平というわけではありませんが、いくつかのゲートは勝つのが困難でした。確実に良くなるはずです」。

 チャーチルダウンズ競馬場では、1930年から発馬機が使用されており、1941年に電動式の14頭用発馬機が導入された。1942年に補助的な6頭用発馬機が初めて使用され、過去22年間を含む計54回のケンタッキーダービーで使われている。同競馬場のスコット・ジョーダン(Scott Jordan)発走委員がボタンを押すと、ゲートはいっせいに開く。

 CDIの競走担当専務理事であるマイク・ジーグラー(Mike Ziegler)氏はこう語った。「特注の20頭用発馬機を導入することで、ケンタッキーダービーの出走馬全頭が公平に発走し、人馬の安全性が強化されることを確信しています。ステリラインレーシング社と一緒に取り組むことにワクワクしています」。

 20頭が収容される発馬機を支持していたマーク・カス(Mark Casse)調教師は、この発馬機が導入されることによってダービーが一層安全で公平になると思うと述べた。同調教師は2016年最優秀2歳牡馬で2017年ダービー4着馬のクラシックエンパイア(Classic Empire)を管理した。同馬はダービーのとき、14頭用発馬機の一番端の14番ゲートから発走し、6頭用発馬機から出て内に寄ってきた馬に思い切りぶつかった。

 カス調教師はこう語った。「発馬機のせいでクラシックエンパイアはダービーで勝てませんでした。ジュリアン・ルパルー騎手はもう少しで落馬するところでした。ほとんどの人が実感していないと思うのですが、もし肩を並べていっせいに発走すれば、多少押し合うことがあっても並んで走って行くでしょう。しかし、現在の14番ゲートと15番ゲートのように15フィート(約4.6m)も離れたところから発走すれば、一方の馬が近寄ってきて体当たりすれば、思いきり圧力が掛かります。発走場所が離れていると、馬はその隔たりを埋めようとします。それゆえ、15~20番ゲートから発走した馬はすべて横の馬につられて内側に走って行こうとするので、それらの馬は全て不利になってしまいます」。

 2015年にアメリカンファラオ、2018年にジャスティファイを三冠達成に導き、ダービーを5勝しているボブ・バファート調教師はこう述べた。「新しい発馬機が待ち遠しいです。これまでは、1番~2番ゲートは内柵から十分な距離がないためとても不利でした。馬は内柵のほうに向かって走ってしまいます」。

 「発馬機が米国式で幅が十分に広いことを望んでいます。馬はうまく収まれば、閉所恐怖症になりません。ドバイのようなところでは、狭い欧州式の発馬機があり、馬がかろうじて収まり、人が入るスペースはほとんどありません。そのため、新しい発馬機が馬を扱う人々にとっても安全なものになることを望んでいます」。

 スミス騎手は、20頭用の発馬機の導入により、1番ゲート発走の馬がコースを直進できるようになり、内柵にぶつかるのを避けて右に寄れることもなくなるだろうと述べた。

 「1番ゲート発走の馬がスペースを求めて寄れてくるので、2~3番ゲート発走の馬にとって厳しいものになっていました。勢いを無くしたときに、外側からも他の馬が伸びてくるため、V字のような並びになってしまいます。発走が良くなければ、勝つチャンスはなくなってしまいます」。

 スミス騎手は大外からの発走についても次のような考えを持っている。

 「あまりスピードのない馬で抜け出すことができなければ、馬はペースを失い馬群に飲まれてしまいます。つまり、20番ゲートから発走して下を向いているうちに、他馬に大きく引き離されてしまい、即座に2~3頭分内に入らなければならないと考えてしまいます。もちろんそれはロスとなり、レース終盤に大きな影響を及ぼします」。

 「新しい発馬機はそのような状態を改善するでしょう。このニュースにとても喜んでいます。20歳若ければ、正直なところ、これまでと同じことが続けられただろうと思います。しかし、私にはあと数年しか残されていません。今年から今後数年間にわたって、新しい発馬機を使えるのを楽しみにしています」。

 チャーチルダウンズ競馬場の発馬機には全て、競馬産業の安全製品の開発会社であるベストパッドTM社(Best PadTM)が製造した高品質の発泡スチロールが装着されている。人馬を怪我から守るこの滑らかな緩衝剤は、発馬機の金属部分すべてに付けられている。

 ステリラインレーシング社のCEOジョン・ファージャー(John Fargher)氏はこう語った。「チャーチルダウンズ競馬場のチームの協力を得て、素晴らしい発馬機の開発ができました。彼らは弊社が開発した大型の発馬機を見るために、全ての競馬場が弊社のゲートを使っている英国に赴きました。ヨーク競馬場には弊社が製造した22頭用発馬機があり、その信頼性と確実性を見るのにちょうど良い場所でした。弊社は米国で最も有名なレースに参加できることにワクワクしています」。

 ステリラインレーシング社の競馬設備は多くの主要競馬国で使われている。それにはハッピーバレー競馬場&シャティン競馬場(香港ジョッキークラブ)、フレミントンパーク競馬場(ヴィクトリアレーシングクラブ)、ランドウィック競馬場(オーストリアンターフクラブ)、メイダン競馬場(ドバイ)、アスコット競馬場(英国)が含まれる。


By Christine Oser

[bloodhorse.com 2020年2月3日「Churchill to Debut 20-Stall Gate for Kentucky Derby」]


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