米国競馬界、競馬公正安全法案の提出を支持(アメリカ)【開催・運営】
上院多数党院内総務を務めるミッチ・マコーネル議員は8月31日、ケンタッキー州レキシントンの歴史あるキーンランドにおいて、超党派による競馬公正安全法案(Horseracing Integrity and Safety Act:HISA)の提出を計画していると発表した。この法案は、ドーピング・薬物の規制、競馬場での安全プログラムなどに全米一律の安全基準を求めることで、サラブレッド競走馬と騎手の健康に重点的に取り組む。新たな安全基準プログラムを実施・管理するために、独立した自主規制機関に権限を持たせる。
今回のマコーネル議員の発表には、ブリーダーズカップ協会(Breeders' Cup Ltd.)、チャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)、キーンランド協会(Keeneland Association)、米国ジョッキークラブ(The Jockey Club)のメンバーが参加した。また、アンディ・バー下院議員(共和党 ケンタッキー州)も出席してこの法案を支持した。早速、HISAにサラブレッド競馬産業から幅広い支持が集まっている。
米国ジョッキークラブのスチュアート・S・ジャニー(Stuart S. Janney III)会長は、「競走馬の健康・安全を向上させることは、米国ジョッキークラブの長年の最優先課題です。競馬公正安全法案(HISA)は、米国競馬の公正・安全を高めてスポーツとしての競馬を向上させる一律で効果的な薬物・安全に関する規制を策定するうえで、きわめて重要です」と語った。
当局は、米国反ドーピング機関(United States Anti-Doping Agency: USADA)に、薬物規制プログラムを監督する任務を与える。USADAは、米国のオリンピック選手たちの反ドーピングプログラムを管理している。USADAのCEOトラヴィス・T・タイガート(Travis T. Tygart)氏は、「サラブレッド競馬界にとって歴史的な瞬間です。この革新的な超党派による法案は、競走馬の健康と安全を守り、クリーンな出走馬に公平な競走の場を提供します」と述べた。
競馬公正連合(Coalition for Horse Racing Integrity)のショウン・スミリー(Shawn Smeallie)専務理事はこう語った。「マコーネル議員が法案を提出することに感謝します。この法案が、競馬におけるドーピング・薬物に全米一律の基準をもたらすことで、私たちの任務は遂行できるようになるでしょう。より包括的になった法案HISAの成立を推し進めるうえで、最初の法案の共同提案者、すなわちギリブランド上院議員(民主党 ニューヨーク州)、マクサリー上院議員(共和党 アリゾナ州)バー下院議員(共和党 ケンタッキー州)、トンコ議員(民主党 ニューヨーク州)と一緒に取り組むことを楽しみにしています」。
他にこの法案を支持する声明を出している機関・個人は以下のとおりである。今後さらに増えると見込まれる。
アントニー・ベック(Antony Beck)氏、アーサー・B・ハンコック(Arthur B. Hancock)氏、バリー・アーウィン(Barry Irwin)氏、テッド・カスター(Ted Kuster)氏、ジャネット・エリオット(Janet Elliot)調教師、マーク・カス(Mark Casse)調教師、デルマーサラブレッドクラブ(Del Mar Thoroughbred Club)、シャグ・マゴーイ(Shug McGaughey)調教師、NYRA(ニューヨーク競馬協会)、ダグ・オニール(Doug O'Neill)調教師、トッド・プレッチャー(Todd Pletcher)調教師、デール・ローマンズ(Dale Romans)調教師、ロッド&リドル馬診療所(Rood and Riddle Equine Hospital)、TOBA(サラブレッド馬主・生産者協会)、USADA、ウォーター・ヘイ・オーツ連合(Water Hay Oats Alliance)。
このリストは適時更新される。
By Coalition for Horse Racing Integrity Press Release
北中米競馬委員会協会、競馬公正安全法案の提出に希望を抱く
北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International:ARCI)は、9月2日、「ミッチ・マコーネル上院議員が提出する法案が、競馬産業を団結させて馬をより効果的に守ることに希望を抱いています」と述べた。
ARCIは、法案についてそれ以上のコメントを控えた。法案の詳細をまだ見ていないこと、そして法案が成立した場合にそれをどのように適用・実施するかについてマコーネル議員のスタッフから相談を受けていないことを、その理由としている。
ARCIは、現在のトンコ・バー提案(Tonko-Barr proposal)にこれまで反対してきた。その理由の一部は、その提案が、州の競馬統括機関の管轄下にまだ入らない若馬に関して存在する規制の欠陥に対処していなかったためである。
ARCIは、その欠陥を無くし、一定の薬物(ビスフォスフォネートなど)の使用を管理するために未規制馬を取り締まるルールを設けることを要求してきた。また、薬物投与を正当化するのに必要な診断を含む完全な診断記録の電子申請、それらの診断記録の調査、危険にさらされている可能性があり一層の監視が必要な馬をより正確に特定するための競技外適格検査を求めている。
ARCIのエド・マーティン(Ed Martin)理事長は、以前議会の委員会で行った証言を繰り返した。「馬そして最終的に競馬というスポーツを守るのに必要な最重要改革は、政府またはNGO(非政府組織)のどちらかが、競走馬全頭に対して出生時から施されてきたケアや治療を規制管理することです」。
「規制管理を行う機関に競走馬が登録されることを求めない提案は、競走馬・スポーツとしての競馬・馬主の投資を守ることができないでしょう」。
ARCIは昨年、三大血統登録機関(米国ジョッキークラブ、アメリカ・クオーターホース協会、米国トロッティング協会)に対し、NGO血統登録機関(これら三機関)を基盤として規制管理を行うことが最も迅速で効果的な方法になると通知した。全ての競馬管轄区が、馬が適切な血統登録機関に登録されて出走資格を得ることを求めているからである。
2019年8月、ARCIの理事会はこの要求を進めるために、米国ジョッキークラブのリーダーたちと正式な会合を行った
ARCIは今年1月に議会で行った証言でこの必要性を強調し、民間主導が実現しなかった場合に進める法案にこれを含むように促した。
マーティン理事長は、「私たちは提案される法案の詳細を心待ちにし、希望を抱き続けています。各州と築いたパートナーシップをもとに事を進めることは、不測の法的な難題が生じるのを回避するのに不可欠です。そのようなことが生じれば、最終的に法案が可決された場合に実施に移すのが数年間遅れます」と付言した。
By ARCI Press Release
IFHA、競馬公正安全法案の提出を支持
私はIFHA(国際競馬統括機関連盟)の会長として、ミッチ・マコーネル議員が米国上院議会に競馬公正安全法案を提出する計画を熱烈に歓迎します。
IFHAは、国際スポーツであるサラブレッド競馬を代表する機関です。サラブレッド競走を施行する世界中の競馬統括機関がIFHAのメンバーを務めています。さらに、IFHAは競馬公正連合(CHRI)の一員です。IFHAの主要任務は、競走馬と騎手の健康・福祉を増進し、最良の実践方法(ベストプラクティス)を広めることです。これら2つの中心的方針にとって鍵になるのは、強硬な反ドーピング政策です。競馬公正安全法案がこの目標を達成すると信じています。
米国は国際スポーツである競馬において、常に重要な役割を果たしてきました。この法案は米国競馬を、国際的に認められている最高の規制政策にかなり近づけます。これは、米国が競馬の安全確保においてリーダーであり続けるための基盤として役立つだけでなく、国内外で競馬という商品の経済的な継続性を確かなものにするでしょう。
個人的にはマコーネル議員のリーダーシップを称賛し、ブリーダーズカップ協会(BCL)と米国ジョッキークラブ(TJC)などの共同努力に心から感謝したいと思います。BCLとTJCはいずれもIFHA執行協議会(Executive Council)のメンバーです。
今まさに、一般の人々の競馬への信頼を確かなものにすることが重要な時期です。この法案は、米国にとって非常に重要です。また、競馬界がこれまで以上に連帯していくなかで、競馬公正安全法案は国際競馬に関わるすべての人々にとって不可欠で意義深いものになります。
IFHA会長 ルイ・ロマネ
[bloodhorse.com 2020年9月1日「Horseracing Integrity Act Sees Widespread Support」、9月2日「ARCI Hopeful on New Racing Bill Proposed by McConnell」、9月8日「IFHA Supports Horseracing Integrity and Safety Act」]