競馬場入場者数が4年連続で減少(イギリス)【開催・運営】
英国の競馬場の入場者数減少は、2016年に始まり2019年まで4年連続している。英国競馬界はこれに歯止めを掛けようと取り組んでいる。2019年には入場者数が2015年より50万人以上も下回り、1日当たりの平均入場者数は今世紀最少となった。
2018年に、1日当たりの平均入場者数は、悪天候に見舞われた2013年以来初めて4,000人を下回る3,924人となった(1,471開催日)。その年は、大寒波から夏の記録破りの酷暑にいたる異常気象、サッカーW杯でのイングランド代表の準決勝進出が、入場者数減少の原因とされていた。
しかし2019年はさらに入場者数が減少し、1日当たりの平均入場者数は3,898人にまで落ち込んだ(1,443開催日)。
2019年の全体的な入場者数減少の理由としては、多くの開催日が中止となったことが挙げられる。2月には、馬インフルエンザに罹っている馬が確認されたため、英国の競馬開催は6日間中止された。
英国における年間入場者数は2015年には613万人だったが、2016年に599万人、2017年に595万人、2018年に577万人と減少し続け、2019年には562万人となった。
競馬賭事賦課公社(Levy Board)が昨年8月に発表した数字は、2019年上半期の入場者数が前年同期比で2%増加したことを示していた。それは復活祭の週末開催に10万人以上が駆けつけたことが寄与したものであり、チェルトナムフェスティバルや英ダービー開催(2日間)の入場者数も増加していた。
2019年下半期のイボア開催(ヨーク競馬場)、ラドブロークストロフィー開催(ニューベリ競馬場)なども多くの観客を集めた。しかしこれらの反動として、10月~12月に施行されたチェルトナム11月開催の初日やドンカスター競馬場のヴァーテムフューチュリティトロフィー開催などで入場者数は減少した。
グレートブリティッシュレーシング社(GBR 英国競馬界の宣伝・マーケティングを行う団体)のCEOロッド・ストリート(Rod Street)氏はこう語った。「競馬界は難題に直面しています。入場者数の下降傾向を現実的に捉えなければならず、すぐに状況が変わることを期待してはなりません」。
「第1段階として、競馬の地位を確固たるものとし、入場者数の減少傾向に歯止めを掛けなければなりません。第2段階は競馬の成長を促すことです。しかし、それは一夜にしてできるものではなく、人々が競馬に一層親しむようになるには時間が掛かります」。
ストリート氏は入場者数減少についてこう説明した。「競馬の市場規模は総じて変わっていません。10年~20年間の傾向を注意深く観察すれば、その市場規模は拡大しておらず、他の多くのスポーツやレジャーとの競争が激しくなっています。とりわけ夏に、以前よりも多くの選択肢があります」。
「新たなファンを十分に引き付けていないことも問題です。入手したデータはすべて、認知度が問題ではないという事実を示しています。ターゲットとする層は競馬というものを認知していますが、毎年のレジャー活動の1つだとは見なしていません。競馬が提供するスペクタクルには何も問題はありません。なぜなら、英国で2番目に観客を引き付けるスポーツとして、競馬は明らかに数百万人にとって魅力的なものであると評価されているからです。私たちは新たなファンを引き付けることに重点を置くべきです」。
競馬場協会(RCA)のブランド・顧客体験担当マネージャーであるポール・スウェイン(Paul Swain)氏はこう語った。「入場者数の減少傾向には留意していますが、数字以外で起こっていることに勇気づけられており、その傾向を覆すためにできることはいくつかあります。RCAが GBRとともに実施した"18歳未満キャンペーン"は成功しており、より全国的なキャンペーンを検討しています」。
「私たちは落ち込んではいません。減少傾向にはイライラさせられますが、サッカーの次に観客を集めるスポーツとして市場シェアを維持し続けています。それに562万人はかなりの入場者数です」。
RCAのCEOデヴィッド・アームストロング(David Armstrong)氏は声明において、現在の状況をより前向きに評価しようとしており、こう述べている。「英国競馬界は2019年、多くの難題に遭遇しました。それにもかかわらず、またもや英国において2番目に観客を集めるスポーツとなりました。私たちは競馬場に560万人以上の入場者を迎えたことを誇りに思うべきです」。By Stuart Riley
[Racing Post 2020年1月29日「Attendances for British racing fall for fourth year in a row」]