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海外競馬情報
2020年06月22日  - No.6 - 2

追い詰められたイタリア競馬、再生への希望はあるか?(イタリア)【開催・運営】


 新型コロナウイルスは、イタリアに有り余るほどの被害を及ぼしている。一方で、そのイタリアにはG1競走は1つもない。

 イタリア競馬は5月後半に再開された。イタリアの窮地に立たされた競馬関係者にとって、それ自体は安堵をもたらしたが、狙うべきG1競走のないシーズンが再び始まったことを意味していた。

 2013年にG1競走は7レースあったが、その数は年々減っていった。リディアテシオ賞がG1からG2に格下げとなりG1競走が1つもなくなった2019年は、長くて由緒あるイタリア競馬史において最も侘しいシーズンとなった。

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 その状況は2020年も続いている。イタリアは現在、ヨーロッパ・パターン競走委員会(European Pattern Committee:EPC)において投票権を持たない準会員という情けない立場にある。伊ダービー(2009年にG1からG2に格下げ)にも懸念がある。EPCの"格下げの可能性のある競走リスト"に入っており、そのG2のステータスが脅威に晒されているからだ。伊ダービーは、1938年に伝説的なネアルコ(Nearco)が制し、1981年にグリントオブゴールド(Glint Of Gold)、1993年にホワイトマズル、2002年にラクティ(Rakti)が制している。

 現在、伊ダービーは7月12日の開催が予定されている(当初予定は5月24日)。それに先立ち、6月14日に伊1000ギニー(G3)と伊2000ギニー(G3)が施行され(当初予定は4月26日)、7月5日に伊オークス(G2)が施行される予定(当初予定は6月21日)。

 どの競馬開催国においても、新型コロナウイルスの感染拡大により、今年の競馬シーズンは異例なものとなっている。EPCが2021年パターン競走プログラムの決定に向けて2020年シーズンを振り返るときは、イタリアのためにも全ての要素を考慮に入れてほしいものだ。一方、欧州の枠組みにおける立場については、イタリアはまだ堪えなければならない痛みがあるかもしれない。それに対してできることは、他の国から手を差し伸べてもらうことであろう。

 英国やアイルランド、そしてフランスやドイツの競馬関係者の支援が必要となるだろう。彼らの馬は、重賞競走の平均レーティングを上げるために必ず助けになってくれる。

 賞金支払いの遅延については、過去2~3年間には問題になっていないようだ。一方、全体的に見れば賞金額は今世紀初頭から、賭事売上げと同様に崩壊している。それでもイタリアの主要競走の賞金はこのような状況において、意外にも持ちこたえてきた。

 農林政策省がUNIRE(Union Nazionale Incremento Razze Equine)から競馬統括権を引き継いだ前年の2010年には、イタリアのG1・7レースの優勝賞金は11万9,469ポンド(約1,613万円)であった。2019年には、共和国大統領賞とミラノ大賞については優勝賞金が大幅に減少したが、他の競走では減少幅はさほど大きくない。また、リディアテシオ賞の優勝賞金は増加している。

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 理解できることだが、大幅に減少したのはイタリアの生産者数である。2011年に800人以上いた生産者は年々減少し、2019年に馬を出走させた生産者は約380人だった。

 このような状況で生産事業を営むレギスタッド(Le Gi Stud)のオーナーで、イタリアのサラブレッド生産者協会の会長であるマッシモ・パリ(Massimo Parri)氏は、イタリアの競馬界と生産界が以前の勢力・数・敬意を回復することに希望を無くしているわけではない。しかし、イタリアが抱えているトラブルには手っ取り早い解決策はなく、新型コロナウイルスのことを考えればなおさらだと認めている。また、海外の生産者・調教師・騎手からの長期的なサポートは不可欠であり、それはフェデリコ・テシオ、リボー、フランキー・デットーリを生んだこの国の多くの競馬関係者により大いに感謝されるだろうと考える。

伊サラブレッド生産者協会のマッシモ・パリ会長へのインタビュー

 レーシングポスト紙(以下:Q):イタリア競馬が農林政策省によって統括されるようになってから、どれぐらい経ちますか?生産界・競馬界の健全性にどのような影響がありましたか?

 マッシモ・パリ氏(以下:A):農林政策省は2011年から、競馬界・生産界を管理しています。あいにく、行政による管理にはお役所的・非効率・遅滞しがちという性質があり、それが発展を阻止し、情熱的に従事していた多くの人々は競馬から離れていきました。

Q:サラブレッド競馬・トロッター競馬へ政府が支出した資金はどれぐらいですか?

A:2019年のサラブレッド競馬とトロッター競馬で提供された賞金の総額は約9,000万ユーロ(約108億円)でした。そのうち約50%は競馬場に提供されました。その大半はトレーニングセンターも併設するサラブレッド競馬場、すなわちミラノとローマです。残りの約50%のうち60%はトロッター競馬、40%はサラブレッド競馬に支出されました。

Q:競馬運営を競馬統括機関に移行する可能性はどれぐらいあり、それにはどれぐらいの時間を要するでしょうか?

A:サラブレッド産業に関わる誰もが、競馬運営を農林政策省の外部の組織に任せる改革を望んでいます。我々の計画に沿って一層迅速に競馬産業を統率できる新たな経営陣を迎えること、そして業界全体の将来と再生を計画できることは極めて重要です。不運にも、この3年間にイタリアの内閣は3回も交代しているので、最近はそれを実行に移せませんでした。

Q:イタリアにはどれほどの大規模もしくは小規模の生産者がいますか?またそれは10年前と比較してどのように変化しましたか?

A:2019年にはサラブレッド生産者が約380人いました。それには大規模な生産者も年に馬を1頭出走させるだけの小規模な生産者も含まれています。2011年からのデータは以下のとおりです。

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Q:種牡馬頭数・繁殖牝馬頭数・生産頭数はどれほどになっていますか?過去数年間において減少していますか?

A:イタリアの生産者による生産頭数は年々減少しています。2007年には約2,100頭でしたが、2019年には約650頭となりました。そのうち約150頭は、生産者はイタリア人ですが、イタリア国外で生まれています。2019年の種牡馬頭数は32頭であり、この3年間は安定しています。繁殖牝馬頭数は当然ながら生産頭数と同様に減少し、2019年は約800頭でした。

一方、イタリアの生産者は国際的なG1馬を生産し続けています。たとえば、2016年香港マイル優勝馬ビューティーオンリー(Beauty Only)や2018年にG1・2勝を果たしたシーオブクラス(Sea Of Class)などです。

Q:サラブレッドのセリはどれぐらいの頻度で開催されていて、どのような成績をあげていますか?

A:セリに関しては、イタリアではSGA(Societa Gestione Aste"セリ管理会社")が"セレクトセール"を開催しています。SGAは100%生産者協会に所有されています。SGAは1歳セールを年に1回、トレーニングセール(上場馬は20~30頭)を年に2回開催しています。

1歳セールは約150頭(イタリアで集められる最多の頭数)が上場されます。2015年には、総売上額が過去最低の90万ユーロ(約1億800万円)となりましたが、2019年にかけて、総売上額は毎年増加しています。2019年の総売上額は250万ユーロ(約3億円)近くに上りました。

Q:賞金額の減少とG1競走の消滅は、生産者や馬主にどのような影響を与えていますか?

A:賞金額減少の影響により、多くの人々が廃業したり海外に移転したりしています。G1競走の消滅により、イタリア産馬の価値は低下してしまい、サラブレッド産業に不利益がもたらされています。大物馬主と調教師が馬を連れてイタリアに戻ってきて、イタリアのレースの価値を引き上げてくれることを望んでいます。

Q:イタリアは現在、ヨーロッパ・パターン競走委員会(EPC)で投票権がありません。それについてどのように感じていますか?

A:イタリアでは誰もがこの決定について不満を感じています。イタリアのサラブレッド産業がペナルティを課され続けるのであれば、私たちが前進して状況を改善するのはより難しくなるでしょう。万が一イタリアのサラブレッド産業が終焉を迎えるとするならば、欧州の他の競馬開催国は残念に思うでしょう。

Q:イタリアにとって、とりわけ英国やアイルランドなど海外の競馬関係者がイタリアの重賞競走に馬を出走させることで、イタリアを支援してくれることはどれほど重要なものですか?

A:馬主や調教師ができるだけイタリアに来てくれることは極めて重要です。

Q:最後に、イタリアの競馬関係者・競馬ファン・賭事客の意気込みはどのようなものですか?状況が改善されるという確信はありますか?

A:サラブレッド産業に関わる誰もがこの状況を懸念しています。しかし、私たちが持つ情熱・歴史・文化が、私たちを現在の状況から脱却させ、前進させてくれることを望んでいます。

(1ポンド=約135円、1ユーロ=約120円)

[Racing Post 2020年6月8日「Another year another Group 1 blank for beleaguered Italian racing professionals」]


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