英国の競走馬のDNA型検査はウェザビーズ科学研究所で実施(イギリス)【生産】
アニマル・ヘルス・トラスト(Animal Health Trust: AHT)、サラブレッド生産者協会(Thoroughbred Breeders' Association:TBA)、ウェザビーズ社(Weatherbys)は協議の結果、残りの2020年出産シーズンにおいて英国産のサラブレッドのDNA型検査をすべてウェザビーズ科学研究所(Weatherbys Scientific's laboratoryアイルランド)に移行する決定を下した。
生産者にとって確実なDNA型検査の実施が重要な時期を迎えているが、AHTがそのサービスの提供を保証できなくなっていることから、この決定はなされた。
4月と5月は最も多くのDNAサンプルが提出される時期である。DNA型検査に関する決定が遅れれば、サラブレッドの血統登録・パスポート発行・個体識別・売買に深刻な悪影響を及ぼすかもしれない。
ただし、このDNA型検査の移行については年末に見直される予定である。
見直し段階では、AHTとTBAの協議と並行して、多くの要素が考察されるだろう。
DNA型検査の手順の変更により、生産者はAHTではなくウェザビーズ社のウェリングボローの事務所にDNAサンプルを送ることになる。その作業は獣医師により実施されるように勧告されている。
DNAサンプルをウェザビーズ科学研究所に確実に発送する責任は、ウェザビーズ社が担うことになる。
TBAのジュリアン・リッチモンド-ワトソン(Julian Richmond-Watson)会長はこう語った。「TBAは長年AHTとともに取り組んできました。しかし、この数週間、AHTがDNA型検査を続けられるかどうかが不明瞭になっています」。
「英国の生産者にとって、仔馬の血統登録とパスポート発行は遅延なく行われる必要があります。健康・福祉・トレーサビリティ(追跡可能性)のために、できるだけ早くサンプルを採取してマイクロチップを埋め込まなければならない早生まれの仔馬がたくさんいます。生産者はこの作業のために獣医師と連絡を取り合わなければなりません」。
「TBAは、ウェザビーズ社と取り組むことで、同社を介して研究所にサンプルを送ることができることを嬉しく思います。この研究所はすでに採取されているサンプルから検査を始めますが、新たなサンプルを受け付ける準備もできています」。
「サンプルの提出先となるこの研究所の公正性と能力を確信しています。このプロセスを容易なものにしてくれたウェザビーズ社に感謝したいと思います」。
ウェザビーズ科学研究所は1985年から馬の親子判定サービスを提供している。1998年に血液型検査に代わってDNA技術が導入されたことにより、新たに牛・羊・犬・猫など他の動物の血統も検証できるようになった。
同研究所は今や、馬・牛・犬・羊の親子判定を年間5万件以上行っている。これには、アイルランド産の全てのサラブレッドも含まれる。
国際動物遺伝学会(International Society for Animal Genetics:ISAG)はウェザビーズ科学研究所を、血統検証において世界トップクラスの研究所として認めており、馬・牛・犬・ヒトコブラクダ種に関しては最上位であるランク1のステータスを与えている。
ウェザビーズ社のCEOラッセル・フェリス(Russell Ferris)氏は、こう語った。「AHTと弊社は長年にわたり関係を築いてきました。AHTは弊社とサラブレッド生産者に、血統登録のために傑出したDNA型検査サービスを提供していました」。
「しかし私たちの最優先事項は、サラブレッド生産者のニーズに対応し、仔馬の誕生と血統登録のために1年のうちで一番の繁忙期を迎えている彼らのために役立つことです」。
「DNA型検査は血統登録において中心的な作業です。すでにあらゆることが不明瞭となっているこの時期において、その作業に信頼が持てることは極めて重要です」。
By Bloodstock World Staff
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[Racing Post 2020年4月22日「British thoroughbred DNA samples to be tested by Weatherbys in Ireland」]