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海外競馬情報
2021年02月19日  - No.2 - 3

馬介在療法がPTSD治療に効果的であるという研究結果(アメリカ)【その他】


 馬介在療法に参加した心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者を対象とする8週間の調査が行われた。この調査により、悲惨な出来事を経験または目撃した人々に生じうる疾患を治療するにあたり馬介在療法プログラムは効果的であるという証拠が、神経生物学の分野で発見された。

 コロンビア大学アーヴィング・メディカルセンターとニューヨーク州精神医学研究所の研究者たちは、「マンノウォー・プロジェクト」の後援で、科学雑誌ヒューマン・ブレイン・マッピングに新たな研究論文を発表した。論文タイトルは、『心的外傷後ストレス障害(PTSD)への馬介在療法(EAT)後の神経変化:長期マルチモーダルイメージング研究(Neural changes following equine-assisted therapy (EAT) for post-traumatic stress disorder: A longitudinal multimodal imaging study)』である。

 「マンノウォー・プロジェクト」はPTSDを患った退役軍人の治療のための馬介在療法の有効性を検証する初めての大学主導の調査研究である。2015年に、慈善家・実業家・大使であるアール・I・マック氏により創設された。同氏自身も退役軍人であり、長年サラブレッドを所有・生産してきた。同氏は退役軍人が直面する精神衛生危機に懸念を抱き、馬介在療法を実施する色々なグループから聞いた逸話的な情報に関心を持ちつつも、それらを裏付けるハードサイエンスがまだないことに着目し、このプロジェクトを創設した。

 マック氏は、科学的結果が発表されたのは2回目であり、3回目が計画されていると述べた。そして、自身は戦争に召喚されたことは一度もなかったが、戦争を目の当たりにした退役軍人に対していつも思い入れがあったと語った。

 「この研究結果にとても満足しています。支援してきた退役軍人のことも、馬も大事に思っています。それに、これによりPTSDに苦しむ子供など他の多くの人々を支援できるかもしれません」。

 恐怖や感情を処理する鍵となる脳領域に変化がもたらされるのを調べるために、最先端テクノロジーが駆使された。プルーデンス・フィッシャー(Prudence Fisher)博士とともにコロンビアチームを率いたユヴァル・ネリア(Yuval Neria)博士は、MRIデータが注目に値する結果を示したと述べた。

 そして、「この研究結果はこれまでに類のない証拠を提供します。その証拠とは、馬介在療法が臨床的に有望ということだけでなく、患者が"心的外傷や戦争による苦難にもかかわらず人生を楽しむ能力"を高めるのにつながるような脳における変化をもたらすかもしれないということです。その点でこの治療法は非常にユニークなものです」と語った。

 この研究によると、「ベースライン、治療前の尾状核(脳の大脳基底核に位置する神経核)の結合性が臨床的改善と有意に相関しており、報酬反応性の強化がEAT後のPTSD患者に見られる改善の根拠となりうることを示唆している。PTSDは異種性のある障害であり、社会的反応・感情的反応に影響を及ぼし得る低下した報酬反応性に関係する症状を含むと見られている。報酬回路を改善することは、この複雑な障害を治療するための強化された新たなメソッドを見つけ出す大きな最初のステップとなるかもしれない」。

 臨床神経生物学の助教授でありこの論文の第一著者であるXi Zhu博士はこう語った。「このプロジェクトは、PTSDに苦しむ退役軍人・一般人を治療する馬介在療法の有効性に関して、神経生物学的な証拠を初めて提供しています」。

 ネリア博士(コロンビア大学精神医学科教授)と共同で研究を主導したフィッシャー博士(同大学同学科準教授)は、この研究により馬介在治療がPTSDを患った人々の人生の質を向上させる可能性を持つことが見込めると述べた。

 そしてこう続けた。「この研究結果は、PTSDに悩む数十万人もの米国人にとって非常に興味深いものです。そして、馬介在治療が臨床的に有望であるだけでなく、"心的外傷や悲惨な戦争を経験した患者に人生を楽しむ能力を高めうる脳の変化をもたらす"というこれまでに類のなかった証拠を提供します。これにより馬介在療法はユニークなものになります」。

 コロンビア大学精神医学科の医長であるジェフリー・リーバーマン(Jeffrey Lieberman)氏は、マック財団がこの革新的な研究を奨励し資金を提供したことを賞賛した。マック氏は、米国ジョッキークラブや競馬界の他の団体・個人の資金援助の重要性について言及した。

 この研究のために資金援助を行った他の団体・個人は以下のとおりである。デヴィッド&ジュリア・コッチ財団(David and Julia Koch Foundation)、ガネック・ファミリー財団(Ganek Family Foundation)、ジェラルド・パースキー(Gerald Parsky)氏、ガルフストリームパーク競馬協会、米国ジョッキークラブ、ライブオーク財団(Live Oak Foundation)、メアリー&ダニエル・ローラン財団(Mary and Daniel Loughran Foundation)、メタ航空宇宙キャピタル(Meta Aerospace Capital)、ニコルソン・ファミリー慈善基金(Nicholson Family Charity Fund)、ピーター・M・ブラント(Peter M. Brant)氏、リード・ファミリー慈善基金(Reid Family Charitable Fund)、戦術航空軍団(Tactical Air Support)、ヴィオラ財団(Viola Foundation)。


By Blood-Horse Staff

[bloodhorse.com 2021年2月11日「Published Study Finds Equine-Assisted Therapy Effective」]


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