引退競走馬に活動機会をもたらす3つの新プログラム(オーストラリア)【開催・運営】
レーシングヴィクトリア(RV)は、ヴィクトリア州の引退競走馬への支援をさらに厚くする一連の試験的プログラムを発表することを光栄に思う。
3つの試験的プログラムは、すでに実施されているRVの競走引退後のプログラムを土台としている。また、馬主や調教師が尽力している"引退競走馬をほかの活動に移行させる取組み"と"引退競走馬へのケア"を補完することを目指す。
試験的プログラムは、馬を引き受ける意思のある人たちがほかの馬種ではなくサラブレッドを選ぶよう奨励するのと並行して、引退競走馬が競走以外の進路を歩むのを引き続き支援することになる。
「引退サラブレッド・コンパニオン・プログラム(Retired Thoroughbred Companion Program)」は、サラブレッドをコンパニオンホースとして引き受ける人々を支援する。これにより、サラブレッドは乗馬としてのキャリアに適していなかったり、RVのほかのプログラムを通じてセカンドキャリアに移行できなかったりしても、牧場で競走引退後の生活を幸せに送れるようになる。
「クラーク・オブ・コース助成プログラム(Clerk of Course Subsidy Program)」は、ヴィクトリア州の競馬開催で働くすべての馬をサラブレッドにするという目標を達成するために導入される。現在、ヴィクトリア州においてそのような馬の半数はサラブレッドであり、この試験的プログラムは競馬開催において重要な役割を担えるように馬を再調教するさらなる動機を与えるものとなる。
身体的に健康でないと診断されるも、短期間のリハビリを経て健康を取り戻して再調教プログラムに参加し、目標あるセカンドキャリアを手にする見込みのある引退競走馬はいる。「リフィット助成プログラム(Refit Subsidy Program)」は、そのような引退競走馬を引き受けるRV認定調教師に追加的な財政支援を提供するものである。
この3つの試験的プログラムは、ヴィクトリア州の競走引退後のプログラムやイニシアチブを補完するものである。RVが馬の福祉に2,500万豪ドル(約24億2,500万円)を支出したことで、過去3年間にこれらの取組みは拡大・加速してきた。
その代表例は「オフザトラック(Off The Track:OTT)プログラム」である。認定調教師50人からなる州全体のネットワークを特徴とするこのプログラムは、ヴィクトリア州で毎年200以上の馬術競技会をサポートし、引退競走馬とともに出場する人々に報酬を与えている。
OTTは以下を含む多くの馬術団体との提携関係を誇っている。
・ ヴィクトリア乗馬協会(Equestrian Victoria)
・ ヴィクトリア・ポニークラブ(Pony Club Victoria)
・ ヴィクトリア障がい者乗馬協会(Riding For The Disabled Association of Victoria)
・ マーカス・オールダム大学(Marcus Oldham College)
・ 豪州エクワイン・パスウェイズ(Equine Pathways Australia)
ほかの新たな取組みには、セカンドキャリアへの移行がうまく進まない引退競走馬を支援する「RESETプログラム」と、引退競走馬の長期委託の選択肢を広げる「引退馬認定牧場プログラム(Acknowledged Retirement Farms Program)」がある。
"引退競走馬のトレーサビリティ(追跡可能性)を高める"というRVの取組みの中心となっているのが、OTTコミュニティーである。このプログラムでは、引退競走馬の居場所は現在の所有者に申し立ててもらうことで更新される。そして、コミュニティーメンバーは今後馬が緊急支援を必要とした場合の緊急連絡先としてそれを登録する。
オンライン基盤の「ottcommunity.com.au」の開設以来、4,000頭以上の引退競走馬の居場所が申し立てられ、RVは競馬産業の管轄から外れた馬の状況を見えやすいものにしている。
3つの新しい試験的プログラムのいずれかに受け入れられた馬は、州全体において引退競走馬のトレーサビリティを高めるというRVの活動を支えるために、OTTコミュニティーに登録されていなければならない。
RVの馬福祉担当の総括部長であるメリッサ・ウェア氏はこう語った。「私たちは新しい5年間の馬福祉戦略に着手しようとしています。そこで、現在獲得しつつある教訓、収集したデータ、業界参加者との取組みや認定調教師ネットワークから、引き続きプログラムとイニシアチブを進化させていきます」。
「その結果、3つの新しい試験的プログラムを開発することになりました。これらはサラブレッドを引き受ける意思のある人々をサポートし、サラブレッドが選ばれる馬種となるよう促進し、セカンドキャリアで活躍できるようになるまでにいっそうの時間と注意が必要な馬を支援することを目的としています」。
「より多くの引退競走馬が再調教されて開催に従事する馬として競馬場に戻れるようになることを、とりわけ楽しみにしています。毎年サラブレッドを5頭ずつ増やして、最終的にはサラブレッドが競馬開催で働く馬の100%を占めるようにしたいと考えています」。
「RVのすべての競走引退後プログラムと同様に、ヴィクトリア州において引退競走馬が活躍できる機会をどのように増やせるかを引き続きモニタリングし、理解に努めたいと思います」。
By Racing Victoria Staff
(1豪ドル=約97円)
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[racingvictoria.com 2023年11月6日「New programs open up more opportunities for retired racehorses」]