海外競馬ニュース 軽種馬登録ニュース 海外競馬情報 統計データベース 海外競馬場・日程 世界の競馬および生産統計 海外競走登録 申請書類
血統書サービス 引退名馬
twitter FB
TOPページ > 海外競馬情報 > 競馬ファン層の若返りを図る方法(アメリカ)【その他】
海外競馬情報
2020年02月21日  - No.2 - 4

競馬ファン層の若返りを図る方法(アメリカ)【その他】


 競馬界の最大の課題は「競馬というスポーツをどのように広めていくか」であると、私たちは近年実感してきた。資金が潤沢にないことを考えれば、宣伝キャンペーンは全国展開どころか地域展開さえも難しい。現在この課題をどのように克服するかが問われている。

 気を揉んでいるのは競馬界だけではない。大学スポーツも入場者数減少の憂き目に遭っている。野球のメジャーリーグはここ数年、ファンの球場離れに苦しんでいる。また人々の消費活動においては、流行や習慣の変化により、有名ブランドは市場シェアを失いつつある。

 1月前半に発行されたウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、2019年の米国でのワインの売上げも落ち込んでいる。

 アルコール飲料のリサーチ会社IWSRのCOOブランディ・ランド(Brandy Rand)氏は、「低アルコール・ノンアルコール飲料が人気であり、一般消費者の健康志向が高まっていることで、ワインは厳しい状況にあります」と述べた。競馬界も長らく厳しい状況にある。

 WSJの記事には気になる言葉がある。

 「カリフォルニアワイン協会は、近年ワインの消費は低迷しているが、ミレニアル世代(1981〜98年生まれ)がベビーブーマー世代(1946〜64年生まれ)のように年齢を重ねるにつれて一層多くのワインを飲み始めることを"期待する"と述べた」。

 この"期待する"という言葉こそが、ワイン生産者を心底怖がらせるキーワードとなるかもしれない。

 どの産業も、そのうち習慣が変化することを"期待"すべきではない。競馬産業はそのことを数十年前に学んだ。

 競馬界には、次世代の馬好きを熱心に育てるグループが存在する。ケンタッキー中部に拠点を置く"ホースカントリー(Horse Country 牧場・馬診療所・馬アトラクション事業者が構成する連盟)"の任務は、ツアー体験を通じて牧場や診療所のファンを増やすというものである。

 ホースカントリーがツアーチケット購入者を調査したところ、購入者の平均年齢は40歳~55歳で、女性が多かった。しかし、彼らは1人あたり平均で2.5枚のチケットを購入していたので、大半のツアーに自分よりも若い人々を連れてきていた可能性が高い。

 ホースカントリーの専務理事アンヌ・サバティノ・ハーディー(Anne Sabatino Hardy)氏はこう語った。「チケット購入者の調査を始めてから、参加者の年齢層は着実に低くなっています。現在ではあらゆる年齢層が見られますが、私たちはより若い市場をターゲットにしています。ファンの新陳代謝を考えれば、若年層は常に焦点を合わせる対象となっています」。

 「これらの若者を引き付ける方法は、トイホース(馬のフィギュア)のプロモーションイベント"ブレイヤーフェスト(Breyerfest ケンタッキーホースパークで開催)"など、馬に親しめる催しに力を入れることです。またこのようなイベントに合わせてツアーを組むことで、チケット購入者の年齢層と、彼らが連れてくる孫からティーンエイジャーまでの若年層を対象にすることができます」。

 「中学生を牧場に連れ出そうとするいくつかの教育プログラムと連携してきました。ミレニアル世代を引き付けようとする中で、私たちがとりわけ力を入れていることは、独自の宣伝方法を活用して特定のマーケットにアピールすることです。私たちのソーシャルメディアプログラムは、彼らとコミュニケーションを取ることを目的にしています」。

 ハーディー氏はかなり深く分析しているようだ。「旅行業界では、旅行には5段階あると言われています。第1段階は"ひらめき"であり、その後"調査"、"予約"、"体験"、そして"シェア"が続きます。人々はソーシャルメディアやオンラインでのやりとりが刺激となって"ひらめき"を得て、"シェア"するようになります。私たちは「検索結果ページの上部に表示されるテキスト広告」あるいは「様々なサイトやブログに掲載出来る画像広告」に投資しようとしており、そこに広く拡散されるようなコンテンツを掲載したいと思っています。それにより私たちに見返りがもたらされると考えています」。

 ホースカントリーの分析では、この方法は効果を発揮するように思われる。

 ハーディー氏はこう報告している。「ホースカントリーの躍進を示すのに打ってつけのデータがあります。ここ2年ほどで最も重要なデータの1つは、チケット1枚20ドル(約2,200円)のツアー参加者が、今や様々な方法で競走馬や繁殖牝馬の共同馬主になって100万ドル(約1億1,000万円)を投資しているということです。最初はわずか20ドルのツアーに参加した人から、とてつもない額の投資を引き出したことになります」。

 私たちは"競馬はユニークなスポーツ/ビジネス/イベントだ"と考えがちだ。でも、それは違う。イベントの全国的な宣伝キャンペーンは、固定電話のように時代遅れのものとなりつつある。近頃は、"草の根の取組み"や"個人的な人脈"のような至近距離での宣伝活動が重視されている。多くの人々が、家族・友人を通じて、またホースカントリーのツアーのような体験を機に、この素晴らしい競馬というスポーツに熱中している。

 競馬界は課題を克服できるはずだ。競馬というスポーツへの愛をシェアしよう。

By Evan Hammonds

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2020年1月22日「What's Going on Here―Digital Toolbox」

上に戻る