ニュージーランド競馬界は、３月末に発表された25年間の提携関係が競馬に待望の安定をもたらすことを期待している。この提携関係により、エンテイン社はニュージーランドのスポーツ賭事独占企業タブNZ社（TAB NZ）の運営を引き継ぐことになる。

　BHA（英国競馬統括機構）の元CEOポール・ビター氏は、タブNZ社の理事会が戦略やプロセスを策定するのを手伝ってきた。そしてリンクドイン（LinkedIn）への投稿において、今回のニュースをタブNZ社・競馬＆スポーツの関係者・ニュージーランドの賭事客にとって"記念すべき日"だと述べている。

　この提携関係から得られる恩恵として、タブNZ社は今後5年間に10億NZドル（約850億円）以上の資金を保証される。これにより競馬産業の再生が支援されるほか、強化された競馬カーニバルのスポンサーシップに1,000万NZドル（約8億5,000万円）を拠出するなどの追加的な支援が行われる。

　この25年協定において、提案された契約条件により競馬界とスポーツ界への支払いはおよそ50億NZドル（約4,250億円）にまで引き上げられる可能性があると、タブNZ社は述べた。なお、現在これらの業界の商業パフォーマンスは低迷している。

　競馬統括機関ニュージーランドサラブレッドレーシング（New Zealand Thoroughbred Racing）のCEOブルース・シャーロック氏は、この協定を"競馬産業とそれを支える体系の長期的な持続可能性を支援するのに不可欠な重要な転換"であると述べている。

　さらに「この協定は財政基盤を安定および充実させるとともに、競馬産業内に革新に必要な能力を付与すると考えられることから、私たちはとても勇気づけられています」と語った。

　この協定の締結が完了するためには、キアラン・マカナルティ競馬大臣の承認が必要である。

　このエンテイン社との提携関係は、5年前に豪州競馬界の重鎮ジョン・メッサーラ氏が開始したニュージーランド競馬界の現状に関するレビューの最終成果である。

　レビューを受けて2018年に発表された報告書では、NZタブ社の商業活動を国際的なライバルにアウトソーシングすることが推奨されていた。当時のニュージーランド競馬委員会（New Zealand Racing Board：NZRB）では規模が小さいために「賭事客に最高クラスのサービスを提供できない」と判断されていたのだ。

　さらに報告書には、「ニュージーランド競馬産業の発展や持続可能性にとって最も望ましい結果は、国内のすべての賭事・放映・ゲーミング事業を、長期契約のもとで国際的な規模をもつ第三者の賭事・メディア運営業者に完全に運営委託し、NZRBが運営免許を保持し続けることである」と記されていた。

　タブNZ社のCEOマイク・トッド氏は、「国際的な賭事業者との"ダビデとゴリアテの戦い"とも言える熾烈な争いの中で、タブNZ社は不確実な将来に直面していました。エンテイン社との提携関係のような協定がなければ、タブNZ社は資金削減を迫られていたでしょう」と述べている。

　そして「エンテイン社との戦略的提携は、タブNZ社がニュージーランド競馬界・スポーツ界に提供できる資金を確実に、実質的に、迅速に増加させ、これらの産業が生き残るだけでなく繁栄することを保証するものです。これにより、私たちは害悪の最小化と責任あるギャンブルへの取組みを大幅に改善することができ、ニュージーランドでただちに雇用を安定させ、長期では雇用を創出し、国全体の発展に貢献することができます」と続けた。

　エンテイン社は、フラッターエンターテインメント社のスポーツベット（Sportsbet）や豪州の最大手タブコープ社（Tabcorp）との競争を勝ち抜き、優先パートナーの地位を獲得したと言われている。同社は少なくとも今後2年間はタブNZ社の450人の雇用を保証している。

　エンテイン・オーストラリア社の CEOディーン・シャノン氏はこう述べている。「ニュージーランドのために選ばれたパートナーとして、弊社は少なくとも2年間は雇用を継続することを確約しました。タブNZ社のチームは私たちの将来のビジョンとニュージーランドでの市場拡大において不可欠です。これまでのプロセスの進め方においてタブNZ社を高く評価しており、既存の経営陣およびすべての関係者とともに必要な承認に取り組んで提携締結を完了することを楽しみにしています」。

　株式仲買会社グッドボディ（Goodbody）のゲーム＆レジャー・アナリストであるデヴィッド・ブローアン（David Brohan）氏は、今回の提携を"エンテイン社にとって魅力的な取引"と評している。

　この連携は今年と来年のエンテイン社の中核的利益に1％未満の増加をもたらすにすぎず、2025年でも3～4％程度にとどまると予測しているとブローアン氏は述べた。しかし、「それでもニュージーランドのスポーツ賭事市場を独占することはエンテイン社にとって魅力的な資産となるでしょう」と付け加えている。