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2021年04月20日  - No.4 - 3

馬の自由な移動を保証する三国協定を復活させる取組み(欧州)【開催・運営】


 シルバークオーツ(Silver Quartz フランシス-アンリ・グラファール厩舎)が最近経験したことが初期の指標であるならば、英国内外に馬を移動させようとする人々は、ブレグジット(英国のEU離脱)により複雑になった入国審査が大きな停滞を引き起こす恐れがあるため、不満の多い夏を迎えるかもしれない。

 シルバークオーツは4月1日(木)、シャンティイからリングフィールドまでの比較的短い行程を移動する際、税関で合計5時間以上足止めされた。これはおよそ理想的な経験とは言えず、グラファール調教師とオーナーブリーダーのアルアサイル社(Al Asayl)は、5月のロッキンジS(G1)のために、G1馬ザレヴェナントをニューベリーに遠征させることに疑問を抱いている。

 また輸送業者のパトリック・キーン氏は、英国から帰国した馬がダブリン港で3時間も待たされたと報告している。さらにチェルトナムを拠点とするリチャード・ホブソン調教師は、フランスで出走させるための費用が1月1日から倍増したと不満を漏らしている。

 これらはいずれも、英国・アイルランド・フランス間で健康状態が良好である馬の自由な移動を保証していた三国協定が終了したことに起因する。

 しかし、これらの国の主要な馬関連機関により構成されるタスクフォースが、三国協定を復活させるためにEC(欧州委員会)を説得しており、それが効果を示し始めていることで期待が高まっている。

 このタスクフォースは昨年3月に初めて招集された。国際馬術連盟(FEI)の最高獣医責任者ヨーラン・オーカーストロム(Göran Åkerström)博士が議長を務め、英国代表としてウェザビー社のサイモン・クーパー氏、アイルランド代表としてブライアン・カヴァナー氏、デス・レドゥン(Des Leadon)氏、ロナン・マーフィー氏がこのチームに参加した。

 フランスギャロの事務局長補佐アンリ・プーレ(Henri Pouret)氏もこのタスクフォースのメンバーであり、このロビー活動が実を結び始めていると考えている。

 「このグループは健康状態が良好である馬の自由な移動のための三国協定の復活を目指して、とりわけ欧州議会・EC・EC委員長を中心に調整とロビー活動を行う任務を負っています。競走馬・馬術競技出場馬・繁殖馬が対象となります」。

 「この目的はまだ達成されていませんが、フランスの代表者たち、とりわけ農業・食料大臣と重ねた多くの話合いの中で、三国協定の復活を望む声が上がっています」。

 プーレ氏によると、それらの話合いは前向きなものだったが、競走馬や競技馬を例外的に対象とすることで、他の業界から同様の要求がECに殺到するかもしれないという懸念も持ち上がった。

 馬専門獣医師および競走馬の生産者として高く評価されているレドゥン氏は、欧州経済全体において馬部門の規模が絶大であることが、欧州全域の最高獣医責任者たちの合意を得るための決め手になると考えている。これらの最高獣医責任者たちは最終的にECからの指示を受けることになる。

 レドゥン氏はプーレ氏のフランスでの経験に共感して、こう語った。「私たちはアイルランド当局が取ったアプローチにより恩恵を受けてきました。アプローチ性と問題解決への意欲という点で、欧州の多くの同僚に羨ましがられています」。

 「これらの事柄に対する業界全体でのアプローチにより、馬産業が毎年欧州経済において年間500億ユーロ(約6兆5,000億円)以上の価値をもたらし、50万人の雇用を創出していることを示して行くのです。これは誰が見ても大きな数字です」。

 「この数字が期待しているほどの牽引力をもう発揮したかと聞かれれば、答えは"ノー"です」。

 レドゥン氏は、ECの委員たちがタスクフォースの取組みと主張をよりよく知るようになれば、進展があるだろうと考えている。

 また、何が問題となっているのか高いレベルでECは理解していると同氏は指摘した。マイレッド・マクギネス(Mairead McGuinness)委員(アイルランド出身)はジャーナリズムの世界で経験を積み、欧州議会の議員として農業や馬の問題に精通している。そしてウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は自らも熱心な馬術競技者である。

 レドゥン氏は、「私たちには権限があり、私たちがやってきたのはそれを活用することです。それを目に見える利益に変えるのには、もう一歩及ばない難しいところがありますので、実現に向けての継続的な努力が必要になります。実現できるし、実現するだろうと確信しています。なぜなら、あまりにも重要なことだからです。しかし、骨の折れる闘いなのです」と締めくくった。

By Scott Burton 

(1ユーロ=約130円)

[Racing Post 2021年4月7日「Taskforce works to restore horse free movement as Brexit travel issues mount」]


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