新型コロナウイルス感染拡大への各国競馬界の対応(国際)【開催・運営】
新型コロナウイルスは世界の隅々に蔓延し、あらゆる国で競馬中止が余儀なくされている。現段階(4月6日)における各国の競馬の状況と再開に向けた計画について報告する。
イギリス(3月18日から競馬中止)
無観客競馬を開始したわずか2日後、チェルトナムフェスティバル(3月10日~13日)の翌週に、英国競馬は3月18日から4月末まで中止となった。5月1日に競馬が再開されると見込んで、国内の様々な競馬拠点でレースを見られるようにする計画を立てている。
競馬開催は1ヵ所につき1週間実施されることになる。開催に参加するすべての関係者は競馬場内のホテルに滞在しなければならない。必要な施設が揃っているニューマーケット競馬場がこの計画の候補地になるだろうが、協議は続いている。
シーズン閉幕前に中止となった障害競走は、少なくとも7月1日まで再開されない。障害競走を施行できなかった競馬場が再び収入を得るために8月と9月に追加的な開催日程を定める予定である。
アイルランド(3月24日から競馬中止)
ホースレーシングアイルランド(Horse Racing Ireland)は3月13日、無観客競馬に移行することを決定した。この日、英国のチェルトナム競馬場では満員の観客の前でチェルトナムゴールドカップが開催されていた。アイルランドの競馬は3月25日から全面中止となり、少なくとも4月19日まで再開されない。
これは、アイルランドの障害競走の二大祭典であるアイリッシュグランドナショナル(フェアリーハウス競馬場)とパンチェスタウンフェスティバルが中止になることを意味している。ただしアイリッシュグランドナショナルについては、秋に日程を移動して開催する計画がある。
欧州(数ヵ国で競馬中止)
フランスでは3月17日に約1ヵ月間の競馬中止が余儀なくされた。少なくとも4月15日まで競馬は再開されない。ドイツもその直後に同じ措置を取った。欧州の新型コロナウイルス感染拡大の"激震地"とされるイタリア、そしてベルギーは3月15日に競馬を中止した。
スウェーデン(無観客競馬を継続中)
スウェーデンは、新型コロナウイルスとの闘いにおいて外出禁止令を出していない欧州で唯一の国である。同国は"国民が適切な行動を取ることを信じる"というアプローチを取ってきたが、4月5日に対策を強化することを示唆した。競馬は無観客で継続されている。
米国(いくつかの競馬場で無観客競馬を継続中)
米国の多くの競馬場は競馬中止を決断したが、政府によって強制されているわけではない。フォナーパーク、ガルフストリームパーク、ロスアラミトス(クオーターホース)、レミントンパーク(クオーターホース)、タンパベイダウンズ、ウィルロジャーズなどの競馬場が無観客競馬を継続中である。
米国では競馬が州ごとに統括されている。例えばガルフストリーム競馬場とタンパベイ競馬場は、フロリダ州からの助言の下で競馬を継続している。一方で、サンタアニタパーク競馬場は3月27日にカリフォルニア州の助言を受けて競馬を中止にした。
南アフリカ(3月24日から競馬中止)
南アフリカでは無観客競馬が実施されていたが、政府が外出禁止令を出したことで競馬は次の通知があるまで中止を余儀なくされている。
UAE(3月22日から競馬中止)
3月28日のドバイワールドカップデー(メイダン競馬場)を開催する方向で、無観客競馬が実施されていた。しかし賞金総額3,000万ポンド(約40億5,000万円)の誉れ高い競馬の祭典は、6日前に中止が決定された。
香港(無観客競馬を継続中)
ハッピーバレー競馬場とシャティン競馬場で引き続き定期的に無観客競馬が実施されている。シャティン競馬場では、最強マイラーのビューティージェネレーションが4月5日のチェアマンズトロフィー(G2)で優勝した。4月26日に高額賞金のクイーンエリザベス2世S(G1)、チェアマンズスプリントプライズ(G1)、チャンピオンズマイル(G1)が開催される予定。
日本(無観客競馬を継続中)
日本は早くから無観客競馬を実施した国である。2月27日にその決定が下され、その後観客を迎えることなしに競馬が続けられている。
報道によれば、日本政府は4月7日に緊急事態宣言を発出するようだ。これにより、各都道府県に移動制限・外出自粛・休校などを要請する権限が与えられる。これが競馬にどのような影響をもたらすかは見守るしかない。競馬続行の可否については週ごとに評価されている。
シンガポール(4月4日から競馬中止)
無観客競馬が継続されていたが、シンガポール政府が4月3日に一層厳しい外出禁止令を出したことを受け、その翌日に5月4日まで競馬が中止されることが発表された。
豪州(大半の州で無観客競馬を継続中)
依然として無観客競馬が継続されている。競馬界は政府と保健機関が定めたガイドラインを厳守している。競馬は州ごとに統括されており、州法に従っている。競馬は3月20日に一週間中止になったが、3月27日に無観客で再開された。
豪州で最初に競馬を中止したのはタスマニア州である。同州は4月2日に競馬を4週間中止することを発表した。
メルボルンカップを開催するヴィクトリア州は無観客競馬を実施しているが、同州では4月3日に一層厳しい措置が取られることになった。
ニューサウスウェールズ州は騎手の分離を実施し、騎手と調教師の州間移動を禁止するとともに、馬が州に到着する方法を制限するなど、一層厳格な措置を発表した。
この措置の下、3月23日午後5時の時点でNSW州を拠点としない騎手は、同州の競馬場で騎乗することは認められない。この措置はシドニーオータムレーシングフェスティバルの真っただ中に発表されたので、かなりの反響があった。
これらの州以外では、競馬は現在のところ無観客で継続されている。
By Tom Park
(1ポンド=約135円)
[Racing Post 2020年4月6日「Where is racing still happening and when could countries start up again?」]