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2022年04月21日  - No.4 - 1

2021年の予後不良事故率、過去最低を3年連続で更新(アメリカ)【開催・運営】


米国ジョッキークラブが3月29日に発表した"事故馬データベース(Equine Injury Database:EID)"によると、競馬産業が競馬の安全性を高めるためにあらゆる面で行っている広範な取組みはひきつづき成果を上げているようだ。

2021年の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.39件であり、EIDがこのデータを収集してきた13年間で最低の数値となった。EIDが発足した2009年以降、初めて3年連続で過去最低を更新したことになる。2021年の予後不良事故のリスクは2020年から1.4%低下し、2009年からは全体で30.5%低下した。

2021年のデータでは、EIDに参加する競馬場の平地競走の出走馬の99.86%が予後不良事故に遭わずにゴールしている。
joho_2022_04_01_01.jpg

 2009年からの事故馬データベース(EDI)の傾向については、以下で確認できる。
 jockeyclub.com/pdfs/eid_13_year_tables.pdf

 2021年のデータベースの数値は、2020年の2歳戦での事故急増は新型コロナ感染拡大下で若馬を出走させる困難に直面した1年かぎりのことと示唆している。2歳戦での予後不良事故率は2020年にすべての年齢層を上回ったが、今年はすべての年齢層の中で最も低いものとなった。

 2歳戦の出走馬1,000頭当たり0.98件という予後不良事故率は過去最低となり、1.0件を下回るのは初めてである。

 EIDの設立時から顧問を務めてきた獣医疫学者のティム・パーキン博士はこう語った。

 「2020年のデータの傾向を見ると、2歳シーズンの事故急増が悪影響を及ぼすかもしれないと思われたが、それは3歳シーズンに持ち越されていないということが分かります。怪我をさらに防止して競馬の安全性を高めるために、ひきつづきデータを調査します」。

 予後不良事故のリスクはすべての馬場種類で2019年から統計的に著しく低下している。ダートでは28.1%、芝では35.6%、人工馬場では51%減少した。人工馬場の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり0.73件で1.0件を下回るのは2回目であり、2009年以降で最低である。

 また、競走距離「6ハロン~1マイル」(1.46件)の予後不良事故率が「6ハロン未満」(1.35件)や「1マイル超」(1.19件)を全体的に上回ったのは2回目のことである。競走距離「6ハロン未満」と「1マイル超」の予後不良事故率はそれぞれ2009年以降で最低の数値となっている。

 研究者たちは予後不良事故の原因は多元的であると考えている。また、競馬界は予後不良事故率を低下させるために数々の分野で次のような改革を実施している。(1)競走でのアナボリック・ステロイドの使用禁止、(2)治療薬の新たな使用制限、(3)競走馬場の監視強化、(4)クレーミング競走出走馬への新しいルール、(5)クレーミング競走での譲渡価格に対する新しい指針、(6)規制担当獣医師による徹底した競走前検査、(7)競馬場への安全担当者および規制レベルでの馬医療担当理事の追加配置。

 ジョッキークラブの理事長兼CEOであるジム・ギャグリアーノ氏はこう語った。「競馬産業へのサービスとしてこのデータベースを提供しました。競走馬の安全確保に関してより深く学ぶ上で貴重な資産であることが証明され、私たちは嬉しく思っています。EIDデータに減少傾向が見られることにとても勇気づけられており、この重要なデータを公表するために協力してくださった競馬場や獣医師の方々に感謝したいと思います」。

 2012年3月から、各競馬場はEIDの統計をジョッキークラブのウェブサイトに任意で公表できるようになった。EIDを公表する競馬場の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.15件であったのに対し、公表していない競馬場の予後不良事故率は1.54件と報告されている。

 NTRA(全米サラブレッド競馬協会)の安全・公正に関する同盟(Safety and Integrity Alliance)の認定競馬場22場は、出走馬1,000頭当たり1.24件の予後不良事故率だった。それに対し、2021年に競走を施行しEIDに報告を行った非認定競馬場58場の予後不良事故率は1.50件だった。

 EIDの統計では、レース後72時間以内に馬が死に至った事故を予後不良事故としている。この統計は正式なサラブレッド競走だけを対象としており、障害競走は含んでいない。この統計はまた、報告の適時性など多くの考慮事項により数値が変わることがある。データが完全かつ正確に報告されていることを保証するために、EIDに入力されたすべてのデータの質は多段階でチェックされている。

 EIDの参加競馬場の一覧と、統計を任意公表した競馬場からの詳細な統計は以下で閲覧できる。
 jockeyclub.com/default.asp?section=Advocacy&area=11

 EIDには、2021年を通じて北米で出走した全サラブレッドの約99%が含まれる。

 事故馬データベース(EID)はグレイソン-ジョッキークラブ研究基金の第1回競走馬福祉・安全サミット(Welfare and Safety of the Racehorse Summit)で考案され、2008年7月にジョッキークラブにより立ち上げられた。EIDは有効な統計を作成する標準化フォーマットを用いてレース中に発症した故障の頻度・種類・結果を明らかにしようとするのと同時に、故障のリスクが高まっている馬の特徴を突き止め、安全性の向上と故障の予防を目的とした研究を推進するためのデータソースとして役立っている。

By Frank Angst

[bloodhorse.com 2022年3月29日「Another Record Low for Catastrophic Injuries in Racing」]


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